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2015年07月01日

プロジェクトぴあの

2015-06-30 06.47.18.jpg 「プロジェクトぴあの」読了。先日読んだ「地球移動作戦」の前日譚。ピアノドライブの発明者・結城ぴあのの人生の物語。これを読むために何年も前に図書館で借りて読んだ「地球移動作戦」をわざわざ買って読みなおしてたんだよ。

 前作、「地球移動作戦」で「結城ぴあのはピアノドライブを発明し、宇宙のかなたへ消えた」という事実は開示されてました。そのうえでお話を作るわけだけれども、なかなか良くできてたと思います。

 ちなみに前作中ではこんな風に触れられていました。
ピアノドライブの考案者である日本人女性、結城ぴあのは、自分で設計した宇宙船で太陽系外に旅立ち、消息を絶った。専門家は残された設計図を調べ、こんなずさんな構造の船では太陽系外に出る前に分解したか、生命維持装置が故障したか、空気漏れを起こしたかしただろうと考えている。だから彼女は公式には「太陽系外に出た最初の人間」とは認められていない。その一方彼女が今も宇宙のどこかで生きていると信じているものは少なくない。結城ぴあのの奇妙な人生は、なかば現代の神話と化している
 ざっと見返したけれど、これくらいしかぴあのについての詳細な記述はない。

 「地球移動作戦」で地球を動かすために必要なガジェットとして想定されたであろうピアノドライブ。無から負のタキオンを生みだし(なのかな?)、その噴射で稼働するというトートロジーに満ちた、まあ言ってみれば永久機関なんだろうけれど、これがないと地球は動かせなかったわけですね。

 結城ぴあのの存在はピアノドライブの発明者としての設定が先で、あとからその人生を描こうと思いついたのか、あるいは結城ぴあのの物語の方が先にあったのか、興味が深まるところですが、単に発明者としての設定だけならば、「宇宙に消えた」とか「奇妙な人生」という記述はいらないだろうし、私は後者なんじゃないかなーという気がしています。

 とにかく、こういう筋立ては先に決まっていて、読者も既知なわけです。それにをなぞって話は進むんですが、結末を知っていても非常に面白い話運びでした。

 女の子でマッドサイエンティストと言えばまずは火浦功の「みのりちゃん」シリーズなんだろうけれど、ああいうファンタジックな世界じゃなくて、かなりリアリティラインが現実寄りになってる。あとはイメージでいえば「南極点のピアピア動画」とか、あまり評価はしてないんだけれどw機本伸司「神様のパズル」 の穂瑞沙羅華とか、宇宙船のあれこれについては「スペースプローブ」あたりを思わせるところもありますね。

 宇宙のかなたへ去った者、ということでイメージとしては航空宇宙軍史の仮装巡洋艦バシリスクかな。あれは戦闘中に不本意ながら故障のための加速で地球に戻れなくなっちゃうんだけど。

 ぴあのはさ、前作の主人公のイメージもあってもっと定型的なツンデレかと思ってたら、ゴリゴリに信念の人で意外でした。そういうマニア向けの属性を全部こそぎ落として、科学の素養と宇宙への欲求だけに特化した存在ですね。なかなか勇気のある設定だと思いました。

 ピアノドライブは軌道エレベータと一緒だよね。何かのブレイクスルーで現在の化学燃料ロケットが高効率な推進装置に代替されない限り絶対に宇宙は拓けない、と。そういう縛りの中で、ぼくらは宇宙を見上げているわけです。

 それは化学ロケットしか持たない現代のわれわれには非常にせつない話でもあるんで、どこかの天才さん、ぜひピアノドライブを発明してくださいませ。よろしくお願いします。



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2015年06月29日

地球移動作戦

地球移動作戦 「地球移動作戦」読了。

 へんな星が太陽系外から飛んでくる。なんという偶然かその予測軌道は地球の公転軌道と交錯していて…というものすごくよくある筋立て。

 まあ地球を動かしてかわして逃げる流れなわけですけど、元ネタとしてあげられてる「妖星ゴラス」というよりは、ウルトラ世代の私はペガッサ星人とか思い出しちゃう。なんだと、地球人はただ回ってる星に乗っかっているだけなのかッ!ってやつ。

 全体的な筋立ては「妖星ゴラス」っていうよりは「さよならジュピター」だと思います。探査機の遭難。地球に迫りくる破滅的な危機。天文学的手段での解決。巨大プロジェクトの進行。テロによる妨害。独断専行する現場最高責任者。いやもうまるっきりBBJ("Bye-bye Jupiter"をツウはこう呼ぶw)ですね。さいこーです。あの映画版だって私は好きでしたよ。

  一方で「地球を動かす」という壮大な事業それ自体については、魔法のようなナノテクと無限の力・ピアノドライブで片付いてしまうので、その辺はいささか拍子抜けでした。ざんねん。
 
 その他いろいんなガジェットが出てくるんですが、なかでも「宗教を克服した人類」てのが白眉。

 宗教ってのはいつか克服するものじゃないかってずっと思ってるんですよ。いつまで人類は宗教を必要とするんですか。科学万能じゃないんですか。じっさい「死」を制覇しない限り不可能なのじゃないかという気もしなくもないんですが、はたしてどうなんでしょうね。

 神の名において人を殺すとか、そういう光景を見るたびに、宗教と言うものがどれだけ人類の歴史の障害になっているのかと暗澹たる気分になります。いつかは宗教を必要としない知性体に成長できればいいですよね。逆に宗教を否定して主義のために人を殺したなんとか主義なんてのもありましたけれど。

 私もずっとそういう考えを持っているのですが、公に指摘してくれたのは本書を以って嚆矢としたいと思います。いろいろ危ない思想なのかもしれないけどね。

 ガジェットはいろいろよかったけれど、「地球を動かす」ところに力感がなくて、うーん、80点てところですか。

 でもお勧めです!

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2015年06月27日

Number Plus スポーツマンガ最強論

2015-06-26 23.08.11.jpg Number PLUSスポーツマンガ最強論買いました。Numberの別冊ですね。

 表紙を見てわかるとおり、サッカーネタ多数。ちっ!
 キャプテン翼がやっぱり話題の中心ですね。あとスラムダンクとか。

 子供たちはサッカー漫画とか読んだことないんですが、あの等身のおかしい絵を見て大爆笑していました。なんでこんな絵柄なんだろうなw

 秋月は「柔道部物語はもっと評価されるべき!」と熱く語ってましたが、まだ読んでないまんが、いっぱいあるんだねとへんなことにわくわくしていたのでした。

 ちなみにラグビー漫画は一切なし。編集者の座談会で「ラグビー漫画は鬼門なんですよw」という話題で一言触れられただけだったのでした。


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2015年02月01日

SF読書会

読書会 読書会、やりたいんです。SF読書会。

 最近いろいろと多忙でめっきり読書量が減ってしまったので、何かしら自らに縛りをつけて本を強制的に読ませたい、という不純な動機ではありますが。

 松本には読書会もあるらしいですが、長野にはあんまりなくて。

 ネットで調べるといくつも読書会というのはヒットするんですが、なにかこうビジネス商材ぽかったり、自己啓発っぽかったり、思想的にアレげだったり、どれもこれも不純なにおいがするんですよ。

 もっと変な縛りなく、本を楽しみたいんですけど。
 自分で立ち上げるかなあ。

 今朝、地域のミニコミ紙をみていたら、こんな募集が載ってました。
 こ、これはwww
 
 先日ネットで検索しまくっていて私のレーダーがびんびんに反応した読書会でした。
 こんなところにも載せてるんだww
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2014年12月16日

寄席芸人伝

寄席芸人伝 「寄席芸人伝」買いました。今では文庫サイズのしかないようで、昔、学生の頃に読んだ版型は絶版みたいです。今回は古本をセットで買ってみました。
 
 古谷三敏はさ、昔は「ダメおやじ」で、最近だと「ぐうたらママ」ですか。ほとんど埋め草的どうでもいいまんが家ではあると思うんだけど、この「寄席芸人伝」は本当にいいよね。

 昭和少年の秋月に読ませたいまんが、というのがいくつかあって、「あ〜る」とか「柔道部物語」とか「美味しんぼ」の1〜7巻までとかまあその辺の仲間ですね。あとは「リングにかけろ!」かなあ。手塚石森赤塚藤子なんてほっといても読むしな。

 「寄席芸人伝」は「美味しんぼ」の1〜7巻まで(こだわるw)と並んで「まんがリテラシー」というよりも「人生リテラシー」の大事なひとつのような気がしています。

 「人の値打ちと煙草の味は、煙になってわかるもの」

 という名言は、焼き場で親父を焼くときにしみじみと胸にしみましたよ。

 人生を深めたい方には特に…オススメです!

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2014年04月26日

銀河パトロール ジャコ

銀河パトロール ジャコ 「銀河パトロール ジャコ 特装版」買いました。

 鳥山明の最新作だそうです。連載してたのか。知らなかったよ。

 下種な推測でいえば、鳥山明もドラゴンボールがあれだけ売れれば、もうカプセルコーポレーションの社長なみにお金はあるんだろうから、もうまんがなんて描いてないのかと思ってました。新作があると聞いて、ちょっと意外でした。

 わたしなんかは鳥山明といえばドラゴンボールよりアラレちゃん世代ですが、本作はそういう人の方が楽しめるのかもしれない。

 宇宙からやってきた銀河パトロール隊員のジャコと、隠遁した科学者大盛徳之進博士のハートウォーミングな二人暮らしのお話。ホンワカいい話で、一巻完結という長さもちょうどいい感じです。

 天才科学者なのに隠遁している博士や、大金持ちなのにみすぼらしい生活をしている子なんかが微妙に今の鳥山明を表しているような気もしますが、金持ってても嫌味にはなりたくないという心境が垣間見えるような気もします。それはそれで健全ってもんか。

 なに書いてもネタバレになるので、内容には触れませんが、ラストシーン、サンクターボを駆る少女の姿には感涙間違いなしです。

 サンクターボ。大切なアイテムです。

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2014年04月17日

Tarzan

2014-04-16 20.43.32.jpg 「Tarzan 2014年 4/24号」買いました。

 とうとう俺もターザン買う男になったんだぜぇ。

 いや、別に筋肉マッチョになりたいわけじゃないんですよ。特集に「初日から困らないジムデビュー」なんて記事があるみたいだから、そろそろジムにも行きたいなあと思って買ったんです。雪風がベンチプレスの重さで人の価値を計るようになってきたので、自分がどんだけあがるかちょっと知りたくもなったんです。

 以前ボディビル言語の世界を垣間見て、こんな恐ろしい世界にはとても住めないと思ったので、そっち方面には行きませんよ。
Tarzan いや、でも中をぱらぱらめくってたら、腕立て伏せメニューがいろいろ載ってて、これは勉強になる。ちっとやってみたくなりました。

 ふうふうと腕立て伏せをしていたら、そんなんいいからさっさとお風呂はいんなさーい!と怒られてしまいました。

 続くかな?


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2014年04月12日

柔道部物語

柔道部物語 「柔道部物語(1)」買いました。新装版になってて、表紙が変わってる。全6巻ですか。

 柔道はやらないんですが、これ読んでると無性に柔道したくなるよね。名作です。

 高校の部活動というのがどういうものかについては、秋月には「究極超人あ〜る」を読ませて教えましたけれど、あれは究極の文化部の話なので、バランスを取るために体育会系も教えないとなあと思っていたのです。

 三五十五が高校に入学してから卒業するまでの3年間の生きざまをすべて描いていますから、これで青春の燃やし方を学んでおくのもいいかと思うのです。

 出てくる登場人物の中では私は江南の石川が好きです。天才・樋口の孤独に寄り添い、その心境を思って快活に声をかける石川の姿には何度読んでも涙します。

 持っていきどころのない「なにかしなくちゃ」というやみくもな情熱にお悩みの方には、おススメです!


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2014年03月18日

志乃ちゃんは自分の名前が言えない

2014-03-16 12.15.07.jpg 一部で密かにブームが広がりつつある(俺調べ)「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」買いました。

 吃音症の女の子の話。著者も吃音があるそうで体験に基づいた作品なんだとか。『惡の華』描いた人ですね。

 吃音には様々な様態があるのだそうで、主人公の女の子は「難発性」。母音から始まる言葉が特に出にくいんだって。だから「おおしましの」という自分の名前が言えない。ものすごく呻吟しても言えない。だから自己紹介からいつもつまづいてしまう。

 うーん、吃音ってこういう感じなんだ?
 
 こういった障碍をテーマにした作品はとかく啓蒙的であったり、啓発的であって、親切なドクターが現れて読者に向かっていろんな解説してくれたりするんだけど、志乃ちゃんにはそんなていねいなケアはない。いいところちょっと勘違い気味の先生が
 「落ち着いてしゃべれば大丈夫」
と言ってくれる程度。お母さんだってそれほど真面目には向き合ってくれてない。現実はそんなものなのかもしれないな。

 私も子供のころに吃音の友達が居たけれど、親友と言う感じにはなんとなくならなかった。別に敬遠したり差別してたわけじゃないつもりだけれど、彼は今頃どこでどんなふうに生きているのかなあ、とふと思ってしまいました。

 吃音についてあまり考えたことがない人に、オススメです!


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2014年01月23日

Kindleストアの角川祭りはどこが金出してるんだろう

 Kindleストアの角川祭り | 日々雑感IIの続きを少し書きます。

 角川70%オフはすごいんですが、いったいどこがその原資を出しているんだろう、と気になりました。

 某巨大掲示板でネタを漁りましたら、
686 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2014/01/22(水) 17:54:00.00 ID:rQaLUMgg
他の出版社も70%セールやってたら延々とポチってただろうな

687 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2014/01/22(水) 18:03:34.39 ID:UepbI96u
角川だけが70%セールを許可したんだろ。
アマゾンが費用を負担するといってるのに、
他の出版社は拒否りやがった。既得権団体の出版社どもめ、つるみやがって。

689 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2014/01/22(水) 18:26:08.73 ID:IdsTmB7r
>>687
アマゾン金余ってんだな

694 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2014/01/22(水) 18:47:10.84 ID:UepbI96u
>>689
余ってるつうか、アマゾンは利益を出さないようにしてんだろ。
ベゾスがスティーブ・ジョブズの失敗から学んだそうだ。

会社に金を貯めこむより、シェアを取る。
最初にシェアを取ったところは有利になるから、それで儲けた金で、さらに後続を引き離す。

これじゃどこもアマゾンには追いつけないな。アマゾンの勝ち。
といった話がありました。

 要するに、Amazonが差額負担で値引きしているってことでしょうか。まあ当然仕入値の調整もしているんでしょうが、角川とはどんな取引があったのか非常に気になります。

 Amazonとしては日本で本を売るにあたって大きな障壁となっている、「再販制度」と「配送料」の二つに風穴を開けたくて仕方がない、ということがよくわかります。

 「書籍と電子書籍は別の価格基準とすること」と「電子書籍を書籍流通のメインストリームとすること」の二つの流れが動き出したら、上記の大きな課題が二つ解決しちゃうんですね。そうなったらKindleストアで先行しているAmazonが勝利するのは目に見えています。

 そのための布石が角川70%オフなのでしょうし、そのAmazonの提案に乗ったのが角川だけ、というのもなかなか象徴的なことかとは思います。出版社としては「自社の本が読まれること」と企業としての成果は必ずしも等価じゃありませんしね。

 うれしがってクリックしまくりながら、そんなことも考えてみました。

 Amazonが安売りしてくれて本が安く読めるのは大変によろしいことかと思いますが、既存ビジネスモデルを破壊すると同時に、優良なコンテンツ生産のシステムも破壊されないことを願います。

 いくら安くても下らない本ばかりが売れる世界はいやだよ。

 追記
本の価値と価格 | 日々雑感II
を関連記事としてアップしました。
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2014年01月22日

Kindleストアの角川祭り

 Kindleストア角川祭り絶賛開催中。Kindleストアで角川の文庫、コミックが168円とかでばかすか放流されていたのです。朝になったら終わってるかと思ったら、今もまだ継続中のよう。

 グラスホッパー (角川文庫)が174円。

 新装版 戦国自衛隊 (角川文庫)が105円。

 ぼくらの心に黒い聖痕を残したカントクの書いたあの伝説の一冊、機動戦士ガンダム I (角川スニーカー文庫)が180円とか。

 こうなるとですね、昔読んで好きだった作家を探しますよね。

 で、作家と言うのは編集者との関係もあるらしく、半ば出版社に属しているようなところもあります。従って角川がフェア中と聞くと、角川作家ってどんなのがいたか、必死に思いだすわけです。旧作ばかりではなく近作も安くなっていますが文庫に入ってるのはやっぱりちょっと古い作品が多いみたいw。

 角川と言えば、赤川次郎とか圧倒的だよね。荒俣宏とか、あと小松左京も多かったっけ。あれは春樹との関係だったのかな。筒井康隆も割とあるし星新一もあります。

 検索しているとやたらと西原理恵子が出てきてうっとおしかったり、意外と赤川次郎がでてこなかったりたくさんの発見があります。こんな風に出版社つながりで本を探す、というのは今までなかった経験なので色々と面白いです。

 ガンダムエースやってるおかげでガンダム関係はやたらと充実していますが、オリジンはなぜか値引きしてないという(笑)。貞本のEVAまんがは値引きのおかげでベストセラーに入りましたね。角川スニーカー文庫のラノベには涼宮ハルヒの憂鬱を始めヒット作もありますので、こちらも軒並み売れているようです。

 がんがん検索して回まくっていましたら、どんどんサーバが遅くなってきて、最後は購入してもライブラリに配信されなくなりました。みんなどんだけ買ってるんだよ。「バルス」でツイッター落とすのは恒例行事だけれども、Amazonのサーバ落としたら歴史的事件ですよこりゃ。

 色々検索した割には本当に読みたい本しか買わなかったわけですが、ファラデーの「ローソクの科学」が150円で買えたのはよかったなあ。こんなことでもなければ、読み返す機会なかったしね。

 たまにKindleもお祭りをやるので、油断が出来ないです。

 電子図書ってどうよ、っていうそもそも論についてはまた書きたいと思います。

 でも角川でよかった。早川にやられたらとんでもないことになると思います。
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2014年01月06日

盤上の夜

 「盤上の夜 (創元日本SF叢書)」読了。

 将棋、囲碁、麻雀、チェッカーなどのボードゲームSFというたぶん空前の短編集。

 SFコンテストで受賞したって聞いたけれど、「ハチワンダイバー」みたいなのかなって、なんとなく敬遠してましたが、年末年始に積読を消化しました。

 ちょっとホラー風味も入っているので、その辺は好き嫌いが分かれるのかもしれません。

 現実空間と勝負空間の相克、という意味ではすごく神林的かつ雪風的。だから私はチェッカーの完全解のお話が一番気に入りました。思った以上にSF的だったです。「ヨハネスブルグの天使たち 」も読んでみようかなあ。

 麻雀は学生の頃に、哭きの龍とか自己中心派とかが流行ってて、素人麻雀をたくさん打ちましたが、サラリーマンになってから上司と打ってえらい目にあったので撤退しました。久々に麻雀用語を読んで懐かしかったです。
 

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2013年12月19日

星を創る者たち

2013-12-14 13.39.11.jpg 「星を創る者たち」読了。

 谷甲州は土木科を出て、建設会社にいたそうですが、海外青年協力隊で土木工事の指導などもしていたそうです。その経歴もあって、土木SFというか、ゼネコンSFを書くとすごくうまくて、現場監理や危機管理等の描写には定評があります。本筋よりも現場描写のほうがみりょくてき!と評価する人までいますね。

 本作は太陽系内の惑星開発を、土木プロジェクトとして描いた作品で、たとえスペースゼネコンの時代になっても、やっぱり人は変わらないのね、というのがひしひしと感じられて素晴らしいです。

 太陽系内の各惑星で展開されるプロジェクトが様々な理由で危機に陥り、現場監督の大人さんが能力の限りを尽くして切りぬけていく連作小説です。

 途中で単調な感じがするかもしれませんが、最期まで頑張って読むことをお勧めします。なんか「太陽の簒奪者」みたいな感じかな。

 おそらく日本では小川一水と共にたった二人しかいない土木ゼネコンSF作家として、

 オススメです!

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2013年04月24日

ALL OUT!

ラグビーまんが 「ALL OUT!!(1) (モーニング KC)」なんてのが出ていました。「モーニングTwo」で連載中、ということなので、青年誌なのかな。どっちかというと少年サンデーとかでやってくれるとありがたいがなあ。

 ラグビー漫画といえば、当ブログでも、ラグビーまんが | 日々雑感IIアップセット15 | 日々雑感IIアップセット15 3巻でました | 日々雑感IIアップセット15 4巻 | 日々雑感IIで紹介しました(くどいw)。

 ラグビーまんが史(おおげさw)をざっと振りかえると、

 原初はたぶん「ウォークライ」。これ以前てあるのかなぁ。80年代、スクールウォーズ世代に「1、2の三四郎(初期)」が流行った後、ずっと間が空いて、「ノーサイド」「マドンナ」「HORIZON」や「ゲイン」がとびとびにでて、最近には「アップセット15」、「15 明刹工業高校ラグビー部」が最近完結し、今は連載中のものなしという状況の様です。「アップセット15」はきれいに完結しましたけれど、「15 明刹工業高校ラグビー部」はおそらく震災の影響で打ち切りに近い形で完結しました。東北地方の高校が舞台ということで仕方なかったかもしれませんが、残念です。

 で、最近「ALL OUT!」というのが発売になると聞いて早速買ってきました。

 なかなか熱いラグビー漫画です。やたらと体力と元気のあるアホーで体力馬鹿な主人公がまったく知らないラグビーの世界へ飛びこんで大活躍(推測)、というまあ王道の筋書きですが、今後に期待したいと思います。

 描写もかなりしっかりしていて、ヘッキャはちゃんと紐を締めているし、逆ヘッドなんかでは入らないし、その辺はすごくえらい。どうも編集の人がラガーマンでかなり力を入れて校正しているようです。

 ただ、絵柄が辛いw。そんでたぶん絵が下手。描線がものすごく荒くて、よく言えばそれは勢いにあふれているという言い方もできるかもしれないけれど、はっきりいうと「下手」なんだと思います。もしかするとうまく描く気がないかんじ。感極まった表情になると、どれがどのキャラだかわからなくなるくらい。これなんとかならないかなあ。絵柄は我慢するからもうちょっとていねいに、綺麗に描いてよ。

 2巻以降に描き慣れてくるともちょっと見やすくなるのじゃないかと期待します。
 
 それでもラグビー漫画は一般の子供たちにリーチするのに最良のメディアだと思いますので…

 オススメです!


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2013年03月30日

火の鳥黎明編

火の鳥黎明編 「火の鳥 1・黎明編」買いました。

 秋月は手塚まにやを気取っていますが、火の鳥は読んだことがないらしくて、それじゃあ片手落ちだろ、とまずは黎明編。

 いま読み返すと、猿田彦とナギがみょうにモーホーぽく描かれていてます。幼少のみぎりに感じた違和感の原因を手塚御大の中に見いだせたりしていろいろと収穫はありました(なんじゃそら)。この新しい萌えジャンルは、カントクが「それも小生だ」と言いだす前に商標登録しとくといいです。いや、それはともかく。

 村をまるごと産もうとするヒナク。
 ヨマ国を再生しようとするウズメ
 そして一人残らず去っていく男たち。

 人間は必ず死ぬけれども、死ぬその瞬間までは全力で生きよと励ます火の鳥

 ヒナクもウズメも死の中から命を生み、再生を繰り返そうとしますね。
 まあそれこそが火の鳥のメインテーマなんでしょうけれど。

火の鳥黎明編 このあたりのくだりが私の死生観を形作ったへん。

 自分もいつかは必ず死ぬけれども、死ぬまでに何を成すかが生きる意味なのだと。

 そして自分もいつかは子を成し、育て、生命の再生の輪に加わること。それは永遠の生命を得ることに等しいのだ、と。

 そんな妄想を抱く元になった作品です(笑)。

 秋月が読んでどんな感想を持つのかは、なんか目に見えるような気もします。とにかく一番かこいいのは古代の次元大介こと超スナイパー・天弓彦だな。弓彦サイコー!弓彦かっこいい。サインくれ!

 自分にも生きる価値があるのかな、などとふとした気の迷いにさいなまれている人などには特に、

 オススメです!


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2013年03月26日

ジュブナイル

SFジュブナイル 秋月が、

「春休みの間まんがばかり読んでちゃいけないから、僕が読めるような本を貸して」

などと殊勝なことを言ってきたので、さっそく図書館に寄って、子供向けの本を借りてきましたよ。

 小松、筒井、星。

 読まずに死ねるか。

 「2週間でこんなに読めるかなあ」
などどしょぼっちいことを言っていますが、小学校の全盛期のころの父なら、2日で終了だよ。

 子供向けに大きいポイントの活字にしていたり、子供向けに平易な表現でブラックな内容だったり、大人向けだけれども子供にも楽しめる長さだったり。どれも子供にも読めて、子供だましじゃない作品。

 ばっちりなラインナップです。

 これで本の虫になーれ!

   
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2013年03月01日

逆回りのお散歩

逆回りのお散歩 逆回りのお散歩読了。

 先日、カブのイサキ(6) | 日々雑感IIで、三崎亜記と書いた時に、ああこないだ読んだのの感想書いてなかった、と思いだしました。神林、カジシン、小川一水と並んで、出れば読む作家レイヤーに入れています。

 毎回、とびきり異様な世界を構築してそこで生きる真面目な人々の様子を淡々と描く三崎亜記にして、今作は非常にリアルな世界を舞台にした一作。

 A市とC町の合併問題をめぐって、対立する市民の姿を描きます。

 錯綜する情報。活動家の暗躍。歴史的事実とその捏造。ネットでの炎上と収束。
 繰り返すどんでん返し、明かされる事情。

 真実はどこにあるのか。自分の目に入った情報が真実なのか。

 雪風をはじめとする神林認識系SF(なんじゃそらw)も、「認識することで現実が生じる」ということを多くテーマとしていますが、それとは少し趣向を変えて、更に直截的にネット社会での生き方を再考させてくれます。

 元公務員という前歴もあるのでしょうが、やっぱりお役所仕事書かせるとうまいなあ。

 ホンワカした世界をふわふわと描く作風が多いすばる系において、情報リテラシー向上に資する、という珍しく実利的にも役立つ一冊。

 オススメです!

 あ、おまけの短編は、「となり町戦争ゼロ」でした。
 懐かしい人々に再会できます。


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2013年02月28日

俺の艦長

俺の艦長 俺の艦長読了。

 アニメに登場する数々の「艦長」を紹介する一冊。

 あー、この発想はなかったな。内容はともかく、その企画力を高く評価します。

 日本アニメ史において、SF戦闘ものに3つのターニングポイントがあります。
 もちろん「ヤマト」「ガンダム」「マクロス」ですね(例によってEVAの件はさておく)。

 ヤマトと言えば沖田艦長。後にひょっこり生き返ってきたりして多くの人を残念がらせましたが、初代の沖田艦長(ってなんぞw)はまさに武人。生きて生きて生き抜いて戦い続ける。目的のためには撤退も辞さない。その割には太陽系を離れる時、艦長室で古代と一杯やりながら「お別れを言うぞ古代」と二人で太陽系に向かって「さようならー!さようならー!」と叫ぶ姿が印象的。

 いい艦長でした。

 ガンダムからは、やっぱりブライトさんですね。

 艦長なんて呼んでもらうのは後の話。呼ばれ方は「ブライトさん」です。同格のリュウはともかくミライさんやセイラさんからは「ブライト」って呼び捨てだし。しかもずーっと「ホワイトベースの責任者です…」とか腰の引けたこと言ってる。なんだよ責任者ってw。パプアと邂逅して補給中のファルメルを叩きに出た作戦では、いきなりみんなを集めて出撃するかどうかを多数決で決めるんです。多数決ですよ多数決。

 だってブライトさん19歳なんだもん。まだ士官候補生なんだよ。それなのに14歳の中坊を二度も殴ってガンダムをスタンバらせたり、シャアを狙撃したり(第2話でシャアのレコーダーを狙撃して破壊したのは実はブライトさん)、ジャブローと折衝したり、弾幕の薄い右舷はなにやってんのと叱咤しないといけない。

 大変ですよね。

 後にニュータイプの名伯楽みたいに言われますが、本人はもっとのんびりしたかったんじゃないかなあと思います。

 いい艦長でした。

 マクロスからは当然ブルーノ・J・グローバル艦長ですよね。どうでもいいけど「・J・」って顔文字だよな。「ロバート・A・ハインライン」とかもかわいいぜ。いや、それはどうでもいいんだ。

 「マクロス・パーフェクトメモリー」というムックに「略奪艦隊」という一作が掲載されていました。統合戦争の最中、潜水艦隊に勤務していたグローバル艦長と早瀬提督(未沙のオヤジね)のおちゃめな作戦行動の一部始終を描く小品ですが、グローバル艦長、もともとふざけた人なんだよ。

 「拾ったものなんか使うからです」とクローディアに非難されると「いや、まったくだ(ヤレヤレ)」って返しますけど、あの辺がグローバル。超グローバル。

 後に政治家になったりして偉くなるらしいんですが、やっぱり冥王星軌道からの帰還の日々こそが、あとから思うと人生における充実した思い出になったのではないでしょうか。ブリッジは女性だらけで大変そうですが。

 いい艦長でした。

 あとは、「艦長」というキーワードで思いついた俺的艦長をあれこれを適当に書き散らしてみる。

 アニメとか動画という枠を取っぱらって言えば、まずはキャプテン・カーク。基本「キャプテン」表記の斉藤伯好っ子だった私ですが、最初に読んだのが「二重人間スポック」か何か「艦長」表記の長編だったので、キャプテン・カークというよりは「カーク艦長」の方が実はしっくりくる。ミスターカトーって誰?ズールーでそ。
「俺の艦長」では古代とか、ブーン(笑)がすぐに自分で出て行く艦長であると指摘されていますが、元祖はこの人ですね。艦長自らずいずいと上陸していって、積極的に事件に巻き込まれるタイプ。あと、カークと言えば、その元ネタになったS・C・フォレスターのホーンブロワー艦長も思い出深いですね。海軍のなんたるかはホーンブロワーに教わりましたよ。

 あとね、小学生の頃は「サブマリン707」の全盛期だったんです。後にリメイクが小澤さとる本人を含めていくつも作られましたが、最初の707が最高。古本はプレミアつきですよ。早く再版すれ!
 707の速水艦長以降、「レッドオクトーバー」→「沈黙の艦隊」ラインという戦う潜水艦作品が作られますが、やっぱり水中戦闘なら速水艦長です。沈黙の艦隊なんてレッドオクトーバーのパクリだし。708の南郷艦長も忘れるな。

 で、その「沈黙の艦隊」。最初は深町艦長が主役だと思ったんですよ。多分描いてる方もそうだったんじゃないかな。でも見せ場は東京湾海戦だけで残念でした。海江田はその後、御都合主義というか、ひたすらエスパー使いながら戦って行くんで、戦闘シーンについてはああ、そうですかとしか言いようがない。そんなわけで海江田には未だに感情移入しにくいです。つるりとした風貌も含めて。あれは燃える艦長の顔じゃないやね。やっぱ艦長なら深町w
 所で「俺の艦長」と聞いてまず脳裏に浮かんだのは、「沈黙の艦隊」の終幕で海江田を見舞いに訪れた溝口水測長が口にする「俺の艦長だ」という台詞です。たぶんこれがイメージソースなんだろうな。ミゾグチ、ガンバロー!

 あとねー、女性艦長ということでタクティカル・ロアとかも挙げようかと思ったけれど、やっぱいいです、これ。萌えとかつまんないエロとかもういい加減やめませんか。

 女性と言えば、カルメンシータは頭剃っちゃだめだろ。せっかく可愛い設定なのに。加藤画伯の挿絵もタッチが荒々しすぎてちょっとコレ、ナイッスよ、と涙目。さすがのコミケでもカルメンシータのレイヤーはいなさそう。ロバート・A・ハインラインさん(・A・がかわいい)の心の中における女性海軍軍人のありようが伺える設定ですね。女捨てないと艦長というか「軍人」にはなれない。見習えよ、タクロア。

 やっぱり美しい女性で燃える艦長というと、マチルダさんくらいなのか(いや、あれは艦長じゃないw)。

 ネモ船長は艦長と呼ぶとすごく怒られるので、ここでは除外しますw

 以前、年相応の年のとりかた | 日々雑感IIというエントリで、大人の象徴としての「隊長」という存在について語りました。「キリヤマ隊長や後藤隊長みたいに、いつかは自分もなりたいな」と書きました。

 「艦長」も「隊長」と同じです。自分で動きにくいポジションなので主役にはなりにくいけれど、大人の代表として若者を導き、沈着冷静でいて奇想天外な作戦行動を展開する。いつ、いかなる時も頼れる存在。そしていつか我々がそうなるべき存在。

 それが「俺の艦長」なのです。


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2013年02月26日

カブのイサキ(6)

カブのイサキ カブのイサキ(6)<完>、出ました。何故か平面も垂直も10倍の広さになった世界で、三浦半島を中心に軽飛行機を足として生きる人々の話。

 なんじゃそらw

 どうせこんな記事を読む人はみんな既読なんでしょうから、ネタバレ全開で行きます。

 最終巻です。どこで終わっても文句なしなので、謎が謎のまま終わるのかと思ったら、意外にもシロさんが懇切丁寧に解説してくれて終わりました。

 たぶん人の少ない世界での人と人とのつながりを描きたいんでしょうが、ヨコハマ買い出し紀行のように毎度毎度、人類を滅亡させるわけにもいかないのでとりあえず世界が10倍になったという舞台を作ってみた、ってのが発想の原点でしょうか。描きたいものを不自然なく並べるために、逆に世界の方を強引に「そういうものとして作る」というおはなしの作り方は三崎亜記にちょっと似てる。どっちも好きですよ。でもそこに引っかかりすぎると物語の本質を見失うこともある諸刃の剣。

 世界が10倍大きくなるってのがなんの隠喩かいろいろ考えてきましたけれど、シロさんの判りやすい解説によれば、「大人になると世界が広くなる」ことのたとえなわけで、これは結局ヨコハマでアルファさんやタカヒロが実感したことと同じ事を言ってるんですね。子海石先生イカスぜ。

 ただ、ヨコハマは「滅亡」エンドというのが冒頭から決まってしまっていたので、タカヒロの成長の話と世界の広がりをリンクさせる話にはなりにくい。タカヒロ個人の世界は広がっていっても、それはいつか消えてなくなって行く希望のない世界であることが、常にあからさまに意識させられがち。従って全体の印象としては、ほそぼそと消え去っていく人類をアルファさんが見守り続けるという後ろ向きな話にしかなりえない構成が前提になってました(いや、むしろそこがいいw)。

 「カブのイサキ」の世界では人口密度は低いけれど、具体的な「滅亡」は語られていませんし、イサキは終盤、「ここではない世界」が存在する可能性にうすうす気が付いていきますから、やはり希望は残されているということでしょうか。

 ということで、おそらく将来にわたって対比されるであろうこの二作、エンドが「滅亡」なのか、「別の世界へのシフトの希望」なのかが決定的に違います。ヨコハマとはちょうど裏表一体の対の関係を成すのかもしれません。

 富士山も東の塔も見るのではなく「登るべき」ところ、「めざすべき」ところ。

 でもみんな身近な身の回りのことに追われて、誰も見向きもしない。ああ、あそこにいつもあるねってだけで。

 イサキと一緒に飛んでいるサヨリも。カジカでさえ。

 山や塔は見てないで登ろうぜ!って大きな声で言いたいです。みなさん、そういう山はないですか。

 結論としてはっきりいうと、別世界へのシフトは「大学」というモラトリアムの世界からの卒業のメタファーなんだろうなあと思っています。私にとってはすごく具体的でわかりやすい話。でも多分高校生以下の人にはわかりにくい話かもしれません。

 大学での4年間は世界が10倍広くなるから、これから大学に行く人たちはみんな心してかかるといいよ。覚悟していてさえ、なにがなにやら4年間ぐらいじゃ計測不可能で終わるらしいですから。


 余談。シロさんがカブのほかに飛行機を隠し持っているのは匂わされていたわけですが、私はぜったいに誉を積んだ機体だと思ってました。四式戦とか、烈風とか、流星改とか。

 だってさ、シロさん、イサキの工場止めで点火プラグ18本注文してたじゃん。プラグを18本使う18気筒の航空機エンジンと言えば、日本人ならやっぱ誉でしょ誉。

 サヨリのピッツが絶体絶命になった瞬間、直上から急降下してきて間一髪その危機を救うシロさんの2000馬力。かこいい!シロさんサインくれ。

 それがピラタスポーターってw
 おいおいおいおいwww

 タービンの音とか灯油の匂いとか言ってるから、ターボポーターなんでしょ。プラグいっぱい買っといてターボプロップじゃ筋が通らないじゃん。

 この伏線だけは回収して欲しかった。
 どうなったんだプラグ18本!

 まあ、そういうお話でしたw

 飛行機好きにも、のんびりした漫画読みたい人にも。
 オススメです!
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2012年10月19日

羽生善治の将棋の教科書

将棋の教科書 秋月が千早を相手に将棋を指すのですが、終盤の読みが甘くてぜんぜん詰まりません。千早の逃げ足が早いというのものあるのですが、あまりにも詰めが甘いので、お勉強用に詰将棋をやらせることにしました。

 なにかいい本ないかなと本屋に探しに行きましたら、羽生名人の羽生善治の将棋の教科書が目に入って、立ち読み後即購入。

 前半にはしつこいくらい1手詰めの問題が載っています。なんでそう差すといいのかの解説がしっかりしていて秀逸。さすがは名人。初心者にも分かりやすいです。

 詰将棋の問題は最大で3手詰めくらいまでが載ってます。5手詰めとか7手詰めは、やりたかったら別の本買うか。

 あとは詰めろと必死の解説がしつこくていいです。その辺が終盤の力なんだなあ。

 これを読んで強くなって、我が家最強を自称する雪風をやっつけちゃってください!

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2012年08月30日

お盆休みに読んだ本

 お盆休みは久々に積ん読を消化せねば、との決意の下、読書にいそしみました。
 忘れないうちに書いとかないと。

■八杉将司「Delivery (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)
 屍累々、手のつけられない地雷原と化しているハヤカワJコレクションですけれど、これはまあまあ読めました。
 Jコレによくある明らかな不愉快作(笑)ではなくて、その辺は評価しますけれど、のめり込むような何かは感じませんでした。
 アイデアとしては割とよくある感じで、宇宙開闢とか言われても、すれっからしのSFものには効きが弱いんですよ。
 加速器を使った宇宙作りなら、機本伸司の「神様のパズル」のほうがまだ読めるかもね。

■川端裕人「エピデミック」 
 お盆前にウガンダでエボラがエンデミックだとかエピデミックだとかいうニュースを聞いて、読みました(パンデミックではない)。
 エピ、疫学については今まであまり印象がなくて、「ホット・ゾーン」に出てくるCDCのウィルスハンターの大活躍のほうがイメージが強かった感じ。勉強になりました。疫学探偵というのはかっこいいね。
 それにしても川端裕人、なんでも書くな。それでいてリーダビリティが高いのは素晴らしいと思います。

■小川一水「トネイロ会の非殺人事件」 
 中編3本。まんなかの「くばり神の記」が一番長く、印象的ではある。
 死に瀕した吝嗇な金持ちの体に「くばり神」が憑依し、遺族に気前よく財産を分けてしまうという話。びみょうにカジシンぽい話の運び。三編ともそうだが、徹底的に理詰めで通すのが小川一水らしいところだろうか。
 カジシンによくある核心の部分にファンタジーを内包するような運びは嫌いではないのだろうが、体質的に許せないといったところか。そのへんは不思議な世界を構築しながらもわざと「説明しないこと」で独特の世界を形成する三崎亜記のいろいろとか芦奈野ひとしのいろいろなんかと絶対的に違うところだな。どんな不思議な設定も絶対に説明する。してみせる。しかも論理的に。そういう意気込みを感じます。
 さすが骨の髄までSF作家。
 表題作は「オリエント急行」の逆で、「誰が殺さなかったか」という話。すごくロジカルだけどちゃんと理屈を追って読みたいところ。最近そういう部分を自明のものとしてつい読み飛ばしちゃうんだよ。ハインラインの「時の門」とかね。

■山本弘「トワイライト・テールズ
 「MM9」の世界を使って書かれた短・中編集。なかなかいい感じです。本編の方は連作小説としての引きがあるような気もしますが、「当たり前のように怪獣が存在する世界」は小噺の舞台としていろいろと使い勝手がよさそうです。しばらくはこれで行けそうな感じ。そのうちソードワールドみたいになるのかな。小林泰三あたりも参加しちゃったりして。
 「ハローサマー、グッドバイ」ぽい感じの中編とか、エロゲデブの妄想少年風短編SFとか、色々入っています。
 最後の最後に、「気特対」が「科特隊」だったのと同じような仕掛けがあります。あっと驚くタメゴロー(←古い)。

■梶尾真治「ダブルトーン」 
 大好きなカジシンですが、どうも最近好みからずれてきてる気がします。近作だと「壱里島奇譚」のパワースポットとかちょっとなーって感じ。藤崎慎吾あたりが書きそうな感じですね。そりゃ書き慣れてる感じはしますけれど。
 「ダブルトーン」は境遇の違う二人の女性が夢を通して記憶を共有してて、という話。悪くはないけど、昔のリリカルな話よりもかなり現実寄りの話で。いっそ初心に帰って泣けるタイムもの(なにそれw)をまた一つ書いてもらいたい気分です。

 読んでも読んでも、在庫が減らないですw

    

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2012年03月13日

冒険エレキテ島

冒険エレキテ島 「冒険エレキテ島(1)冒険エレキテ島」買いました。

 鶴田謙二は見れば買うものと決まっているのです。

 小笠原諸島と伊豆諸島の間をふらふら仕事で飛んでいるパイロットのみくらちゃんが主人公です。愛機がフェアリー・ソードフィッシュ水上機ってのがいいよね。荷物もたくさん載りそうだ。なんたって愛しのストリングバッグだもんね。

 どうも中学の時は、伊豆諸島の御蔵島にいたらしいです。御蔵島の御蔵みくらちゃん。

 みくらがひょうたん島のように太平洋を漂流している謎の島を探すストーリーですが、幻の島が見つかるよりも、幻の2巻が発行されるかの方が大問題で、「Forget-me-not (1)」みたいに続巻が幻に終わっちゃう可能性が大です(終わってない終わってないw)。

 それでも画集と思ってみれば、これで終わっても悔いはないな。

 ソードフィッシュがのんきに飛ぶ太平洋を見たい方には、オススメです!

 

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2011年10月26日

北杜夫死去

 北杜夫氏が亡くなったそうです。
 ユーモアあふれる“どくとるマンボウ”シリーズや、大河小説「楡家(にれけ)の人びと」で知られる作家、芸術院会員の北杜夫(きた・もりお、本名・斎藤宗吉=さいとう・そうきち)氏が、24日死去した。

 84歳だった。告別式は親族で行う。

 近代短歌を代表する斎藤茂吉の次男として東京に生まれた。旧制松本高を経て東北大医学部に進学。卒業後の1954年、初の長編「幽霊」を自費出版した。

 60年には、水産庁の調査船に船医として半年間乗った体験をユーモアを交えて描いた「どくとるマンボウ航海記」を発表。「昆虫記」「青春記」などマンボウものを出版して人気を博した。

 同年、ナチスと精神病の問題を扱った「夜と霧の隅で」で芥川賞。64年には斎藤家三代の歴史を描いた「楡家の人びと」を刊行、毎日出版文化賞を受けた。「さびしい王様」など、大人も子供も楽しめる童話でも親しまれた。「青年茂吉」など父の生涯を追った評伝で98年、大仏次郎賞を受けた。
(2011年10月26日03時01分 読売新聞)
 遠藤周作氏が亡くなってずいぶんになりますし、第三の新人もさみしくなってきましたね。安岡氏はお元気かな。

 北杜夫氏は「どくとるマンボウ」シリーズで有名ですが、私にとっては、なかでも「青春記」がムツゴロウ・畑正憲氏の「青春記」と合わせて二大バイブルでした。「楡家」とか「夜と霧のすみで」よりも「青春記」推し。

 中学か高校で読んだはずなんですが、この二つの「青春記」は当時「これからはじまる俺の人生」への希望になりました。「通過儀礼」としての大学生活へのあこがれをあおりまくってくれたんですね。

 作中描かれる旧制松本高校での、若気の至りの極致をいくようなそのシュトルムウントドランクの日々にあこがれて、私も大学では疾風怒濤のバカばっかやってました。

 今となっては反省しきりで、当時を思い出すと北杜夫氏が躁鬱になったのもうなづけるような汗顔の思い出ばかりなんですが、うちの子供たちにも、そういうハチャメチャな「若さの発露」というものがあるんだ、と知ってもらいたいような気もします。

 あー、それと「さびしい王様」だ。王様になっても人間はさびしいものなのだなぁとつくづく思っちゃったりもしました。

 私の人生を形作ってくれた先人のなかのおひとりです。

 冥福をお祈りします。

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2011年09月27日

エルベの魔弾

エルベの魔弾 「エルベの魔弾」読了。

 梅本氏と言えば、ローガン梅本名義で老眼と戦うモデラーとしても著名ですが、やはり戦記物の著作、翻訳で有名でしょう。でもちょっとだけ怪しげなフィクションも手掛けていて、有名なのは小林源文氏の絵で漫画にもなっていた「ビルマの虎―ハッピータイガー戦記」でしょうか。

 たった一両だけ帝国陸軍に売却されたティーガーIが数奇な運命のもとに武装SSに入隊して戦っていた日本軍人と共にビルマを疾駆する、という「ありそうでなさそうな終戦秘話」を虚実ないまぜにして書かれた興味深い作品です。

 こっちの「エルベの魔弾」もテイストとしては近い物があって、こっちは第三帝国版ですね。数奇な運命の元に(こればっか)国防軍の戦車に乗ることになった少年たちが、終戦間際のエルベ河畔で見たものは…という筋立て。

 クーメンスドルフとか聞くと燃えますよ、そりゃ。戦車実験場から試作戦車をごっそり持ちだしてとか、そういうモチーフは燃え燃えです。佐藤大輔の「鏖殺の凶鳥」なんかだとさらにエスカレートしてマウスだのE100だの最新試作戦車を並べて突進したりするんだけど(その割にあまり活躍しない)、それに比べると梅本氏の場合はちょっと地味というか現実的です。

 でも4号戦車にパンターF型の小型砲塔を乗せた試作戦車は、そのへっぽこぶりがすごくリアルで(厨二的表現)、感心しちゃいました。

 終戦間際の超兵器だらけのドイツ軍に充分な補給とエアカバーを与えたら、どんなことが出来るのかとか、やっぱり妄想しますよね。

 とにかく終戦間際のベルリンの街が、見てきたように描かれています。戦車砲弾の補給だって、どうやってたか、みんな知ってっか?と自慢出来たりもします。戦車兵が戦車の中でどんなふうにして戦ってたのか、非常に詳細に描かれている点はとにかく素晴らしいです。

 戦車に興味があるけれども、そのへんの妄想的仮想戦記には飽き飽きしている方には特に、

 オススメです!


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2011年09月07日

ななめの音楽

ななめの音楽 「ななめの音楽」読了。

 漫画読みはもうなんだって読むんですよ。少女漫画とか関係ない。読みたいから読みました。はいはい。

 少女漫画っていっても川原由美子とかは極北に位置するのかもしんない。普通のBLとか百合とかに比べても一種異様な迫力があります。なんたってホラー扱いだもんね。

 もちろん音楽ものじゃありません。「ななめの音楽」てのはドイツ語でいうと「Schräge Musik」というもので、本来の意味は「ちゃんとしたクラシック」に対する「ジャズ」のことなんですが、その筋の人には、第二次世界大戦末期の夜間戦闘機に搭載された斜め銃をドイツ人が「Schräge Musik」と呼んだことの方が先に思い出されるでしょう(シュレーゲムジーク - Wikipedia)。

 通常は前方に向けて装備する機関砲を、背負い式に斜め上方(斜め下方の例もある)に向けて装備し、敵重爆撃機の銃座が存在しない後方下面の死角から上向きに射撃して撃墜する、という戦法です。アメリカみたいなよその国を攻めてばかりの空軍にはない装備で、重爆の迎撃が重要任務になってしまったドイツと日本に存在しました。どちらも同時発生的に「発明」されたもののようですが(月光 (航空機) - Wikipedia)、日本ではB-29を迎撃していた厚木基地の小園司令の発案だそうで、第三〇二海軍航空隊の月光ですとか、雷電に積まれた斜め銃が有名ですね。

 ま、とにかくドイツの斜め銃は「シュレーゲ・ムジーク」、すなわち「ななめの音楽」と呼ばれていたのです。

 で、なんで川原由美子が少女マンガで斜め銃なのか、今一つぴんとこないんですが、飛行機の絵を書かせたら有数の絵師・佐藤道明師匠(やっぱり師匠と呼ぶ)は川原由美子のアシスタントだったんですね。へー、私は知りませんでした。

 確かに「漂流要塞」とか「海溝要塞」とか「消滅要塞」を見て少女漫画ふうの絵柄だなぁと思っていました。この「ななめの音楽」でもミチアキ師匠は名前がクレジットされていませんけれども、どうみてもこれは半分以上、師匠の絵です。メカ部分はたぶんほとんど。時々違う絵柄の飛行機も出てきますが、圧倒的に実力が違う感じ。あっちが川原由美子画なのかな。女の子の絵も怖い目をした光子先輩とクールな表情のラウラさんは、あれはミチアキ師匠の絵だと思うです。Wikipediaには合作と書かれていますね。香椎の震炎(なんと水素燃料のロータリーエンジン)の機付長は要塞シリーズからの出張だよあれ(笑)。

 なぜか全体的に4コマに割られたイライラするコマ割りもなんだか画集と言うか、イラスト集のような趣をかもし出していてこれもなんだかミチアキ師匠ぽい。師匠、コマ割りとか考えるのめんどくさいんじゃねぇのかしら。

 「最新鋭機が美しくないのは、ほかの国も同様でしたわ」

とか

 「スピットファイア以外のイギリス製品で唯一好きなもの」

とか、なかなかじんわりくる、いいセリフもあります。

 あらすじは、かわいい女の子を夜間戦闘機に乗せたいという、かなり無茶な筋立てだと思うんですが、少女漫画風の展開もありなかなか評価に悩むところです。特にエンディングの展開はどうかと思うけれど、その辺が川原由美子ならではと言えばそんな気もいたします。判断はちょっと置いておきますか。

 とにかくいつでも佐藤道明師匠のヒコーキの絵に飢えている方には…

 オススメです!

 

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2011年09月01日

人を惹きつける技術

人を惹きつける技術 「人を惹きつける技術 」読了。サブタイトルが「カリスマ劇画原作者が指南する売れる「キャラ」の創り方」ですよ。ああうっとおしいw

 小池一夫氏は、言わずと知れた「子連れ狼」の原作者ですよね。その人が魅力のあるキャラクターの作り方の初歩を教えてくれます。

 永遠のワナビーとしては、秀逸なアイデア、練られたプロット、魅力あるキャラクタはどれも大切なので、多少のどや顔は気にしないで、いいところだけ頂きますよ。

 ちょっと詳しく書いちゃうと営業妨害になっちゃうくらい、明確なキャラクターの作り方の原則(割と簡単w)を書かれています。その通りに作れば、誰にでもキャラが作れそうです。自身の作も含め、既に上梓されている他作家の作品分析もその原則に沿って検証していますから、けっこう説得力があって勉強になりました。

 物語そのものよりもキャラクターの出来の方が作品の評価に直結しているというのは、最近の岡田斗司夫氏の評論と通じるところもある気がして、いささか興味深いです。

 あいつも弟子、こいつも弟子。俺の言うとおりにやってみんな成功しているぞよ、という自慢パートを軽くスルー出来る方には…

 おススメです!


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2011年08月10日

時空改変空母・越後 -大和の帰還-

時空改変空母〈越後〉−大和の帰還− 「時空改変空母・越後: 大和の帰還」が届いていたので、旅行中に読んでました。せっかくなので船の上で読んでみるというぜいたく。

 仮想戦記は90年代末頃が全盛期だったのだと思いますが、最近でもまた面白いのを書いてくれる人がいるので、石の中の玉を探すようにして読んでいます。

 これは1970年代中ごろの日本が1944年にタイムスリップして、というお話。

 1970年代というと、かの豊田有恒氏による仮想戦記の嚆矢「タイムスリップ大戦争」「タイムトンネル大戦争」といった作品が上梓された時代で、それだけ考えても懐かしい設定です。

 ただ、作者の佐原氏によると、「日本列島タイムスリップもの」というのは豊田氏のこれらの作品以降あまり存在しないのだそうで、非常に興味深いチャレンジだと思います。

 1970年というと74式戦車とか75式自走榴弾砲とか7x式国産装備が次々に登場した時代。また田中角栄が全盛を誇った時代でもあります。戦争指揮する田中角栄。すばらしい発想。

 いまでも扇子でパタパタ自分を煽ぐと「まあしょのー」とモノマネをしてしまうひとも多数なので(俺調べ)、昨今の短命首相と比べると、愛された宰相なのかもしれません。ヒールとして、というのもあるかもしれないけれど。自分が子供の頃は単純に「悪い奴」という思いがあって、嫌いだったな。当時の少年らしい紋切り型な正義感から離れて今思うと、面白いおっさんだったのかもしれない。娘はアレだけどね。

 あ号作戦の直後、というと最大戦力が南方に展開してた時期なので、GFの強力な艦隊を持ちかえるとしたらいいタイミングかと思います。

 いくつか今後の展開で気になるところもあります。実際に自分の若い頃と出くわす奴が出てくるのかどうかとか、栗田弱将説はどうケリがつくのか(佐藤大輔なんか一番先に殺しちゃってる)とか、1940年代当時モン兵器は補給がないので、零戦はもう活躍しないのかとか、当時の海軍軍人ならではの指揮は見られるのか(このままだと小澤も栗田もいなくてもいいんじゃないか)とか、その辺は続巻でまた確認したいと思います。最後の二つは結構大きな問題。GFいらなくなっちゃうもんな。

 なんとなく仕掛けが見えるようにもなっていますが、タイムスリップにもまだまだ複雑な事情がありそうで、その辺も続巻を楽しみにしています。

高速輸送船 デッキの日陰で読んでいたら、時々こういう艦影wが見えたりします。

 「高速輸送船発見。前部発射管注水!」

 とか叫びたくなります。
 フネはいいなぁ。

 あ、そだ。仮想兵器として一番ぐっとくるのはやっぱりIM-16です。新谷師匠万歳!

 仮想戦記はこのところご無沙汰でしたが、これはなかなか楽しい一冊でした。
 オススメです!

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2011年07月29日

小松左京氏死去

小松左京氏が亡くなられたそうです。
未来を予見したかのような数々の小説を残し、小松左京さんが26日、亡くなった。膨大な知的エネルギーと冒険心に満ち、「ルネサンス的巨人」「人間コンピューター」などの異名をとったSF界の大御所は、最期まで日本の未来を考え続けていた。

 小松さんの秘書によると、大阪府箕面市の入院先で今月24日、東日本大震災について家族にこう語ったという。「この危機は必ず乗り越えられる。日本は必ずユートピアを実現できる。日本と日本人を信じている」

 毎日小学生新聞では、「君たちの時代に〜先輩からの手紙」欄に、小松さんのインタビュー(全3回)を連載中だ。東日本大震災の津波の破壊力について「夢に出てきて、寝小便しそうになるほどのショックだった」(16日付)と語っている。23日付では「本当の学問は、自分の好きなことを一生懸命やること」と子供たちを励ました。最終回となる30日付では、創作の原点となった戦争への思いが語られる。


 しばらく前に震災の件で毎日小学生新聞に出ておられましたが、以前の「でっぷりサスペンダー、黒ブチ眼鏡にくわえ煙草」という印象はなく、ずいぶん痩せてしまわれたなぁという感じでした。胃をやられた後、スリムになられたんだそうです。

 小松左京氏、私の幼少の頃、「日本沈没」でずいぶん怖がらせてくれました。そういう意図はなかったんでしょうけど、当時の世相にはあの五島勉なんかのノストラダムス関連とかで終末感がただよっていたんですよ。世紀末が自分が生きている間に必ず来るのはわかっていたし、公害なんかも多かった。

 光化学スモッグで涙を流しながら、チクロ食ってたんですよ、俺たち。なんとなく世の中全体に滅びの予感がありました。真綿で首を絞められる感じというか。そんなこんなで小学校の頃はすこし辛かったです。

 「復活の日」は、実は映画版はあまり印象にないんですが、やはり小説版の方はショックでした。人類が滅亡する瞬間、ほんの数日であっという間に誰もいなくなっちゃうところ。「自分がいつかどこかで死ぬこと」というのをはじめて具体的に考えたりもしました。高層マンションはやめとこう、とか。とにかく馬のアトキンスはかわいそうですアホーイ。

 あと高校の頃の「さよならジュピター」でとどめかなー。当時「木星太陽化」は科学トピック的にトレンドだったのかもしれません。よくモチーフに取り上げられていたような気がします。

 いや、映画も当時はフツーに感動したんですよ。スイーツ(笑)。
でも後で見るとやっぱなんか変。無重力シーンもだし、特撮もだし、ジュピター教団でしょ。でもやっぱりあの辺、小松テイストだなぁ。

 「首都消失」のモチーフになった「物体O」という作品があります。突然巨大なリングで首都圏が遮断された時にどうなるかを書いた中編。これも大好きです。「首都消失」は首都の外側の話だけれど、「物体O」は外界と連絡が途絶したリングの内側の話です。

 結局、「いろいろな情況におかれた人間(特に日本人)がどうふるまうか」ということをテーマにし続けた作家、だったのじゃないかと思います。「日本沈没」が沈没後の日本人のふるまいを描こうとしたが、日本列島を沈めるだけで1500枚つかっちゃった、というのは有名な話ですし。

 先日の東北大震災を目の当たりにされて亡くなったのだと思いますが、あの時、日本人が取った行動がどうだったのか、じっくり書き込んだ評論なり作品なりを読んでみたかったと思います。

 小松先生、日本人は生きるに値する民族ですか?

 とにかくひとりの巨人がまた世を去りました。

 合掌。


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2011年06月16日

陸自マシーン大図解!

陸自マシーン大図解 モリナガ・ヨウ氏の「イラストとDVDで見る 陸自マシーン大図解!」購入。

 モリナガ・ヨウ氏と言えば、以前「働く車大全集 | 日々雑感II」でも取りあげましたが、私のフェイバリットなイラストレータであり、モデラーさんです。

 モリナガ氏との出会いはそもそも「怪獣VOW」の表紙でした。その緻密に構築され、極端なデフォルメによる「模型としてのリアル」への指向に、当時目の開く思いをしたものでした。

 セカンドインパクトは世に「35迷宮」として知られる、「35分の1スケールの迷宮物語」でした。タミヤの新版タイガーIが出るまでの「プラモ冬の時代」とその後続出した「出戻りモデラー」たちの世界を描く、あるある感あふれるプラモデル業界イラストルポの名作です。

 この「陸自マシーン」は色々と複雑ななりたちで出来上がったムックのようですが、極端に濃いマニア趣味は避け、「働く自動車大全」に通じる陸自AFVのちょっと不思議なここあそこをレポートしたものです。一般受けするんじゃないかな。

 それにしても94式水際地雷敷設装置なんて、私も知りませんでしたよ。総火演にも出てこないしな。

 MLRSがちびっとしか出てこないのはともかく、退役間近の75式自走15榴が紹介されないのはちょっと残念でした。豊田有恒の「タイムトンネル大戦争」でも「してあの重戦車は?」なんて言われてたのにねー。

 イラストも相変わらずのモリナガタッチで、オススメです!

 

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2011年05月19日

星の舞台からみてる

写真.JPG 「星の舞台からみてる (ハヤカワ文庫JA)」読了。今週前半は東北ツアーだったのですが、新幹線のなかで読みました。そういえばこれ、新宿の紀伊国屋で買ったんだっけ。ずいぶん寝かしちゃったなぁ。

 帯に依ると「愛と勇気のシステムエンジニアSF」だそうです。お仕事小説なのかなぁと手に取ったのですが、AIをテーマとした純然たるSF作品でした。

 近未来の社会、主人公の女性はHCCという「死後の整理」を本業とする企業に勤めています。確かに一人暮らしのまま死んじゃったりしたら色々後の面倒を見てもらわないと困るよね。

 で、主人公にある日VIP級のシステムエンジニアの死後の後片付けの仕事が回ってきます。そのちょっと変わったオーダーにより、主人公はそのSEの人生を小学校からたどる調査を始めますが…という展開。

 著者もWIDEプロジェクトのエンジニアだそうで、ネットワークの描写も非常にリアルです。エンジニアらしく、広がる伏線ももれなくきれいに回収されますし、読んでいて気分がいいです。kermitとかテキストエンコードとか懐かしすぎるぜ。

 「魂」「自我」についていくつものモチーフが提案されます。たとえば「自己が外部から規定されることで確立する」という件。千早が自分のことを「千早」と呼ぶのは、回りがそう呼ぶからであって、自我が確立するとそれが「僕」という一人称になるはずです。つい先日まさにその通りのことを千早が言っていたので、膝を打ってしまいました。曰く、

「ちはや、がっこうのおともだちのなかでは『ぼく』っていうようになったんだよ」

 だって。なるほど。いよいよ自我のめばえですね。

 ちょっとよくわからないのが、ネットワーク上の存在が国境や「地上」「宇宙」という現実の地域性に縛られている描写です。インターネットワークの帯域やFWによって区切られている、という方がわかりやすかったんじゃないかなぁ。「オーバーレイ」という表現もいささかわかりにくい。「サーバ」と言い換えると野暮だけれど、今風に言うとクラウド上のサービスあたりなのかな。OSIのネットワークトポロジーを拡張している未来のはずなんだけれど、その辺の描写ももう少し欲しかった気がします。

 物語後半では、知性が身体性と関わって存在するということが強く主張されます。そういえば「攻殻機動隊」でも「完全義体にすると、自律系の信号が消失する」とかなんとか欄外に書かれていたような気もします。コミニュケーションの基本は下卑た現実の中にある肉体を意識せずに、あり得ないということですね。すごく同意。

 常に「スマート」を意識していた若者が、サイバー勝負に敗れて、ラーメンを食いに行く身体性。これはすばらしい描写です。

 いい言葉を一つ引用。
検索するな、他人の知識に頼るな。肉体を忘れるな。身体性を忘れるな。
 うーん、いい言葉だ。

 ネットワークにつながって体が地球サイズにでかくなったような感じとか、Webでなんでもできる、というような仮想的な万能感てのは「身体性」の間逆の発想なんでしょうね。「Webで町おこし」とか「Webで人助け」とかそういうのに関わる時は、よく注意しようと思いましたw

 それにしても、30代40代の宇宙への指向って、一体なんだろうね。やっぱりヤマト・ガンダム世代なのかなー。

 エンジニアって言ってもL4から上だけの人と、L3から下もやる人ってやっぱり雰囲気違うよな、と思った次第です。とにかくものすごく読者を選ぶ小説だと思いますが、これが心にヒットする人にはずっと手元に置きたい一冊になるんじゃないでしょうか。

 ということで、オススメです!


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2011年05月07日

ザ・シネマハスラー

シネマハスラー.jpg 「ザ・シネマハスラー」です。連休用に仕入れた本の中では最初に手を出したのですが、おもしろくてあっという間に読んじゃいました。

 日本語ラッパー、RHYMESTERのMC宇多丸氏による映画の評論本なのですが、普通の評論本とちょっと違うのはこれがTBSラジオウィークエンドシャッフルのいちコーナーのトークとして語られた評論から再構成されたものであるということです。これが全部しゃべりなんですよ。いくら準備してあるとはいえすごいよ。たとえ原稿を前もって書いてあるにしろ、そのライブ感には圧倒されます。

 評論対象の映画のセレクトもすごい。公開中の映画の中からサイコロで一本だけ決めて観に行き、その感想を評論の形で30分のしゃべりで伝えるという脅威の映画評論番組なのです。何を見るかはサイの目次第。だからシネマハスラーなのですね。

 それにしても宇多丸氏、本当によく映画見ているよな。今日のポッドキャストでも女子校のトイレネタの中で「ギャラクシー・クエストでやってたじゃん」とか、普通に出てきてたし。

 映画の評論も非常に論理的で、駄目な物はどこが駄目なのか、しっかり理屈で伝えてくれる姿勢はすばらしい。サイの目次第ではドラえもんとかだって観に行ってまじめに語っているんですよ。

 書籍になっていくつかお得な点がいくつかあります。

 しまおまほって「漫画家にしてコラムニスト」と紹介されていますが、まんが読んだことなかったよ。こういう作風なんだね、という確認ができました。だから買うってわけじゃないけど。
 
 あと欄外の解説が面白くてためになります。番組の中ではばんばん飛ばしてしゃべっていますが、話の中で出てくる映画でやっぱりこっちが見ていない映画もたくさんあるんですよ。簡単な解説が豊富に加えられていて大変勉強になりかつ楽しいです。

 この「ハスリング」という見方はきっとものすごく頭がよくなる映画の見方だと思います。本も同じですが、最初から書評を書く気で本を読むと、これはただ流し読みする以上に内容を深く理解できるでしょう。「理解」とは人に伝えることで自らの内に成立するものだからです。それと同じことを映画でやっているんですね。すごいこと考えたなぁ。

 とにかくこの映画評論、映画をあまり見ない方にでもオススメです!!

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2011年04月12日

刑事コロンボ 完全捜査記録

9192.JPG 「別冊宝島 『刑事コロンボ完全捜査記録』 (別冊宝島 (1330))」買いました。Amazonで見ると同じ書名、著者で文庫版のもあるんだけれど中身は同じなのかな。

 コロンボはDVDを一通り持ってるし、謎本も出ればついつい買っちゃう方なんですが、これは今までのコロンボ解説本のなかではベストと言えます。各エピソードのゲストスター、事件の概要、脚本の内幕などコロンボが二倍楽しめます。

 またコラムとしてコロンボがよく使う親戚筋のネタや、愛すべきポンコツ車・プジョー403の話や、いつまで経っても名前を付けてもらえない「ドッグ」の話、よく出てくる同僚刑事やあのチリ屋の親父の話なんかが満載です。吹き替え版の俳優さんの記事も秀逸です。

 イラストもうまいし、カットはかわいい絵だし、コロンボファンの妻も大満足のよう。

 コロンボ好きにはまずお勧め。

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2011年01月10日

あたらしいみかんのむきかた

あたらしいみかんのむきかた 母上が本屋ですごい本を見つけてきました。「あたらしいみかんのむきかた」という本です。

 みかんの皮をむいて形を作る、というみかんの皮アートです。おお、メルカトル図法。すばらしい。

 いや、そのアートだけでも十分すばらしいのですが、作中描かれる絵とお話がすごい。ただの工作本じゃないんですよ。

 むきおという少年が「ただみかんのかわをむくだけでいいのだろうか」という人生の疑問に向き合う出だし、すばらしいです。
 「ぼくむくよ もっとみかんをむくよ。」
 なにか むなさわぎがする。そんな大晦日が はじまろうとしていました。
 すげぇよ。むきお。

 しれっとうしをむいてしまう妹のむきみとの息詰まる対決や、どうしてもむきおにりゅうをむかせたがるのぶむきとのやり取りは、子供たちが歓声を上げる展開です。これは一読の価値がある。うむ。

あたらしいみかんのむきかた、うさぎに挑戦 右の脳から生まれてきた徹底的な右脳男、雪風がさっそく挑戦します。

 まずはペンで展開図をみかんに書き入れるようです。

 うーん、最初は難易度のいちばん低いうさぎから挑戦するところが奥ゆかしいね。

 で、カッターで切れ目を入れてそっとむくと…


あたらしいみかんのむきかた、うさぎ でけた、うさぎ!

 へそんところが目になっているところがおしゃれ。

 あ、みかんを提供頂いたスフィア姉、こんなことにつかってすみません。中身はおいしく頂いております。三ケ日みかん最高ッス。




あたらしいみかんのむきかた、いのししに挑戦 秋月も挑戦しますが、無謀にも「いのしし」をむこうとしています。

 そんなものより、りゅうをむいてよ!









あたらしいみかんのむきかた なんじゃこら。わけのわからないものが出来ました。

 しばらくみかんのあたらしいむきかたに凝りそうな我が家です。

 公式サイトはこちら。
あたらしいみかんのむきかた|小学館

 サンプルページの立ち読みも出来ます。
サンプルページ


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2010年11月21日

おー、ていかーちゃーんす♪

ていかーちゃーんす 「機動警察パトレイバー」に出てくる特車二課第二小隊の後藤隊長がご機嫌な時に歌を歌っていることがあります(韜晦する時も然り)。

 で、読者を悩ませているのが、
「後藤隊長が『おー、ていかーちゃーんす♪』と歌っているのは何の歌なんですか」
という疑問。

 えー、そんなもん、○○○○○○○でしょと私は即答するのですが、ぐぐってみると浜田省吾説なんてのがあって首をひねっちゃいました。そんな曲、ないよね、浜省に。

ていかーちゃーんす ABBAの「Take a chance」ってあった気がするけれど、うーん、後藤隊長がABBA、それはちょっと。風見慎吾の「涙のtake a chance」てのもあったけど、アレだったら後藤隊長は絶対に「ていかちゃん♪ていかちゃん♪」って二回繰り返したはずなんだよ。ハウンドドッグの「フォルテシモ」だ、とか言いきってる奴もいて、ちょっと80年代なめんなよって感じ。

 ちなみに私が即答したのは、「オメガトライブ」です。正確には1986オメガトライブかな。そう「Super Chance」だよ。
 Ah Super Chance
 悪戯っぽくウインクしたね
 「嫌いよ…」と。

てやつ。俺もパトレイバー読む時は、あの節で脳内再生してたよ。ノリノリだよ。後藤隊長にぴったり。後藤隊長は80年代AORのノリなんだよ。

 歌詞違うけれども、きっと後藤隊長が「す〜ぱちゃ〜んす♪」てのを「て〜かちゃ〜んす♪」と間違えて覚えてたんだよ。そうにきまってる。

 と当時同じ時間に青春を過ごしたロートルは思うのです。

 なんかスゲーどうでもいい話だな。でも書かずにはいられないのだ。
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2010年11月19日

ヒルクライマー

ヒルクライマー 高千穂遥「ヒルクライマー」読了。

 「ダーティペア」と「クラッシャージョウ」の高千穂遥が自転車にはまりまくっているのは数年前に本で読んで知ってたんだけど、こんな自転車小説まで書くようになってたんだな。

 リーダビリティはあいかわらず。数時間で読めます。

 そう言えば、菅平に自転車で上がっている人をたまに見かけます。競輪の選手が練習してるのかなーとか思ってましたが、あれがヒルクライマーというか、「坂バカ」っていう人たちなんすね。

 私も学生の頃、北米大陸を自転車で横断した学術探検部のカツマタくんが渡航資金集めのために譲ってくれたお古のロードに乗っていたことがありました。部活の合宿で(あ〜るの真似して行ったんですけどw)高知から小豆島まで四国山脈越えて自転車で行ったりしましたから、雰囲気だけはわかります。ぜんぜんヒルクライマーじゃないけど、シッティングでケイデンスで回して山を越えるのは楽しいことだと今でも思っています。

 若干メタボ気味のごくありきたりなサラリーマン・大作が偶然見かけた自転車によるヒルクライムレース。普通なら新しい趣味にはまっていく様子を微に入り細をうかがって描くんだろうけれど、話は冒頭のシーンから5年後、大作が既にトップクライマーとして君臨しているところから始まります。

 5年間、人生のすべてを(いや、これがほんとに生きていく最低限のこと以外の全て、なんだ)自転車に投入して自らを鍛え抜き「坂バカ」の頂点・トップクライマーの地位についている大作。そしてマラソン競技からドロップアウトして、自転車で才能を花開かせる若い礼二。この二人がヒルクライムレースでしのぎをけずる最終レースまで、一気に読ませます。

 仕事以外のすべての時間を自転車につぎ込んだ大作は家庭が完全に崩壊しているのですが、それでも坂を登り続けます。無になるため。家族の目を忘れるため。何のために坂を登るのか。家族が大切じゃないのか。あなたの価値観はどうなっているのか。そう問われても当然ですね。

 「俺が自転車で走ること。イコール生きることだ」

 そう。私はあんな風には坂を上がらないけれど、何かをしている自分こそが自分自身だという思いはよくわかります。家族を大切にするとかそういうこととは全然違うもの。それをなさない人生なんて、自分が自分で無くなるような何か。

 そう思う時があります。家族とか仕事とか大切なものはたくさんあるけれど、自分が自分でいるためのもの。それはきっと誰にも奪うことはできないものなのかも知れない。言い訳かもしれないけどね。

 読めばペダル踏んで坂を登りたくなること請け合いの一作です。


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2010年10月07日

第六大陸

第六大陸 「第六大陸」読了。小松への行き帰りで読んじゃいました。小川一水のリーダビリティ、相変わらずすげぇ。

 小川一水は大抵読んでいるのですが、このすこし古い作品は不思議と今まで未読だったのでした。

 エデンというレジャー会社がとある理由で月に商業施設を作る計画を立て、建設会社とロケット会社が奮闘する、というお話。

 最近宇宙開発には話題が多いのですが、科学調査ですとか国の威信とかで数兆円と言った予算を引っ張れる時代でもない、ということのようです。要は「宇宙はもうかる」という現実的なビジネスの場所としないことには、投資を募ることもできず、宇宙開発は先細りになる気配です。「宇宙がもうかる」ということを数字のマジックではなしに、「月面に土建屋が建設物を構築する」というバリバリにリアルな設定で構築されたのがこのお話。熱い話ですよ。熱気むんむん。

 私としては、「先端のエンジニアリングと経営の共存」を見どころにあげたいと思います。

 非常に先鋭的な経営者が数名登場します。技術を形にすることが生きがいで、そのために会社を経営しているような人。実際「会社経営」という世界は、雑事に追われてばかりでそういった純粋な「こころざし」というものを日々いろいろなものに変えていかないとやっていけない世界ではあると思うのですが、そのあたりの事情も含めてちゃんと大人が読むのに値する物語になっています。普通だと資金繰りの話とかで嘘だらけになるんだけど、なんとなくうまく騙してくれてる感じ。上手です。

 主役は三十代のエンジニアですが、「技師が主役」というと例えば、「日本沈没」の小野寺ですとか「さよならジュピター」の本田ですとか(小松左京ばっかだなw)、いろいろ過去にも例があるのですが、「実際に仕事をしているシーン」というのがなかなか難しいようで、本来の仕事以外の「人を助けたり」とか、「誰かを説得に行ったり」とか、そういうエクストラなミッションのシーンばかり描かれてしまうというきらいもあります。技術者を描く時に、この人なにが本業なのか、日々どういう仕事をしているのかというのか、というところがもうすこしはっきり描かれれば、もっと人物は魅力的になったかもしれません。せっかく「機動建設部」なんていう燃え燃えな部署なんだからね。

 
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2010年09月30日

去年はいい年になるだろう

 「去年はいい年になるだろう」読了。

 ここんとこ小川一水「第六大陸」「天冥の標」山本弘「アリスへの決別」なんかを並行読みということをやっていて、書くよりも読む方が多い毎日です。

 「去年はいい年になるだろう」は、先に「アリスへの決別」を片づけちゃったんで、先に買ったのを積んどくままと言うのも何かな、と思ってやっつけちゃいました。時間テーマ兼並行宇宙テーマと言ってよいかと思います。

 お話は2001年9月11日から始まります。この日以降、SF作家の「山本弘」氏という人につぎつぎに起こる事件を私小説風に書きつづったものです。

 やっぱり9.11というのは大きな衝撃があった事件でありました。なにかこう世界の底が抜けたような感じ。現実が実はフィクションというか非現実と地続きであることが分かってしまったような感じを覚えたのは私も覚えています。

 「安全」とか「宗教」とか「常識」とか、共通幻想のもとに社会は成り立っているんだとか、こんな事件も共通幻想から発生して、その幻想の巻き添えで現実に人が死んじゃったりするんだなって。

 お話としては9.11以降そこから更に非現実的な事件が次々に発生していくわけですが、その中でおそらく現実とリンクしているであろう事件や人間関係が描かれているのが興味深いです。ほぼ完全な実名小説です。今まさに私が読みかけている「第六大陸」を執筆しようとしている小川一水氏までが登場してきたのはいささか驚きました。SF作家実名で登場とかいうとすぐさま「亜空間要塞」とかを思い出しちゃいますが、こういう風に私小説風に淡々と描かれるのも、なかなか味わいが深いです。

 アメリカ人にしても、中国人にしても、日本人にしても、なぜこうも「正しい道」を選べないのか。その愚かさには驚くばかりです。個人個人ではきっといい人も多いのでしょうけれど、「国家」として行動するときになぜ結果としてこれほど愚かな判断をしてしまうのかと不思議に思うこともあります。

 日本人は自嘲的に「民族として劣化している」と自己評価しているようなところがありますが、アメリカなんかもWW2の頃の戦い方、立ち回り方と昨今のふるまいを比べてみると、よりよくなっているのかどうか疑問に思うことも多々あります。それぞれの国家・民族が最適な行動をした時代、というのを考えてみるのも興味深いことかもしれませんね。

 作中の「山本弘」氏、おたくな生活から脱却し(?)、素晴らしい伴侶を得て、幸せな家庭を築いているわけですけれども、非現実な事件のなかでどのように幸せな家庭を守っていくのか、というのもお話の軸になっています。私も一家を持つ者として、いろいろと考えさせられる展開でした。

 久々にズギンときた一冊でございます。


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2010年09月02日

頭の体操

頭の体操 多湖輝氏の「頭の体操」買いました。なつかしのカッパブックスだ。

 表紙が昔のとはちょっと違うけれど、中身は同じです。前書きには昭和41年なんて書いてある。私が小学生の頃にはまった記憶がありますが、当時、既にメジャー中のメジャーだったのですね。子供たちの頭を少し柔らかくししてやろうと思って、リビングに投入予定です。

 あとがきを見ると参考文献に「サム・ロイドのパズル百科」なんてのも入ってます。そいつも私の小学校時代の愛読書だったですよw。マーチン・ガードナーの「数学マジック」とかもちょうナツカシス。

 久々に開いてみると
<例題>葡萄酒瓶がある。コルク栓がしてあるのだが、あいにく、栓抜きがない。瓶を割らず、コルクに穴もあけないで、中の葡萄酒を飲むには、どうしたらいいか。
てな例題がごっそり80問ちかく入っています。こりゃ楽しいぞ。

 頭が固いの柔らかいの、脳がどうのというとちょっとアレげな感じもしてきますが、要するに「先入観に囚われないこと」「言葉の錯覚に引っ掛からないこと」「発想を広げること」がキモであり、これは生きていくうえでとても大切な資質の一つとなると思います。

 わたしのオツムの何分の一かはこの本で形成されていたりもしますから、ぜひ子供たちをはまらせてやりたいです。

 はまらす気まんまん。


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2010年08月20日

坂本龍馬は明治維新の最重要人物ではない

 今週の週刊文春8/12・19号の「ホリイのずんずん調査」は「坂本龍馬は明治維新の最重要人物ではない」という刺激的なタイトル。

 私も龍馬にかぶれて高知までさすらったクチですが、あの龍馬はたぶんに「司馬遼太郎の龍馬」なんである、ということは薄々察していました(笑)。在高中に「幕末青春グラフィティ Ronin 坂本竜馬」なんかも公開されましたが、武田鉄矢あたりが騒げば騒ぐだけ鼻白む感じもあってちょっと斜に構えた龍馬ファン。

 堀井憲一郎氏は馬鹿ばっか書いていますけれども、これだけ積み上げると平成時代の社会・風俗に関する貴重なデータ残したと後世言われるかもしれない偉い人。そして年に数回、満を持して書いたのだろうなと思える記事があるのですが、たぶんこれもそれ。

 坂本龍馬は政治史的に見て幕末の最重要人物ではない。重要なのは西郷、大久保、木戸であるという論。
でも、歴史は現実である。明治の新しい政府が始まったとき、これを作ったのは誰かと、明治の地平から考えると、この三人になる。
 司馬遼太郎の小説は、そういう視点では書かれなかった。それはまた、その時点では言わなくてもわかっていることだから、だった。
 坂本龍馬は、明治の初年には完全に過去の人である。おそらく「戊辰の戦い」に関わっていないものは、当時の人にとって、リアルさのない過去の人だったのだ。

 明治の初めには龍馬は過去の人だった。なぜなら戊辰戦争に関わっていないから。わかりやすい。確かに「竜馬がゆく」なんかにも御一新後龍馬は忘れ去られ、日本海海戦の頃に皇后陛下の夢の中に出てきて最初の龍馬ブームになったとか書いてあった気がします。

 倒幕は長州、薩摩と言った雄藩の行動の結果であり、、長州、薩摩はトップを差し置いて事実、西郷、大久保、木戸といった連中が動かしていたわけだものね。だからこれは同意できる。坂本龍馬(と司馬龍馬)が魅力的なのは、政治史的に最重要というわけではないけれど、大きな志を持って歴史に関わり、道半ばにして倒れた点、とつきつめてしまえばそういうことも言えるのかもしれない。

 脚色を除いて考えると、龍馬の行動に何が残るか。大政奉還があっても結局は内戦としての戊辰戦争は起こり徳川は滅亡する。龍馬がもしいなかったとしても歴史の流れはあまり変わらないだろう。龍馬ファンとしては残念ではあるけどね。

 それでも坂本龍馬が魅力的なのはそういう幕末の歴史を動かした張本人たちの間をすいすいと泳ぎ回る自由闊達なその姿なのではないか。そう言う点で、龍馬は幕末の政治に於いて「最も重要な人物」ではないけれど、「もっとも魅力的な人物」足り得る存在だ。司馬史観をさておいても、誰もが描く好ましい龍馬というのは、そういった「自由人」としての人物像だったのではないか。最近の作品ではどうなのか、ね?いや、見てないんですがw

 今回の堀井氏の原稿で一番重要な論点は、実は現代に係る。
 龍馬が幕末の人物のトップであると本気で言っているのなら、国の運営はどうでもいいといっているようなものだ。だから現役政治家で「龍馬を政治家として尊敬してる」と広言して憚らない連中はチェックしておいた方がいい。その人物が、慶応から明治にかけての政治について、あまり深く考えていないのは確かである。

 もしかすると堀井氏はものすごく龍馬が好きなんじゃないかとも思う。上記のような存在として魅力あふれる龍馬と、単にTVドラマのネタとして消費される情報としての龍馬の格差には絶望しているのかもしれないけれども。
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2010年08月15日

戦争中の暮しの記録

戦争中の暮しの記録 「戦争中の暮しの記録」です。実は小学校の頃からの愛読書です。

 普段、戦争の道具や人殺しの道具をかっこいいのわるいの、いかしてんのだせぇのと、そういう目で見てしまう自分ですが、たぶん実際に60何年前に生きていれば、五式戦で敵艦載機と渡りあったり、四式狙撃銃で敵狙撃兵と壮絶な撃ちあいとかしているよりも、十中八九この本に載っているような平凡な生活をしていたり、あるいは寄稿する幸運を得ることもなく名もない市民として歴史の陰に消えて行ったりしたんだと思います。そういう自覚はあるんだ。

 ここにあるのは、素人が書いた生の生活の記録。疎開生活、極限の食生活(毎日の献立リストつき)。子供の遊び。交通機関、病院、学校、闇市の記録、信じられるはずの人間に裏切られる経験。どれも身体感覚に一番近い所で書かれた貴重な記録です。これが一般市民にとっての戦争なんですね。「特攻」とも「集団自決」とも違う圧倒的多数の人々の「戦争」の記録です。

 いろいろいうと自分のなかの一番複雑なところを全部語らないといけなくなってしまうので、まあ深くは語らないことにして、何度読んでも一番心に響く花森安治のことばを引用します。
 戦争の経過や、それを指導した人たちや、大きな戦闘については、ずいぶん昔のことでも、くわしく正確な記録が残されている。しかし、その戦争のあいだ、ただ黙々と歯を食いしばって生きてきた人たちが、なにに苦しみ、なにを食べ、なにを着、どんなふうに暮らしてきたか、どんなふうに死んでいったか、どんなふうに生きのびてきたか、それについての、具体的なことは、どの時代の、どの戦争でもほとんど、残されていない。
 その数少ない記録がここにある。
 いま、君は、この一冊を、どの時代の、どこで読もうとしているのか、それはわからない。
 しかし、君がなんとおもおうと、これが戦争なのだ。それを君に知ってもらいたくて、この貧しい一冊を、のこしていく。
 できることなら、君もまた、君の後に生まれる者のために、そのまた後に生まれる者のために、この一冊を、たとえどんなにぼろぼろになっても、のこしておいてほしい。これが、この戦争を生きてきた者の一人としての、切なる願いである。 編集者

 ずっと一冊持っていましたが、数年前、子供達に読ませるようにもう一冊買っておきました。子供の数だけ買っておくべきか。

 なんとなく、今日エントリーしたくて、お休みだけど更新してみました。

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2010年08月04日

ボクハ・ココニ・イマス 消失刑

ボクハ・ココニ・イマス 消失刑 カジシンこと梶尾真治の新作。「ボクハ・ココニ・イマス 消失刑」。ここんとこぶっちぎりの生活で、暇は全然ないけど、カジシンは読む。大好物だから読む。

 ふとしたことで罪を犯してしまった青年が、懲役の代わりに新しくできた「消失刑」を選択するお話。

 「消失刑」てのは、特殊なデバイスを使って他の人と「コミニュケーションが取れない状態」になって、自宅で自由に過ごし刑期を勤めるという刑。他人からは見えなくなるし、こちらから他人に声をかけたり存在を誇示したりする行為が出来なくなる刑です。「コミニュケーションが取れない状態」というのは思ったより辛そう。

 SF的な考証としては、突っ込みどころ満載なのでしょうが、一般の小説としてはこのくらいでも成立するかなと言う感じ。

 前作(だったかな)の「メモリーラボへようこそ」などでも感じたのですが、「カジシン」という名ですぐに連想するような、胸が締め付けられるようなせつない小説では、もはやなくなっています。昔の「美亜へ贈る真珠」とか「百光年ハネムーン」とか「時尼に関する覚え書」とか。「黄泉がえり」がやっぱりターニングポイントだったのかな。

 「メモリーラボ」では「記憶」がテーマでしたし、「ボクハ・ココニ・イマス」ではコミニュケーション。人間の本当に大切なもの、本質に至るものをつきつめているようにも思えます。もしかするとカジシン本人が最近大病をしたこととか、関係があるのかもしれませんが、 いよいよもって「円熟」という言葉がふさわしくなってきた感があります。

 中で起こる事件、かなりどぎついですが、時代の反映なのかな。ちょっとびっくりです。

 エンディングは素晴らしい。ありきたりなのでしょうけれども、ここは昔を思わせる実にリリカルな幕切れでした。


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2010年07月31日

オバケのQ太郎

オバQを読む秋月 手塚と藤子Fをこよなく愛する秋月ですが、最近なぜか「オバケのQ太郎」にはまっていて、ずっと読んでいます。

 オバQと言えば、スタジオゼロの黎明期に藤子、赤塚、石森らが合作として作り上げた物語として名高いわけですけれども、どうやらその辺の関係でずっと絶版状態が続いていました。

 アニメ黎明期に関わった漫画家たちの群像と、海より深いその事情については各自ぐぐって頂くとして、その復刻版が今世紀に至って手に入るようになったのは、実に欣快なことだと思います。

 秋月によると、
「Qちゃんはあんまりやくにたたないけど、ドラえもんよりずっとおもしろい」
だそうです。そうだよ、あいつ、あんまり役に立たないんだよ。でも父もなんでも道具で解決するドラえもんよりいつもぼんやりしているQ太郎の方が好きだなぁ。ドラえもんはなんだか当事者感覚が希薄なんだよ。

オバケのQ太郎 この笑顔を見て、幸せになれない奴なんていないよね。

 なんでこんなにホンワカすんだろう。

 そういえば、吉本ばななが生前の藤子Fに頂いたサイン原画を元にしたQちゃんの刺青を肩に入れているなどという逸話が復刻版の解説に入っていて、やっぱり好きな奴はたまらないほど好きだったんだなぁと感心しました。ちょっと見なおしたぜ、吉本ばなな。

秋月の書いたQ太郎 昨日、父がフロッグマンの尾錠と取っ組みあっている間に、後方で秋月が黙々と描いていたQちゃんの模写です。なかなかだな、秋月。

 そう言えば、復刻版はオリジナルQ太郎なんですが、いくらめくってみても驚いたことに、O次郎がまったくでてこないんでつ!
P子ちゃんは出てくるんだけど。

 ぐぐってみたら、O次郎ったら「新オバケのQ太郎」からの登場だったんだってね。O次郎を楽しみにしていた秋月ですが、いくら読んでもO次郎は出てこないんだぜバケラッタ!


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2010年07月09日

平和への弾痕

秋本治傑作集(上) 「秋本治傑作集(上)」です。

 某所で、フィフティキャリバーの話をしましたが、ブローニングM2重機関銃を最初に「すげぇ」と思ったのは、小学生の頃読んだ、秋本治の「平和への弾痕」だったように思います。かなり取材もして描いたらしく、M2のディテールがそれはそれは詳しく描きこまれ、子供心につよい影響を残したのでした。

 ベトナムに派遣された、ごく普通のアメリカ人青年が戦いの中でいったい何を感じたか。ベトナムのゲリラ側からの描写と共に描かれますが、はたして両者は熾烈な戦いの中で一体何を思い、どういう決着を迎えるのか。

 ベトナム解放詩人の詩がフィーチャーされていたり、かなり反戦を全面に出した作りですが、まあ当時の創作者なら普通そうだったのかもな、とあまり気にしないことにしておきます。逆にこれだけ趣味趣味に兵器を描写する「反戦作品」という、半ば矛盾したような創作活動には考えさせられたりしました。宮さんの兵器趣味なども思い起こすと味わいもひとしおですね。

ブローニングM2
心の重機関銃・ブローニングM2
 これがわが心の重機関銃・ブローニングM2重機関銃の雄姿です。
「どうだ!小銃弾よりひとケタ大きな弾丸の味は…」
ですよ。

 ちなむと、零戦の20mm機関砲に立ち向かい、圧倒的にこれを打ち破った米陸海軍機搭載機銃「12.7mm」。あれがブローニングのM2ですね。米軍機ときたら、このM2を主翼に6丁とか8丁とか並べて撃ちまくってくるんです。弾頭威力も十分だし、弾道もよく低伸するいい航空機関砲だったようです。その様は松本零士の「低伸弾道12.7」に詳しく描かれてますね。

 「ジューニーテンナナミリ」。飛行機マニアの心の奥底に叩き込まれた「やっぱり米軍機にゃあ敵わねぇ」という想いの根源は、まさにこのブローニングM2キャリバー50にあったと言っても過言ではありません。

 私の中では同じく松本零士の「独立重機関銃隊」に登場する帝国陸軍の九二式重機とならんで、我がこころの重機関銃といってよいです。

撃ちまくるフィフティキャル
撃ちまくるフィフティキャル
 それにしてもこのハードな描写には目を見張ります。なんだよ、このトリガーハッピーな射手。本当にこれ、反戦まんがなの?(笑)

 この頃の秋本治がビフォーとすると…

 こちら葛飾区亀有公園前派出所 170
最近作・こちら葛飾区亀有公園前派出所 170
 とここまでくると、これがアフターという感じなのでしょうか。

 もちろん作家は時代で変わっていくものなので、現在の作家は現在のものとして評価すればいいのでしょうけれども、私としては初期のこういう路線でもたまに描いてもらいたいなぁ、と思うことしばしばです。

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2010年06月30日

りすうか

りすうか 学研の「りすうか」買いました。「子供の科学」で『GOGO!ミルボ』を描いているはやのんが「あたらしい雑誌がでるようよ」と教えてくれたので、試しに買ってみたのです。「りすうか」=「理数科」かな。親と子が一緒に読んで楽しめる理系雑誌だそうです。

 確かに「子供の科学」があれば要らないような気がしますが。

 「子科」に比べると、「親も一緒に読めるページ」が多いのが売りなんだって。でも中を見ていると親パートと子供パートが割とはっきりくっきりしてる感じ。

 あー、あと数学もテーマらしいけど、勉強させよう感がちょっとあからさま過ぎる気もするな。もうちょっと自然に興味をひけるように構成してもらうといいかも。

 試しにもう少し買ってみます。最初のうちは作る方も試行錯誤だろうしね。

 学研の「科学」が休刊した時に、大声で残念がっていた人たちは、香典代わりに買ってみたらいかがかw
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2010年04月20日

経済誌とマネー誌

経済誌とマネー誌 仕事柄、いくつかの経済誌に目を通しています。

 経済誌を出している出版社の多くは、「マネー誌」と言われるジャンルの雑誌も出しています。投資・利殖関係の雑誌ですね。

 「週刊ダイヤモンド」と「ダイヤモンド・ザイ」
 「週刊エコノミスト」と「エコノミストマネー」
 「日経ビジネス」と「日経マネー」

 同じ出版社の経済誌とマネー誌を併読すると、これがなかなかに趣深いもので。

 経済誌は総じてどれも悲観的です(『日経ビジネス』誌は若干楽天的)。経済誌はデフレスパイラルでリーマンショックで財政破綻で政治不安で世代ギャップで年金危機で、その他もろもろの理由で日本が経済的に滅亡するところを繰り返し繰り返し特集します。まあ評論てのはそういうバイアスがかかっていないとあまり読む気がしないジャンルの文章なのかもしれません。

 一方、投資の情報誌であるマネー誌は、とにかく証券市場にお金を引っ張ってこないといけないものですから、どれもバラ色の未来ばかりを語っています。

 どっちも極端だなぁ。

 マネー誌で広告塔となって

「安いから株を買え」

ってのを叫んでいる某ファンドのおっさんとかもいますが、それは逆張りというもので、普通は安くなっていくときは売るのが正しいんじゃないでしょうか。逆に上げていっているときは

「乗り遅れるな、買え」

と言っていますから、要するにどんな時も買うように主張しているようです。広告塔としては実に正しい姿勢だな。

 経済誌とマネー誌、どっちが正しいと思うかというのは避けますが、やっぱそういう読み比べも含めて、読んでて楽しいのはマネー誌のほうかな(笑)。
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2010年03月23日

鮨と少年

少年と鮨 ずっと昔、少年が鮨を食う話を読んで、鮨ってもんがものすごくうまいものだと刷り込まれた覚えがあります。

 いったいあれは何の話だっただろうと他人に話すと、「少年、鮨」というキーワードをきいた途端に誰もが

「それは志賀直哉の『小僧の神様』に違いない」

と答えたものでした。

 志賀直哉は読んだ覚えがなかったがなぁと思いましたが、あまりにも誰もがそういうので、十年ほど前に岩波文庫版の「小僧の神様」を買ってみたことがあります。

 読んでみましたが、うーん、なんとなく違う。鮪のあぶらみ(とは要するに大トロ?)はおいしそうだし、一回持ったのを置いちゃしょうがねぇなぁと職人に嫌味を言われる場面はトラウマになるほど痛烈なシーンではあるのですが、一番印象に残っている部分、少年が通ぶって、しょうゆのついた指を暖簾でふいて出てくるところが「小僧の神様」にはないのです。

「しょうゆ のれん 拭く」なんてキーワードで検索してみると、やはり同じ思いの人がたくさん見つかります。
776 名前:大人になった名無しさん [04/08/27 15:47]
電車を降りて、駅2つ分くらい歩き、浮いたお金で立ち食い寿司を食べるのを楽しみにしている少年が、ある日、駅でつり銭を間違えられ、そのお金をねこばばしたことを気に病む話。立ち食いすし屋(?)から出るときに、醤油で汚れた手をのれんで拭くのが通だとか、釣りを間違えたごく若い駅員には、きっと病弱な妹がいて・・・とか、そういう感じの話だったんですけど、どなたか詳細を知ってる方いませんか?

777 名前:大人になった名無しさん mailto:sage [04/08/27 20:08]
>>776
あ〜なんか読んだ覚えがあるけど、思い出せねー!

 とか

720 :無名草子:04/09/26 16:19:28
あ、あと、これもやっぱり題名を覚えていないんだけれど、立ち食い寿司を食べたあとの、醤油で汚れた指を暖簾できゅっと拭くのが粋、というシーンがあった話があったんです。
「小僧の神様」じゃないかと言われたんですが、ちがうのです。
同じ話の中に、汽車の中で食べるコッペパンが、寂しさを増幅させるんだけれど、私にはそれがとっても美味しそうで。
教科書に載っていたような気がするんですけれど、食べ物のところしか記憶に残ってない・・・。

ほらね。

小憎の神様 - ひとつでじゅうぶんですよ わかってくださいよ - 読丸電視行でも取り上げられています。関係のあるところがほぼ大部なので全文引用になってしまうのですが、
雑誌「dancyu」2009年2月号*2の「私的読食録」(角田光代)で、こんな風に言及されていました。

立ち食いの寿司屋から出る人が、指についた醤油を暖簾の隅でついと拭くから、そこだけ薄茶色く汚れているのだと、そんな記述があったように思ったのだが、そんなことは一言も書かれていなかった。暖簾の描写もなかった。

この記述、私にも記憶があるのです。国語の授業で先生が「暖簾を汚す」という行為の重大さを教えてくれた記憶もあります。そんなわけで、十数年(数十年?)ぶりに再読。

雑誌で紹介されていた岩波文庫版*3ではなく、新潮文庫版で読み直したのですが、確かに、暖簾で指を拭く記述はありませんでした。
そんな細部を書かずに見せてしまう、くっきりと記憶させてしまう。やっぱりすごい小説なのである。

他にも同じ記憶を持っている人がいる*4 *5ので、おそらく改訂で削除されたのだろうと推測しますが……真相はどうあれ、飢えた子供心に寿司の美味しさを植え付けたこの小説は、それだけでやっぱりすごい小説だと思いました。
 だそうなんです。角田光代だって気になってるそうなのです。

 それにしても削除なんてするのかなぁ、と近所中のブックオフを回って、日本文学全集を版違いで4種類、「小僧の神様」を確認して回りましたが、どこにものれんで指を拭くシーンはありませんでした。ここに至り、さすがに私も気が付きました。探しているのは「小僧の神様」ではないのだ、と。

 で、その後も私としてもずいぶんと呻吟したのですが、ある方が、

「もしかして、それは安岡章太郎の『幸福』という話ではあるまいか」

と言ってくれました。

 あらすじをぐぐってみると、

 5円もらってお使いに出された学生が、駅員が釣銭を間違えたおかげで5円余分に手に入れる。これで何を食おうかといろいろ妄想するのだが、考えた挙句駅員に正直に返してしまう。幸せな気分で帰宅すると、最初に貰ったのが5円ではなく10円だった、というオチ。

 そう!これです。

 駅員とキップ。確かに記憶にある!昔は国語の教科書に載っていたそうですが、最近では載らなくなってしまったのだそうで。

 そうときまれば読んでみるしか。アマゾンで注文したら中一日できましたよ。安岡章太郎「慈雨」の冒頭にある「幸福」。

 一読して思い出しました。私に鮨のうまさを教えてくれたのは、まさにこの一文でした。

 もう、鮨んところだけ引用しちゃいます。
それよりも僕は最近、鮨の立ち食いの味をおぼえていた。九段の中学校から歩いて二十分ばかりの距離の、狭い横町を入ったところに、小さな屋台を出した鮨屋がある。僕は学校のかえりにそこへ寄り、中トロの鮨を食うのがなんとなく好きになった。竹の茶こしでいれたお茶を大きな湯のみで飲んでいると、もう中学生ではなくなった気分になる。帰りがけにショウ油でよごれた指を、のれんの端でふいてでてくる。そしてスマした顔でカバンを抱え、本当は飯田橋から乗る電車に市ヶ谷から乗って家へ帰る。
 これですよ!これ。やっぱりうまそうだなぁ。

 それにしても振り返ってみれば、いかに多くの人がこのシーンを「小僧の神様」と取り違えているかというのは、驚くほどです。少年、鮨と来ると、もう志賀直哉しか出てこない感じ。わたしもうっかりしてたなぁ。

 ということで何十年来の疑問が氷解した今は、本当に「幸福」な気分でいっぱいです。

 もしアラフォーな人が鮨屋の暖簾を汚して歩いているとしたら、その責任の一端は安岡章太郎にあるね。

 
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2010年03月17日

本屋の本の並べ方

本屋の本の並べ方 長野駅前にあるでかい本屋がこういうふうになっていますが、最近行ってないけどグランデとか八重洲とか、あのへんの東京の大手書店なんかはどうなっているんでしょうかね。

 要するに、今までは出版社別に並んでいた文庫本を、著者名順に並べるんだそうです。えー、なにそれ。俺ゾーンが全然わかんなくなっちゃったんですけど。そもそも熟練者は好きな著者がどの文庫から何出しているかなんて、把握済みだし。

 読書初心者への訴求という意図なのだろうと推測しますが、本当にこれが読者のためになる施策なのでしょうか。

 確かに著者名で探すには便利なんですが、そんな本読みばかりじゃない。実際、これから本を読もうという人は、既に好みの著者があるわけじゃなく、ジャンルで追う人も多いんじゃないんでしょうか。
川端裕人氏の棚 複数出版社にまたがってる人ってーと、なんでも書く(笑)川端裕人氏とか?こんな感じになってます。

 とにかく、例えば早川JAなんかも完全に著者別に分散されてますから、一つ読んで、国産SFというジャンルが面白そうだからその隣の人の本も手にとって…という流れが失われるのではないかと心配しています。「ジャンル」で食っているレーベルや出版社は書店に抗議した方がいいんじゃないんでしょうか。

 振り返ってみると、アマゾンなんかはその辺、「この本を買った人はこんな本も買っています」とか、リコメンドとか、読者の興味をシャッフルすることに注力していて、実に意識的に構築されたビジネスなのだな、と感心します。

早川青背 とりあえず早川の青背はまだ無事のようです。

 海外作品は今のところ除外されているようなので、こちらは落ち着いて俺ゾーンのチェックが出来ますが。

 どうなのかなぁ。

 売れない本屋ほど棚いじるって気もするけど。
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2010年01月26日

テルマエ・ロマエ

テルマエ・ロマエ 「テルマエ・ロマエ I (BEAM COMIX)」がようやく到着。話題になった時に速攻で注文したのですが、一カ月以上もかかりました。売れているんだな。すげぇ。

 古代ローマ時代の公衆浴場建築士・ルシウスが現代にタイムスリップして、現代の日本各地のお風呂にインスパイヤされるという、とてつもなくスイートスポットがピンホールな趣向の漫画です。

 こんなの誰が得するんだよ!と思いましたが、売れているんだから仕方がない。しかもスゲー面白いんですよ。こうやってみると日本のお風呂って素晴らしいんだなぁ。

 お風呂のネタなんて、いいところ一巻でタネ切れじゃないかと思ったのですが、著者の方によるといくらでもアイデアが沸くのだそうです。続巻も予定されているようですし、こりゃすごい作者だ。

 それにしても「エマ」と「乙嫁語り」の森薫とか、この「テルマエ・ロマエ」のヤマザキマリとか、好きなものの漫画だけ描いて生きているような作者を抱えて商売しているコミックビームって、ほんとうにすげぇよ。頭が下がります。こういう雑誌が長生きできる世の中でありますように。

 単身赴任で働き過ぎていろいろとやばくなってしまったルシウスのその後に期待ですw



続報。
「テルマエ・ロマエ」マンガ大賞2010受賞だそうです。
マンガ大賞:「テルマエ・ロマエ」に

 書店員らが最も優れた漫画を選ぶ「マンガ大賞2010」(同賞実行委員会主催)が17日、ヤマザキマリさんの「テルマエ・ロマエ」に決まった。古代ローマの設計技師が現代日本の銭湯にタイムスリップする物語で、「月刊コミックビーム」(エンターブレイン)に連載中。昨年11月に刊行された第1巻は30万部を記録している。

売れてるんだねぇ。

 描きたいことを描いて、それが人に認められるなんて、本当に幸せなことだと思います。

 森薫もヤマザキマリも、もっと売れてください。
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2009年11月09日

アルファ・オメガ

ΑΩ 「ΑΩ(アルファ・オメガ)」読了。

 こわがりでホラー耐性が低いので、どうかなと思いながら恐る恐る読む。

 なんだ、ぜんぜんなんともないや。大丈夫大丈夫。「イリーガル・エイリアン」の方がげちょげちょだったかな。

 ネタばれはあれなんですが、怪獣もの、特撮ものへのリスペクトにあふれた作品です。主人公がなんたって「諸星隼人」ですよ。モロボシで隼人。セブンでライダー。

 あとデビルマンとウルトラマンとマジンガーZと、盛りだくさんです。

 小林泰三ってのは、「天体の回転について」とか「海を見る人」とか、SF方面から入ったので、あまり抵抗がありません。ホラーシーンも割と乾いた感じだったと思います。

 いくつか書いておきたいことはありますが、「人間もどき」として登場する人間のコピーには泣かされました。「多分、三人目」どころではなく、同じコピーが多ければ何百万も存在し、それを一人一人の「人間もどき」は他の個体とは独立して存在しているという設定。それぞれの「人間もどき」に本人にとってはただ一度の生命、それも限られた期間の生命が与えられています。自分が劣化コピーであるという認識に至る「人間もどき」もいるそうですから、悲しいですね。

 でもなんでこんなに分厚いんだろうかな。もうちょっと削れないのか。

 あとがきで「ウルトラマン」にまったく言及していないのが不自然で面白かったです(笑)。


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2009年10月30日

復活の日 -人類滅亡の危機との闘い-

復活の日 先日、「復活の日」リメイク版 | 日々雑感IIで書いていたよい子向けの「復活の日」読んでみました。「復活の日―人類滅亡の危機との闘い 」ってそのダセぇサブタイトルはやめろ。

 ネタばれとかなんとかあるけど、もう45年も前にばれてるんだからいいよねw。どんどんいくぞ。

 子供向けということで、ミクソウィルス群の説明がスカっと抜けているのは少々ざんねん。MM-88がどのようにして自分の正体を隠しているのかを書かないと、学者の人々がただ手を拱いている無能に見える。CDCの活躍とか、ちょっと欲しかった。ところで難しい理屈はわからないが、ウィルスは空中で増殖なんかしないんじゃないだろうか。え?俺の考え違い?

 ストーリーとしては、いきなり色々なことが省かれていて、MM-88の正体も割と最初の方で判明している。たかが風邪と思っているとこでみるみる状況が悪化するところが怖いんだが。

 あー、タミフルとリレンザについての言及がないのはちょっとなぁ。

「どんなことにも終わりはある。終わり方が問題だ」
とか
「いかにして、そしてなにゆえに」
とかそういう印象的なフレーズはそのままで、その辺はちょっとうれしい。それから吉住の先生が田所博士というのはちょっとヤラれた感。なるほど、そうきたか。

復活の日 政治的にいえば、ARSに現実味がありません。でもまあ、あそこを変えてしまうとストーリーが完全に別物になってしまうので、ちょっと難しいかもしれませんね。

 あ、忘れてた。アホーイ、いるよ、やっぱり。馬のアトキンスも死にかかっているよ。ああ。

 基本的に色々はあるけれども、まるっきりオリジナルのまま2009年版ジュブナイルにしました、という感じで私は好感を持ちました。一時間少々で読めますので、大人の人も目を通してみたらどうでしょう。

 私は幼少の折り「火の鳥」とか「復活の日」とか「五島勉(笑)」とかを読んで、生と死について考えるようになりました。今時の子供たちにもこういうインパクトは必要じゃないでしょうか。こういうリライトは大歓迎なので、ぜひ、よい子の皆さんの心を黒く染めてやってもらいたいと思います。

 そしていつかオリジナルの物語も読んでもらえるとうれしいです。
 

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2009年10月21日

「復活の日」リメイク版

復活の日 先日、本屋をぶらぶらしていたら、ジュブナイル版の「復活の日―人類滅亡の危機との闘い」なんてのが出ていました。インフルエンザパンデミックの話題に乗って、という感じだな。

 まだ買っていないのでぱらぱらめくりましたら、インターネットで応答がなくなったり、とかそういう混乱が描かれていて、もはや完全新作のようです。

 アマゾンで確認しましたら、
内容(「BOOK」データベースより)
二〇〇九年、ヨーロッパで流行しだした恐ろしい“悪魔風邪”は、脅威の感染力で瞬く間に世界中に広がり、やがて、人類は死滅してしまった。極寒の地、南極にいた約一万人を残して―。人類滅亡の恐怖と、立ち向かう勇気を描いた、壮大な物語。
だそうで。

 ずいぶんはしょられているだろうけれど、あの少年のシーンはどうなっているのか、大変気になったのでまた買ってみようと思います。

 あのシーンはいまでも痛いぞ、アホーイ。




(追記)
読んでみた結果はこっち。
復活の日 -人類滅亡の危機との闘い- | 日々雑感II

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2009年07月09日

夏への扉 新訳版

 はい。わたしはその辺を歩いている猫にも「ピートこっちこい」などと呼んでしまうような男です。猫がドアをがりがりやっていると扉を探しているんだなぁと思ってしまいます。

 それはさておき、ハヤカワ・オンライン|早川書房のミステリ・SF・ノンフィクション:に、
夏への扉 新訳版 1,575円
ロバート・A・ハインライン(著)
刊行日: 2009/08/10
ぼくが飼っている猫のピートは、冬になるときまって夏の世界につながるドアを探しはじめる──。ジャンルを超えてあまたの人々の心をとらえてきた名作に、新たな命が吹きこまれる30年ぶりの新訳版
という記述があります。

 なんと。
 新訳版。

 フレッシュ!フレッシュ!フレーッシュ!

 やめろ、俺。

 ハインラインが広く知られることは大変うれしいのですが、例えば「文化女中器」ですとか「護民官ペトロニウス」ですとか、そういった福島正実氏の実感あふれる訳語がどうなるのか、半分心配、半分興味深々といったところです。

 でもやっぱり一度は読むかな。


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2009年06月16日

マイナス・ゼロ

マイナスゼロ 会議資料を作っていたら、電卓にいきなり「マイナス・ゼロ」の表示。

 あれー、どしたのかなー。桁数切ってあって表示が省略されているわけじゃないよな。バグなのかしらん。

 ファームアップも出来そうもないので、記念写真だけ撮ってリセットしましたが、なんか不思議(笑)。

 この表示を見た瞬間、頭の中に広瀬正ワールドが展開したのは私だけでしょうか。そういえば集英社の文庫版、6冊まとめて復刊したと聞きました。素晴らしい、てかなんでこのような名作が今まで絶版だったのか。

 この「マイナス・ゼロ」も復刊したそうなので、未読の人は何をおいても読むべし。ディテールを積み上げて一つの時代を描き出すその筆力は、才能とかそういう表現を超えています。

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2009年05月09日

図書館警察

図書館警察 「図書館警察」読了。

 某所でこの本のあらすじを知った時は震えましたよ。図書館から本を借りて、期限までに返却しないと「図書館警察」が来るんです。これはこわい。こわいよ。メガフォース一個中隊に攻め込まれるよりこわい。

 図書館だけの話じゃないと思うんだけれど、心の中になにか「滞納」とかそういうものに対する強いコンプレックスがあるのです。それはルーズで馬鹿だった子供時代に対する後悔の念もあいまって非常に強いものであり、また日常の生活のなかでは記憶の底に強く封印されたものでもあるのです。

 図書滞納だけだったらまだしも、たとえば滞納した揚句に紛失しちゃったり、教科書をどこかにやっちゃって、「下」をもらうまでの半年間ずっと途方に暮れていたり、机の中でバナナを腐らせて、手前に物を詰め込んだまま引き出しが使用不可になったり、同人誌のリレー小説を受取ったまま、なくしてしまって二度と例会に顔を出せなくなったり、子供時代にはいろんなトラウマが発生しがちなものなのです。ええ、ええ、今でも夢に見ることがありますよ。

 そんなコンプレックスをあからさまに攻撃してくるスティーブン・キングってのはやっぱりホラーの帝王だと思うのです。目の付けどころ鋭すぎ。

 読むに従って普通のキングふうホラー小説になるのですが、やっぱりこれは発想の勝利ですね。

 文庫も出ているようですが、今回はわざわざ図書館から借りてきて読む、という無茶をしてみました。読後、司書の人が怖くなっちゃって次回からどうやって図書館に行けばいいんだか。えーっと返却は来週の土曜日までだったな。

 表紙の絵、ブキミ星人だなぁと思っていたら、あの「少年探偵団」シリーズの表紙を書いていた藤田新策氏でした。怖いわけだ。

 
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2009年04月21日

高橋春男の『いわゆるひとつのチョーさん主義』が作画崩壊している件について

 どうでもいいことだけれども、土管の中に向かって叫ばないとやっていけないこともある(なにそれw)。

 週刊文春で連載されている高橋春男の『チョーさん主義』。昔っからネタ自体、全然面白くなかった漫画ですが、このところ作画が滅茶苦茶です。ゴムかけも適当ですし、ペン先もばさばさ。トーンも貼ってあったりなかったり。明らかにコピーして切り貼りしているキャラもいたりする。もう見てらんない。いったい作者に何が起こっているのか。

 編集者もなにを考えているんだろうなぁ。これじゃ載せられません!と突っ返すべきじゃないのか。

 画像も貼っちゃおうかと思ったけど、いろいろ問題になりそうなんで、どんなに荒れているかを見たい人は、各自週刊文春を立ち読みしてみてつかぁさい。
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2009年04月16日

サイエンス・インポッシブル

サイエンス・インポッシブル 「サイエンス・インポッシブル―SF世界は実現可能か」読了。原題は「PHYSICS OF THE IMPOSSIBLE」だそうですが、どうも「ミッション・インポッシブル」にちなんで「サイエンス・インポッシブル」になったようです。いいのかそれで。

 デバンカー系の本かと思ったのですが、これは科学史の物語でした。科学の歴史をひきながら、一見不可能と思える事象の科学的可能性を検証します。

 軌道エレベータからテレポーテーション、タイムトラベルまでいろいろと難問が取りそろえられているわけですが、「不可能な論証ができていない案件はいつかは可能となる(可能性がある)」というのが基本的スタンス。

 これは「可能であることを証明し、不可能であることを証明する。すべてを明確にすることによって世界を明らかなものにする」という「科学」というかひいては「学」そのものに対する真摯なアプローチだと思います。

 振り返ってみれば、いままでどれだけ多くの科学者が人生を賭けて問題の解決、科学の進歩に尽力してきたでしょうか。
 迷信や俗説を信じたがる非科学な方々には、これらの科学者の努力の結実である工業製品を利用する権利はない、と言いたくもなります。要するに相対論を信じない奴はGPSは使うんじゃねぇってことですね、デバンカー風対決的姿勢で言うと。

 巻末で触れられたソクラテスの言葉、「何とすばらしい知識だろうと、ぼくには思えたのだ。ひとつひとつのものの原因を知り、それぞれのものが何によって生じ、何によって滅び、何によって存在するのかを究めるということ!」は学ぶこと、研究することへの喜びの賛歌です。

 SF、という観点からいいますと、「可能と不可能、既知と未知の境目をほんのわずかにずらすことによってセンスオブワンダーが発生し、SFが成立する」ということを再度認識いたしました。脱帽。
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2009年03月13日

宮さんのサイン

トトロのサイン 仕事の帰りに、近所のラーメン屋さんで餃子を買っていましたら、柱に宮さんこと宮崎駿監督の直筆サインが飾ってあるのに気がつきました。

 へー、こんなラーメン屋にも来たんだ。

 なんと、トトロのサインです。やっぱり宮さんと言えばトトロなのかなー。いまさらコナンとかハイジ描くわけ行かないだろうし、96式艦上攻撃機とか4号戦車描くのもたいへんなんでしょうね。

 ルパンはやはり他人のキャラなんだろうし、ナウシカなんかは思い入れありすぎて、ぱっと描いて人にあげるのは大変そう。宮さんの完全オリジナルでさっと描けて、みんなが喜ぶ、と言えばやっぱりトトロなんだろうなぁ。

 宮さんの中で、「トトロ」ってのがどういう位置づけなのか、いろんな本を読んでもやっぱりよく分からない。まあ本心をそのまま語る人じゃないし、いくら対談集とかを読んでも、結局のところ他人の心などわかりはしないということか。

 ちなみに私だったら、ハンス。ドランシ大尉よりもハンス。

 ハンスが「ママー!」って困り顔しながら仕事をしているところをささっと描いてもらいたいです。

 って、会ったことねぇよ、本人に(笑)。
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2009年02月17日

女神のための円舞曲

女神(ミューズ)のための円舞曲(ワルツ)」読了。

 そもそもSFを書きたかったのか、ミステリーを書きたかったのか、ファンタジーを書きたかったのか。それがよくわからない。

 想像するに錯綜した状況が最後の瞬間、パズルのピースがはまるように消化されていく物語を描きたかったのではないかと思う。

 それはそれで目的ははっきりしていたのだろうけれど、冒頭の
「平成19年の予約を、改元前の昭和時代に「平成」の年号で予約を入れた人がいる」
などという引きは不要なのではないか。しかも、この件についてSF的解決がまったく行われずに終わってしまうのは実に残念だ。この物語がどういうジャンルのものなのか、はっきりしないまま読むのは、こっちの身構えかたも決められなくて、なんだかすんごく気持ち悪いんだよ。

 でも、この設定だけ取り出して工夫を凝らせば、もっと面白いものも書けただろうにと思う。カジシンなら、とかね。

 この構成は、たとえて言うならブギーポップの冒頭のあの交差点のシーンのようなものを書きたかったのじゃないか。とも思う。多く人のそれぞれの事情が交差する一点。その一点を多数のシチュエーションを追って描く手法だ。

 その割にはひとりひとりの書き込みと全体の構成のバランスを取り切れておらず、どのエピソードも唐突というか、ご都合主義と言われても仕方ないような展開で、読んでいてちょっと恥ずかしい。倒置法的な描写も少々くどすぎる。「不信車両」とか、患者の「様態」とか(「容体」を「ようたい」と思っているようなのである)、誤字も多くて読んでいていらいらする。編集者、なにやってんの。弾幕薄いよ。

 不信感が最高潮に達するのは、最後のシーン、光雄が肉親と出会うシーンだ。あれだけ養子の光雄に献身的に付き添っていたはずの養母がまるっきり姿を現さないのはどうにも納得がいかない。

 欠点の多くは編集者の力不足なのだろうけれど、結果としての出来上がりは実に残念でした。そのうちいつか面白いものを書くのじゃないかと長いこと期待しながら付き合っている大石英司という作家ですが、このままブレイクしないで終わるのか、とも思ってしまいます。

 単に泣かすだけなら「第二次太平洋戦争」とか「第二次湾岸戦争」とか、あの頃の仮想戦記の方が、ずっとましだったのじゃないでしょうか。

 えらい酷評になってしまいましたw

 

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黄色い零戦

黄色い零戦 「黄色い零戦―イエロー・ファイター」読了。

 宮崎駿監督、かの宮さんが来月号のモデルグラフィックスから堀越二郎の漫画を連載する、と聞ゐちゃあ黙ってらんねゑ!!とりあえず予習するしかないじゃありませんか。

 しかも9試単戦一号がテーマなんだって。うう、マニアック。ミヒャエル・ビットマンよりもオットー・カリウス、ティーガーIよりも4号J型をテーマに選ぶ人だからなぁ。

 宮さんは、最近の宮崎アニメとかを語っているときよりも、モデグラでこうやって「ウシシシシ」と笑っている時の方がずっと宮さんらしい。やっぱあれだ、クーラーのきいた部屋で照葉樹林文化を語る、とか、戦車マニアのアカ崩れとか、そういう複雑なバックグラウンドを持った人である、ということを努々忘れてはなりませぬ。「トトロ」と「ポニョ」で油断してちゃだめだー。

 「黄色い零戦」の作中では9試単戦はするすると96艦戦になってしまうので、9試一号二号の問題は宮さんの今後の連載を待ちたいと思います。ああ、でもやっぱりネタ半分なんだろうなぁ(笑)。

 うお、宮さんのネタばかり書いて、小澤さとるの思い出を書き損ねてしまったぁ!揚げたコロッケ、魚雷型ァ〜。

  
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2009年02月02日

宇宙旅行はエレベーターで

宇宙旅行はエレベーターで」読了。

 作内では「宇宙エレベーター」と表記されていますが、ここでは
やはり昔ながらの「軌道エレベーター」と呼びたいと思います。

 軌道エレベータとは、宇宙までケーブルを張って、エレベーターで宇宙まで行こうという計画です。空想の産物というか、もう何百年もかかるものだと思っていましたが、近年、カーボンナノチューブの発明により一気に現実味を帯びているのだそうです。

 昔は、地上から積み上げていくのか、宇宙のなにかからつりさげるのか、と思っていましたが、要するに地球にボールをつけて振り回すように、若干のアンカーとケーブル自体の慣性でケーブルはぴったりと張りつめ、天からケーブルが落ちてこないといいますから、実に不思議なもんですね。

 とはいっても「トップをねらえ」に出てきた箱根のロープウェイみたいな「軌道ロープウェイ」ってのは、ウソですからー。

 軌道エレベータというと、初めて知ったのは何だったか。うーんと、定番のA.C.クラーク「楽園の泉」じゃなくって、意外にも「超時空世紀オーガス」だったような気がします。全然意外じゃないぞ。

 本書で驚いたのは、設置可能な場所が赤道上の静止軌道だけではなくて南北35度まで可能、とかそういうことじゃなくて(と書くということはつまり驚いたんだなw)、

「一兆円あれば軌道エレベーターが一基作れる」

というところです。

 えー、そんなに安いのーーー?円高の今、特にチャンスなのかも!

 定額給付金の二兆円があれば、二基作れるじゃないですか。この二基の軌道エレベーターで日本が宇宙に覇を唱えることが出来ると思えば、これは安いでしょ。作るしかないでしょ。

 経済的にいえばですね、なんで実現しないのかと思っていた太陽光発電衛星。「未来少年コナン」に出てきた太陽エネルギーってやつですね。あれが実現できます。今はレーザーのビーミングやマイクロウェーブでの送電も出来そうですから、なんでさっさとやらないのかと思っていましたが、どうもそれだけの太陽光パネルをロケットで宇宙に上げていてはコストが引き合わないのだそうです。

 軌道エレベータが実現すれば、この太陽光発電衛星が低コストで量産可能可能になる、と思えば、これだけでも建造する経済的な理由になると思いますよ。ちゃんと建造できれば絶対に儲かるってば。オイルダラーも真っ青だな。

 現在の技術的な問題としては、カーボンナノチューブによるケーブルの商用利用というか、大量生産技術だそうです。強度ももう少しというところだそうですが、この辺はお金をかければそう遠からず実現しそうですし、どこかが建造に乗り出さないかなあ。

 作中では、ビル・ゲイツやウォーレン・バフェットとかその辺の金持ちが思いつけば、作れそうに書いてありますから、「夢」や「理想」といった概念的なものではなく、現実の経済的な必然性から建造されるかもしれませんね。

 人類は、「宇宙」に進出する? | 日々雑感IIでは、悲壮な決意がないと宇宙に行けないような雰囲気ですが、本書を読むと、おう、いつでも誰でもいけるじゃないの!と明るい気分になります。

 しびれる一冊でした。

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バスジャック

バスジャック (集英社文庫)」読了。

 いや、時々読んでいるんですよ三崎亜紀。すばる新人賞には興味がありますし(おいおいおいw)。

 短編7つ入っています。どれもいいんですが、一番食いついちゃったのが、「動物園」という一編です。

 「表出」というまあ言ってみれば幻覚を見せる能力を使って動物園で珍しい動物の姿をこっそりフェイクする仕事をしている女性の話。

 あれ、思ったんだけど、作家が読者の前で物語を紡いで見せる姿のメタファーじゃないんでしょうか。

「表出」「融合」「拡散」「固定」といった手法、あれは、三崎亜紀が小説書くときに使っているテクニックなのじゃないか。

 不自然な状況を「作った言葉」で説明し、概念を固定して読者を引き込む手口は、三崎亜紀的世界の常套手段ではないのでしょうか。いや、そこが魅力なんですけどね。上手にだましてくれるし。

 「となりまち戦争」も「失われた町」も読みましたが、おおがかりなネタはやはり「同定」に無理が来がちなので、こういう短編や中編の方が三崎亜紀的世界をたのしみやすいのじゃないか、と思いました。


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詩羽のいる街

詩羽のいる街」読了。

 ある町に、お金を使わずに生きている女性がいる。

 一人の「必要」をある他の一人の「剰余」で埋め、若干の「お礼」を得ることで「金」をもたず、使わずに生きているわけです。

 イメージは「エマノン」とか、入江紀子の「のら」だな。この二作は作者が知らないわけは絶対にないと思うんだが、こういう身構えた読者にどう対応するのかも見どころ。

 でもアクティブだね、詩羽。お金を持たず使わずで町の中を生き抜いているし、なにしろその生活の特異性について自覚的なのがいい。「のら」は自分の生活に無自覚なんだよ(笑)。

 テーマはうーんと、コミニュケーションなのかな。

 Webで仕事している立場から言わせてもらうと、「何かを売りたい人」と「何かを買いたい人」の需要と供給の仲を取り持つのが商売、というか価値を生み出す秘密なんですね。そのカップリングがうまくいくだけで放っておいても商売はどんどん広がっていくものなんですよ。マーケティングどうこう言ったって、基本はそれだけ。

 詩羽はよくわかっているよね。詩羽的生活が現実的に可能なのかどうかはよくわからないけれども。

 あ、ネット社会に対する提言も盛り込まれていますので、世の中に対して斜に構えたネットワーカーな方にもぜひ読んでみてもらいたいと思います。

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2009年01月19日

風の邦、星の渚―レーズスフェント興亡記

風の邦・星の渚 レーズスフェント興亡記 「風の邦、星の渚―レーズスフェント興亡記」読了。

 14世紀ドイツ。とある騎士がレーズスフェントという片田舎の辺鄙な村を、帝国自由都市にまで育てる話。

 小川一水氏は、私にとって今のところ、出れば内容問わずに読む作家になっている。が、今回いきなり中世ドイツにまでぶっ飛んだのには驚いた。本当になんでも書くな。

 話は面白くないわけではないんだけど、どうにもSF色が薄くて乗りにくい。なんで突然、中世なんだろうなぁ。頭をよぎるのは「ヴィンランド・サガ」か、「シムシティ」か。いや、小説としてはずいぶんおもしろいんですけどね。タイトルもちょっと謎っぽい。続編があるのかなぁ。一番かっこよかったのは、冒頭のプロローグに出てくるユリウス・カエサルでした(笑)。

 表紙は出来ればなんとかしてもらいたい。村田某とかいう人は、ラノベの表紙とかでよく見かけるような気がするんだけど、後ろの方のああいうユーフォリアな表情って、受付けにくいのです。鶴田謙二ってわけにもいかないでしょうけれど。

 いろいろな人が言っているけれども、SFというよりは、仮想歴史ものといえばいいんでしょうか。どこかできっとメッセンジャー・オーヴィルが出てくるに違いない、と狙って読んだあなたは立派な小川一水マニアw

 ところで小川センセー。宿坊とは、もともと宿屋ではなく、お寺に人を泊めている場所です。あれは宿屋ではなく、お寺なのです。ちゃんと坊さんもいます。
 教会もなく、聖職者もいない中世ドイツの片田舎に「宿坊」があるなんてのは、ちょっとおかしいですよ、カテジナさん。「旅籠」くらいでよかったんじゃないんでしょうか。「指輪物語」っぽいし(笑)。

 



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2008年12月01日

神狩り2

神狩り2 「神狩り 2 リッパー」読了。「神獣聖戦 Perfect Edition」にとっかかる前に、積みを崩すのだ。

 なんたって「神狩り」。すごいよね。世の中にいろいろな不敬な言葉はあろうとも、なにしろ「神」を「狩っちゃう」のだ。タイトルだけで、既に勝利は確定しているよね。ニ、ニ、ニーチェか山田正紀か。

 「神」を「狩る」のは難しい。人間と対等な存在まで「神」を落としてしまえば、それはもうただのエンターテイメント小説というか火葬戦記に過ぎないよね。あくまでも人間からは理解不可能な高次元の存在である「神」を「狩る」ところに「神狩り」の持つ凄味があるのだな。

 構成もちょっとよくわからない。冒頭の天使が攻めてくるところ、F-2が天使に撃破されるんだけど、あれこそ二流の火葬戦記じゃないのか。うーん、どういう意図なんだろう。その辺がちょっと。

 あー、あと、神の思考と人間の思考をVistaとMS-DOSに譬えるのは、比喩としてどうかと思うよ。言いたいこと、表現したいことはすごくわかる。でもこのメタファはおそらくあっという間に陳腐化してしまうのではないか、と人ごとながらちょっと心配。数年で「ほら風化した」と笑われやしないか。

 もうちょっと最後の方はページがほしかったような気がします。真中過ぎから、残りページが薄くなるにつれ、まとまるのかどうかハラハラしました(笑)。前半から中盤にかけて削ってくれればよかったかもね。もっと70年代っぽくしてもよかったのになぁ。

 2もの、二世ものがたくさん出回っています。そういったもののなかで、「続編」として「神狩り」とセットで、ちゃんと読める長編でした。

 それにしてもここんとこ「エリ・エリ」とか、「神は沈黙せず」とか神様ものづいている私です。エリ・エリ・レマ・サバクタニ。神様、どこ行っちゃったんだろうね。


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2008年11月17日

カブのイサキ

カブのイサキ 芦奈野ひとし氏の「カブのイサキ (1)」読了。読了ったって、例によって30分もかからないんだけど、大事に大事にゆっくり読む。やはり激しい戦闘とか極限状態からの奇跡の生還とかそういう展開ってのはどこにもなくって、ひたすらスーパーカブがふわふわと飛んでいるだけのお話。

 どうみても「ヨコハマ買い出し紀行」のナイの話からのスピンアウトだよね。ナイはT6テキサン乗りだったけど、イサキはパイパー・スーパーカブ乗り。絶対あれだよ、スーパーカブってのに魅かれてるんだよ、きっと。

 東京へ向かって飛んで、西へ行くと七里ガ浜ということはやっぱり三浦半島なんだね。よかったなぁ。

 芦奈野ひとし氏はいつも梶尾真治だよなと思う。水神様なんか、もろにカジシンでしょ。外界と違う時間の流れのなかにいる少女を外から見たらどうなるだろう。そういえばA7Mシリーズの女性たちも、カジシンだ。なんだろ。エマノン?永遠に記憶を伝えていく存在?

 んで、「カブのイサキ」だ。

 山を越えるところはあれ「ファントム=F=ハーロック」だし、穴あけて後ろに便乗するのは「ファントム=F=ハーロックII世」。これだね。

 羽のフックはきっとXF-85「ゴブリン」とかTOMTOMプロジェクトだと思うんだけど、フィクションでの引用はあったかな。LAST EXILEかなんかにあった?斜面からの離陸はあれ「エア・アメリカ」でやってたやつだよね、きっと。

 ぱっと見、それだけのいろいろとネタ元が推察できるものがあるんだけど、それでいて不思議とパクリには見えない。さまざまな材料を取り入れて、自分の血肉にしているのだなぁとその努力には頭が下がる思いですよ(好意的なのである)。

 二巻以降もきっとこの調子でだらだらと続くんだろうけど(笑)、それはそれで歓迎したい。急にF-86とか出てきたらどうしよう。いや、それはそれでいいかもねー。ガルフストリームとかはなんとなく却下。

   
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2008年11月07日

神獣聖戦

なななにぃ!神獣聖戦!????

ふと気が付いたら、神獣聖戦 上 Perfect Edition (上)なんてものが出ているじゃないですか。 Perfect Editionってなに?完結したの?

 確かね、「神獣聖戦」を最初に読んだのは浪人だったか大学に入ったころだったかのような気がします。

 もはや、「転がせ樽」としか覚えていないわけですが、こんなものがいまさら完結するとはなぁ。そういや「ヴァイブ」もまとめたらしいし、世の中は山田正紀ブームなわけ?

 とりあえずこれはもう買うしか。

 
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2008年10月12日

パーキー・パットの日々

パーキー・パットの日々 P.K.ディックの「パーキー・パットの日々」読了。

 ディックの読み残し。まだずいぶん未読があるなぁ。サンリオ関係はほとんど手を付けていないし。でも、未読のディックがある、っていうのはそれだけでも幸せかも知れない。本書は、短編集というよりは中編が多いんだけどディックはこのくらいの分量が読みやすいかもね。

 冷戦当時の作ということで、当時の風潮を反映した作品が多いです。戦闘の最前線の話もあるし、銃後の生活の話もある。でも、どの話も人間の実在について思索するという点では共通な訳で。ああやっぱりP.K.D.だね。

 いい年してフィギュアで喜んでいる人たちは、対戦型の楽しみ方を開発してくださいませ(笑)。

 そうそう。ローレンス・ホールとステラ隊長が擬態生物と戦う話があって、そりゃもう驚きました。無知だったんだなぁ>おれ。

 
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2008年10月10日

遠すぎた星

 「遠すぎた星 老人と宇宙2」読了。

 じじいに機械のからだをタダで若者の体をタダで与えて、そのかわりに兵隊にするという「老人と星」の続編。邦題は当然「遠すぎた橋」から頂いていますね。原題は「The Ghost Brigades」ですから、内容に合っていないじゃないか!と作者を責めちゃいけません。一作はよかったが、柳の下にどじょうは何匹までいるのでせうか(ちなみに前作の「老人と星」だって原題は「OLD MAN'S WAR」ってそのまんまなんだから、非難するとしたらこれは編集者の責任だろう)。

 今回はじじいの出番はなくって代りに前作にも出てきたゴースト部隊こと特殊部隊が主役。かのサンリオSF「ベストSF1」に入っていたキース・ローマーの「最後の指令」に入れ込んだ私には「ゴーストブリゲイド」の方が燃えるんですが...ブリゲイド、いい響き(そうか?)。

 ただし「戦争SF」というふれこみで思うほど戦い続けるわけではなくて、どちらかというとスペキュレイティブな作品です。そういうのが読みたい人はジョー・ホールドマンの「終わりなき戦い」とか古典のハインライン「宇宙の戦士」を読むべきですサー、イエス・サー。あ、小川一水の「時砂の王」もいいかもしんないな。

 死者のクローンで作られた特殊部隊。人の魂と自意識がテーマで神林ファンはちょっとうれしかったり。「自分で選択すること」が魂の実証であったりする辺がいかにも西洋風。

 ディラックの台詞がいいんですよ。矢野徹調じゃないところがいい。
いまならいえます。ぼくは自分が何者か知っています。
ぼくはコロニー連合特殊部隊のジェレド・ディラック。
そのつとめは人類を救うこと。
うーん、泣ける。

 あの最後の通信は「僕は人間だよな」という「雪風」にでてくるトマホーク・ジョンの自問へのひとつの回答です。我々は「人間とは何か」という問いにこれだけ堂々と答えられるんでしょうか。例の901ATTにいたオーランド伍長の「所属部隊は陸情3課パンプキン・シザース!」って叫びに通じるものがあって、ぐっときました。

 日本人だったら「統合」による精神の一元化っていうモチーフは、絶対エヴァのアレ、人類補完計画とかを連想するだろうなあ(つーか、したw)。もしかするとリスペクトなのかもしれないが、普遍的なテーマでもあるのかもね。

 表紙はイケメンにーちゃんかと思ってちょっとびびりましたが、もしかしてかっこいいおねー様、セーガン中尉なのでせうか。

関連記事
老人と宇宙(そら) | 日々雑感II

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2008年09月29日

人類が消えた世界

人類が消えた世界人類が消えた世界」読了

 何かの理由(それは戦争でもバイオハザードでも、どんな理由でもいいわけなんですが)で、「人類だけが」きれいさっぱり消失したら、そのあとの地球はどうなっていくかという話。

 最初はね、アフターマン 人類滅亡後の地球を支配する動物世界とか、あのあたりの想像力駆使系を予想して手に取ったんです。でもこりゃ全然ちがうな。そもそも「ノンフィクション」にジャンル分けされているのが、すでに怪しい。

 最初の口絵には「人類消滅後5日目」から始まって、だんだんと文明が自然に帰っていく様子が描かれています。その辺は期待通りなんですが、この本はそれが本論じゃないようです。

 そりゃこういうテーマを聞くと普通「人類がいったい何を残せるか」がテーマだと思うでしょ。でも違うんです。たとえば生分解しないプラスチック。世界中で細切れにされたプラスチックが、いろいろな生物を困らせていますが、これがいつになれば無くなるのかは今のところ想像もつかないようです。また各地の原発の中に存在する無限に近い半減期をもつ核物質、更には空にあけたオゾンの穴。そういった、いやがうえにも「残ってしまうもの」を考えているのがこの本のようです。大抵は「迷惑な何か」であったりするのが、実に残念なんですが。

 人類が後世に「残せる」もの。「残そう」としているもの。そして否応なく「残ってしまう」もの。そういうものが、今でも日々増え続けているのですね。その辺の着眼点は非常に新しいものだと思います。

 また、「現生人類が非常に化石になりにくい状況にある」という考えには、目からうろこが落ちるような思いでした。そういえば、大抵土葬や火葬にしてしまいますし、死体が堆積岩の中に埋もれるような状況というのは、現実にはあまり考えにくいのが昨今ですね。

 後世の知性体から見ると、なぞの文明とか言われちゃうんだろうなー。SOWが感じられる「ノンフィクション」でした。SFファンなら読んで正解の一作。


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2008年09月19日

敵は海賊・正義の眼

敵は海賊・正義の眼 「敵は海賊・正義の眼」読了。

 「敵は海賊」シリーズ10年ぶりの新作ということで、出た日に買ったのですが、なんとなく読むのが惜しくて、ずっと積読に。でも結局、出張中に新幹線で読んでしまいました。

 今回は、実に今日的な話題に満ちた作品です。それはニートの問題であったり、ネットイナゴ関連であったり、思い当たる節がたくさんあります。

 なにしろテーマが、「借り物の観念に相乗りして、自分は絶対に安全なところから撃ちまくり人を人を傷つける」というモチーフ。その姿は匿名性に守られたネットの悪意というやつを思い起こさせるに十分です。

 そう言えば、

ここしばらくの「敵は海賊」にはアクションが足らん!

と嘆いていたあなた。本作は久々に海賊課とヨウ冥(漢字で書けんw)の本気の戦いが楽しめますぜ。

 ラジェンドラはリミッタ抜きでCDSのフルスケール攻撃を見せ、ラテルはインクリーザつきのレイガンをぶっぱなし、ヨウ冥はフリーザーで対抗する。そしてそのヨウ冥さえも恐れるかの黒猫の一撃!

 ああ、素晴らしい。

 しびれる一作。ラヴ。 

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2008年09月12日

シオンシステム

シオンシステム」読了。「シオン」と言えば沢田聖子、って古すぎ。

 三島浩司って知らないけど、徳間のSF新人賞取った人みたい。最近、新人賞もいろいろあって、受賞第一作を追いかけるだけでも大変だ。

 寄生虫を使って人間を健康にする「アイメリア・シオン」、さらにそれを発展させた「シオンシステム」による、病気の予防回復と従来型の医療との相克の話、ってまとめかたが違う!?

 シオンはもともと鳩の体内で発見されたらしいのだが、そういったいろいろな「事情」が、構成のためかうしろの方でパラパラと説明されるので、なんだか入り込みにくい。これはもう作り方の問題なのかな。文章それ自体は癖もないし、アイデアも面白いと思うのですが、その秀逸なアイデアがつながりなく単発で出てくる感じ。ちょっともったいない。なぜか読むのに非常に時間がかかりました。

 結局ハルカがなにものだったのかの伏線は回収してほしかった。これが要するにキモでしょ。

 次でたら、読んでみます。

 それにしてもアレだな、寄生虫ものというと、いつまでたっても「ガダラの豚」を超えるイマジネーションって出てこないものですね。

 あ、読んでいる間じゅう、「レース鳩0777」を思い出してました(笑)。子供のころ、レース鳩やりたかったんだよなぁ。大関って大関正宗のパクリというかリスペクトなんですね、きっと。

 
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2008年07月05日

妙なる技の乙女たち

 「妙なる技の乙女たち」読了。

 いやあ、表紙と書評で「アリア」っぽいのを想像したのですが、やはり小川一水。ちゃんと宇宙の話だし。いや、「アリア」な話も入ってますよ。あのぐるっと船を回すところは、アリシアさんがオール振り回している感じだなぁ。

 新素材開発のブレイクスルーにより、軌道エレベータが現実化した社会。女性がさまざまな抵抗を乗り越えて「プロ」として自立し宇宙を切り開いていくお話。

 軌道エレベータというのは、地上の土台から建てていくのではなく、静止衛星から糸を垂らすようにして作るのが最近のトレンドのようです。静止衛星というのはその原理からしても赤道上空にしか存在できないので、したがって軌道エレベータの建造地も赤道上のどこか、に限定されます。本書では第一号機の建造地として、リンガが選ばれています。

 リンガか。海軍まにやには、帝国海軍の「リンガ泊地」として記憶されているのではないでしょうか。シンガポールの南っかわ。パレンバンの油田が近いので、帝国海軍の艦艇がごろごろ入っていたところですね。

 プロの仕事をする女性は美しい、というか、尊敬します。もう自分もおっさんになっちゃいましたが、プロの仕事ができる女性というのはやっぱり素敵な「お姉さん」なのですよね。ヒモ(笑)になりたがる気持ち、分かるぞ青年。

 人類は、「宇宙」に進出する? | 日々雑感IIでも書いたのですが、宇宙に本当の意味で進出するには、宇宙で地球以上の価値を生み出せないと、生活の場にはならないと思うのです。結局それが現状の科学と技術では不可能と思えるものですから、前述エントリでは、「宇宙への進出はウソ」というスタンスで書かざるを得なかったわけです。

 軌道エレベータひとつでそれが可能となるとは思えませんが、軌道エレベータと素敵なお姉さんたちがいればもしや...と思ってしまいました(笑)。

 読んでよかったでぇす。

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2008年07月04日

空の中

 「空の中」読了。

 ラノベ領域とは知らなかったのです。普通に単行本だったから普通に読んでました。そう言われてみればラノベだ。少年の描写がかなり書き込まれていて、この辺が「ラノベ」の所以なのかなぁと思う。文章量は十分なんだけど、もうちょっと突っ込んでくれたら、と思うところもあります。大人サイドの主人公二人が、どうしてもちょっと浅い感じがするのです。せっかくいい設定を持っているのにね。

 ツンデレなイーグルドライバーってのは新しい(笑)。「レディ・イーグル」との比較はどんなもんだろう。でも、この路線は面白いかも。飛行シーンの描写は、その辺の火葬戦記などよりも秀逸。でも空自の人はF-15って言わないんじゃないかな。普通に「15(じゅうご)」って呼んでいる気がする。

 作者、有川浩氏は高知の出身だそうで、土佐弁が会話のほとんどを占めています。土佐弁ってさ、中高生の女の子がちゃきちゃき話しているのを聞くと、本当に可愛いんだよ、あれ。でも「空の中」に出てくる土佐弁は私の知っている土佐弁とは微妙に違う気もする。私の場合、長浜方面の人(うわローカル)の土佐弁が妙に耳についているからでしょうか。あの「にゃあ」「みゃあ」ってつけるやつ。

 脱線するならば、そう言えば「雨が降りゆう」と「雨が降っちゅう」でニュアンスが違うんだっけ。どっちかが現在進行形でどっちかが現在完了形なんだって。それが過去進行形、過去完了形になると「降りよった」「降っちょった」になるんだそうで...ふんとか!?

 方言につきましては、先日の毎日新聞文芸欄に「方言で創作をする意味」って記事があって、私もいろいろと思うところがあったのですが、現物が手元にないのでまた後日触れたいと思います。

 そう言えば、仁淀川河口の辺、大学の駅伝で走ったりもしたところだけれども、あの辺、本当に何にもないのですよね。あの爺さんの雰囲気はとても好きです。土佐SFってのは想像もしなかったジャンルだけれども、まあ神林長平も新潟SFとか松本SFを書いているし、梶尾真治ももっぱら熊本SFなんだから、土佐SFだってぜんぜんオッケーなはずですね。

 あ、SFとしてはどうなんだろう。まあ普通かもしれない。すんごいアイデアがあるわけじゃないし。でもラノベとしてみると面白いのかも。それはジャンルの上下という意味じゃなくて、ジャンル内の適合性における型破りという意味だけれども。

 こんなこと書いていると岩波さんに笑われそうだなー(笑)。

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2008年07月03日

虐殺器官

 「虐殺器官」読了。

 世界が現在よりも混迷を深め、「虐殺」事件が後を絶たなくなった時代。世界を安定させるため虐殺の首謀者を暗殺することを主任務とするアメリカ特殊部隊の隊員のお話、というと省略しすぎだろうか。

 世界は重層化している。血と汗と涙のレイヤーの上に貧困と繁栄のレイヤーがあるのがこの「現実世界」だ。

 作者、伊藤計劃氏はWEBプロデューサが本業だそうだが、そう聞けばこの構成がOSI参照モデルを意識せずに構築されているとは思えない。

 主人公に虐殺の首謀者として暗殺されるターゲットが「レイヤーワン」と呼ばれるのは、要するに重層化された頂点の存在だからだろう。OSI参照モデルで言えば、最上級レイヤーならアプリケーション層か。そう言えば、ジョン・ポールの仕事は基本的にプレゼンテーションだった。L6層だな(そうじゃないだろうw)。

 上の事象を支える下のレイヤーというのはかならず存在するし、上のレイヤーから見ると抽象化、仮想化された下層のレイヤーを意識することはない。それは例えばカースト制度などの「同一レイヤー内での階層分離」とは異なる思想で、上層のレイヤーから見た下層のレイヤーは、自らを支える基盤でありながら、存在自体も認知できないように抽象化されているものなのだ。

 実はアメリカのジョークではかの「31の大罪」のごとく、8階層以上のレイヤーを見つけたなどというものもあるらしい。さらにOSI参照モデルの7階層モデルをさらに上下に拡張して技術的でないことまで指し示してしまう、というジョークもある。
また米国では、OSI参照モデルの7階層モデルを拡張して技術的でないことまで指し示してしまう、というジョークもある。良く知られているのは10階層モデルであり、「第8層ユーザ層」「第9層財務層」「第10層政治層」あるいは「第8層お金層」「第9層政治層」「第10層宗教層」などとなっている。

ネットワーク技術者が「第8層問題だよ」と言っていれば、それは「ネットワーク自体には問題は無くて、エンドユーザに問題があるんだよ」という意味である。同様に、財務層に問題があるとはコストの面で問題があるということ。お金で解決出来ることは決して少なくない。政治層では、中国政府のGoogleの検索への干渉のように、政治的な関わり。宗教層は「信ずるもの」の意味である。

OSIモデルをTaco Bellモデル(7段重ねのブリトーで有名)と比喩することもある。

「第0層土建層」(有線ネットワークを敷設する建物の構造)という比喩もある。
 そうか、宗教が最上層レイヤーか。うまいなぁ。

 人間の本質が虐殺であるという点。それは「器官」という言葉が表現する通り、心がけや思想などの後天的なものでなく、人間に備わった先天的な特質であるという発想である。その「器官」を刺激すると不随意的に「虐殺」が発生するわけだ。

 「利他的な愛」というものが後天的である以上、それを突き詰めることこそが真に人間的であり、文化的なあり方なのではないか、とも思う。ア・プリオリな特質と、ア・ポステリオリな思想。いったいどちらが人間の「本質」と呼べるのだろうか。突き詰めれば「不自然なもの」こそが真に人間的なものなのかもしれないけど。原作版ナウシカかw

 さまざまな特性を「後付け」で得てきた人類。こんな「虐殺器官」なんてものが単なる盲腸のような器官でありますように。

 最後には悲劇的というか、自罰的な結末を迎えるわけだが、確かにそうしないと話をまとめようがないとは思う。ジョン・ポールを肯定して終わるわけにはいかないものわかるけれど、話をたたむ段階であれしか持って行きようがなくてああなっちゃったという感が否めないのが残念だ(一応ネタばれ回避w)。その結末が本来の作者の思想だったのか、構築しようとしてできなかった利他的な行動を描いたエンディングもあり得たのかは興味深い思考実験だ。ネタばれしないようにしているので、わかりにくい感想になっちゃいましたがご勘弁を。

 そう言えば山本弘「メデューサの呪文」も、「破滅の言葉」と戦う言語学者が主人公ですが、なんかインスパイアというかネタ元とかあったっけかなぁ。シンクロニシティって奴でしょうか。

 この「虐殺器官」、今では「ゼロ年代ベスト」とか言われていますが、うーん。時代を変えるとか、そういう大げさなものでもないような気がするなあ。でもいろいろと考えさせられる一作ではありました。

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2008年06月20日

アイスマン。ゆれる

アイスマン。ゆれる」読了。

 梶尾真治、本当に多作だな。熱狂的ファンがついている作家には珍しいよ。

 で、「アイスマン」ですよ「アイスマン」。マーべリック、アイスマン。フォックススリー。ビンゴ。スプラッシュスリー。ちがーう。

 「月下美人」は知っていましたが、「月下氷人」てのは知りませんでした。情けない。えーっと、鋼鉄ジーグの敵ってのは、そりゃハニワ幻人だろ。ビッグシューターゴー。

 それはともあれ...

 月下氷人(げっかひょうじん)-
男女の仲をとりもつ人。媒酌人。△「月下老人」と「氷人」を合わせた語。ともに中国では縁結びの神。-角川必携国語辞典-

 なるほど。

 で、「氷人」だから「アイスマン」、と。

 男女を強制的に両思いにさせる「アイスマン」能力をもった女性が親友との三角関係に陥って、というラブコメSF(笑)。女性三人が主人公というのは、カジシンにはちょっと珍しいかな。

 やはりOL三人組のそれぞれの生き方が非常に生き生きしているのが読みどころだと思います。ぐわわわんとショックを受けるほどの感動ってのはないのですが、ほんわかと心地よい読後感でした。

 SF的センスオブワンダーを追求するなら違う描きかたもあったはずだし、ちょっぴりそういう引きが顔を出す場面もあるのですが、方向性として、そっちの方は意図的に外しているようですね。

 「SF」からどんどん一般的な「小説」に近づいている気がします。三崎亜記とか(これも今読んでいるのである)そういう方面?

 おもしろかったけどセンスオブワンダーから離れてきているので70点(笑)。

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2008年06月06日

野田昌宏氏死去

野田昌宏死去 正式なニュースソースはまだ上がっていませんが、宇宙軍大元帥こと野田昌宏氏が亡くなられたようです。拙ブログに、「野田昌宏 死去」のキーワードで検索に見えた人がいて、まさかと思ってあちこちのフィードを確認しました。どうやら事実のようです。なんてこった。

「あの近くにガチャピンの恋人の家がある!」 - 真理省
 宇宙軍大元帥閣下こと、野田昌宏氏が亡くなられました。享年74歳。若すぎる……と言うべきか、でも数年前にお見かけしたときはずいぶんお爺ちゃんになってはったし。今までのお仕事のことなど考えると、大往生なのでしょう。最後まで現役でしたしね

 え、?えーーー???!!!

 ついこの間、今日泊亜蘭氏がなくなったばかりだってのに、どうしちゃったんだよ。SFの神様!

大元帥も
「SFは絵だねぇ」

の名言を残し、去られてしまいました。

 「銀河乞食軍団」好きだったなぁ。ロケ松はご自身そのままのキャラクターで大好きでした。それから私はやっぱり金平糖錨地のひとびとが好きでしたよ。外伝いっぱい書いてもらってよかったなぁ。ああ。

「あるある」の納豆捏造とガチャピンの日本テレワーク | 日々雑感IIなんていう事件もありました。日本テレワークのファンである私としては、どうしても納得のいかない事件でしたが、野田昌宏氏、心を痛めたんじゃないでしょうか。

 またもや日本のSFシーンには欠かせない大家が亡くなられました。僕らはそれでもSFに邁進し続けなければなりません。

 ご冥福をお祈りいたします。
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2008年05月26日

今日の早川さん2

今日の早川さん2

今日の早川さん2 今日の早川さん2 (限定版)、amazonから到着しました。

 SF読みの早川さん、ホラーマニアの帆掛さん、純文学読みの岩波さん、ラノベファンの富士見さん、コレクターの国生さんたちが繰り広げる書痴たちの饗宴。

 あいかわらずのあるある感ですね。

 今回はあれだ、国生さんのいうSF読みのイメージ、

「昔のイメージだと、SFだけ読んでいるわけじゃなくって、あんたと岩波さんを合体させたような、隙のないものだったよな」

という一言が胸に痛かったです。早川さんの妄想はさておき(笑)、わたしもそういうふうに思うところがあって、SF大会なんかも一度は行ってみたいと思いながら、畏れ多くて、参加したことがなかったりします。「気軽に行けばいいんだよ」と言ってくれるひともいるのですが、気軽になんて行っちゃいけないものだ、と勝手に思い込んでいる節があります。それこそ今日泊亜蘭氏とか小松左京氏とか、そういう化け物みたいな人がうじゃうじゃいる感覚。そういうキブンも大切なのかもね。

 合体した時に、全体的に早川さんベースでちょっぴり岩波さん、というのも、SF読みのコンプレックスがよくわかって面白かったです。

 それにしても「たったひとつの冴えたやりかた」はもはや卑怯な展開。あの展開にはちょっと泣いてしまいました。

今日の早川さん2 これがブックカバーとしおり。思ったより立派。

 これで速読力+3だ!




今日の早川さん2 とりあえずティプトリーにつけてみました。これぜんぜん進んでないんですよ(笑)。

 それにしてもホーマン軌道ネタ、私もつい最近、天体の回転について | 日々雑感IIで書いたばっかりなんですが、なんというシンクロニシティ!

 いや、誰でも思いつくネタなんですかね(笑)。


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2008年05月21日

今日泊亜蘭氏死去

訃報です。日本SF界の重鎮、あの「光の塔」の今日泊亜蘭氏が亡くなったそうです。

訃報:今日泊亜蘭さん97歳=作家 - 毎日jp(毎日新聞)

訃報:今日泊亜蘭さん97歳=作家

 今日泊亜蘭さん97歳(きょうどまり・あらん<本名・水島行衛=みずしま・ゆきえ>作家)12日、肺がんのため死去。葬儀は近親者で済ませた。

 東京出身。アテネフランセなどで外国語を学び、通訳などを務めた。戦後、SFの創作を始め、1962年に代表作「光の塔」を出版。日本のSF作家として成功した先駆けとなった。

毎日新聞 2008年5月20日 10時46分(最終更新 5月20日 11時08分)

今日泊亜蘭/光の塔 あの「光の塔 」の今日泊亜蘭氏が亡くなられたそうです。
 
 昨年A.C.クラークが亡くなった時にも
「でも僕らには今日泊亜蘭がいる」
と言ったのはとり・みき氏でした。そうか、あの今日泊亜蘭氏も逝かれたのか。

 私が物心ついたころから重鎮でいらしたわけですが、「ドラキュラ俳優のベラ・ルゴシに似ている」との野田大元帥の談話から、なんとなく死なない方のような気がしていました。

 「光の塔」は一時刷り増しをした記憶はあるのですが、今はまた絶版になっているようです。早川はなんであんな名作を品切れにしておくかな。福島正実氏とは折り合いが悪かったらしいが(どうやら福島氏側がよくなかったらしい)、まさかそれが原因ってことは、ね?どうなんでしょう。

 それにしても「光の塔」です。スピーディな展開。かっこいいアクション(天ン邪鬼の竜こと黎竜四郎が本当にかっこよい!)。広がる伏線が見事に収束する構成。どこをとっても国産SFの代表となりうる一作だと思います。これが1962年初版だから驚きます。国産SFとして最初にして既に完成品。

 なにしろあの素晴らしい未来の江戸弁に驚くべきです。あれこそが真の「口語体」というもの。また地の文の平易さ、読みやすさも素晴らしいです。本当によい日本語です。未読の方は古書を探してでも、ぜひ一読を。

 願わくば下らない「OVA版」なんかになりませんように。

 続編の「我が月は緑」を狂喜して読んだのも、既に15、6年前。そうか、そんなに経つのか。

 97歳というお年を聞くと、長生きされたようにも思えますが、まだまだ元気に書いて頂きたかった。本当に残念です。

 合掌。

 

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2008年05月20日

僕たちの終末

僕たちの終末」読了。

 神様のパズル | 日々雑感IIに続いて、私にとって機本伸司の二冊目。

 太陽に起きる異変が予測され、地球脱出用の恒星間宇宙船の建造を始める話。2050年代に設定されていますが、世相は激しく今日的。さまざまなトラブルを乗り越えて、さあ宇宙へ飛び立てるか?という血沸き肉踊る大冒険...にはなぜかならないのです。

 なにしろワールドエンド・スペーストラベル(WEST)。ゴーゴーウェスト、ニンニキニキニキニンニンニン。全体的に週末的な終末なのですね。

 とにかく全編ブレインストーミング。ひたすらブリーフィング。現在の技術の延長線上にそれらしく恒星間宇宙船を成立させるそのもっともらしさは大したものですが、この構成はついていくのも結構大変。

 人間のありようついて考えたら、弥生時代に行きついた、というのは優れて卓見。現在の消費社会におけるスタンダードな生活をエキソダス用の宇宙機に持ち込むのは確かに無理がある。この地球上ですら維持できなかった生活を、限られたリソース内で実現するのは、そもそも考え違いなのはよくわかりました。それにしても当作内の宇宙船内生活は想像を絶していますが(笑)。ここが最大の読みどころなのかもね。

 ノッポ君はあれはミスタースポックだな。「非論理的ですな」の代わりに「それは理屈に合わない」か。でも最後は俺、泣いちゃったよ(笑)。涙腺ゆるすぎな今日この頃。

 機械知性たちの描写がもうちょっとあったらなぁと思いましたです。

 総合的に80点くらい?
おもしろかったです。次は「メシアの処方箋」か。

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2008年05月17日

人類は衰退しました

人類は衰退しました 「人類は衰退しました 」読了。

 出張中に読みました。度胸の最終進化形。成せば成る。

 あの語り口、あの行動。基本的に名無し。楽しさ度の高い所に突然大量に現れ、とんでもないことをしてすぐに逃げ散っていくのあの姿。妙なまぬけさ。

 あの妖精たち、あれは要するにネットワーカーという奴だな。2ちゃんねらーと言ってもいい。ねらーがあんなにかわいいかよ、という声はあるにしても。きっとそうだ。そうに決まっている。ということにしたいのですね。

 「人類衰退もの」というジャンルがもしあるとしたら、「ヨコハマ買い出し紀行」とともに語られる一品となるだろう。子供の頃植えつけられてのは滅亡のビジョンを伴う終末観であって、このような「衰退」フィールのエンディングではなかった。原爆でいちころとか、細菌兵器で一週間で絶滅とか、海に沈没とか、要するに滅びにもいちいちダイナミズムが伴っていた時代だったのだ。

 いつ頃からこういう静かなフェイドアウトがしっくりくるようになったのだろう。そこでは「滅亡」という事実が持つネガティブな感情がうまく取り除かれ、なんとなくほっとした日々であるように描かれているのだが、それがいったいどのような意味を持つのか。

 うーん、続巻も出ているようなので、もうちょっと読んでみます。

 評価未決定。

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天体の回転について

天体の回転について 「天体の回転について 」読了。

 出張中に読みました。度胸の二発目、成せば成る。

 前回の「海を見る人 | 日々雑感II」に比べると、ちょっとグロかったり、エロかったり、ホラーっぽさもありました。ふんぐるい むぐるうなふ くとひゅーるひゅー るるいえ うがなぐる ふたぐん。

 表題作「天体の回転について」は軌道エレベータもの。ホーマン軌道、名前からしてちょっとエロい。いやエロいのはお前の頭だっ。

 8編の短編が入っていますが、一番ガツンと来たのは、「盗まれた昨日」でした。タイトルからして何かのオマージュっぽいんですが、わかりませんでした。なにかありそうだなぁ。ジャックフィニィ?いや違う違う(笑)。

 人を人として他の人と分かち、個を個として存在せしめる何か。「人格」というか、しろまさ的に言うと「ゴースト」か。それが固有の「記憶」と切り離して存在するものなのかどうか、という考察。

 ここでは作者の結論が述べられますが、うーん、どうなんだろう。三回読んで考えないとどっちが正しいのかよくわからない。私の中ではちょっと後を引くテーマになりそうです。

 ところで、小林泰三氏は「こばやしたいぞう」ではなく、「こばやしやすみ」だったのですね。表紙で初めて気が付きましたー。

 グッドでしたグッド。
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ロケットガール4魔法使いとランデヴー

ロケットガール 「魔法使いとランデヴー(ロケットガール 4)」読了。

 出張中に読みました。度胸一発、成せば成る。

 諸般の事情で女子高生が宇宙飛行士になるハードSFシリーズ(?)の第4巻。こんな表紙だったかなぁ。1〜3までのタッチとちょっと違うよ、と思ったら、OVA版が制作されていて、それに合わせた絵柄の変更のよう。この表紙、なんとかしてくれよ。鶴田謙二に頼めばもっと違う表紙に...って、違いすぎるか。

 中編の表題作と短編が3本。ちょっとお得な感じ。

 「魔法使いとランデヴー」は「はやぶさ」を擬した「はちどり」の飛行と回収をたどっています。「はやぶさ」について名前は聞いたことがあるが、詳細を知らない、という人がいらっしゃればわかりやすく説明されていますので一読の価値があるのかも。

 実際の「はやぶさ」については巻末にも書かれていますが、バッテリの復旧まで行っていますから事実の方が更に先に行っちゃってるわけですね。まだじりじりと地球目指して飛行中なのです。がんばれ「はやぶさ」。

 そう言えば、終端速度、ターミナルベロシティですか?話題に上がっているのですが、先日の、紙飛行機で大気圏突入! | 日々雑感IIでも考えたのですが、要するに高度の高いところで十分な減速が行われないと、やっぱりふわふわ降りてくることはできないのですよね。紙飛行機の方は高温でも燃えないような工夫もあるようですが、どうなんでしょうね。

posted by delta16v at 07:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | 本・雑誌

2008年05月06日

ゴーストリーダー

 しげしげと感想文を書いていましたら、友人からメールが届きました。

 曰く、仕事をしながら、家事と育児をして、その上そんなに読めるわけがない。実は失業しているのか、ゴーストリーダーを雇っているのかじゃないのか。一体どっちなのか、とのこと。

 わざわざ金払って本を買って、ゴーストリーダー(笑)に読ませるわけはないだろう。かといって失業しているわけでもありません。

 昔っから、読もうと思うとあっという間に本が読める便利な体質なのです。時間の配分をちょこっと変えれば、週に二、三冊ならなんとか読んでいけるのです。

 ご心配なさらぬよう。

 こうやって積んである本を片付けていかないと、だんだんと家に住めなくなってきてしまいました。読んだ本も片っぱしから売りに行ったり、人に配ったりしています。よっぽどのことがないと手元に本を保存しないように決めてしまったので、今後は感想文をしっかりと残していきたいと思います。ブログの感想文ならいくら書いても空間的スペースはいらないからなっ。
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つばき、時跳び

つばき、時跳び」読了。

 やはり梶尾真治は安心して読める。それが駄作か傑作かという意味だけではなく、物語として幸福なエンディングに着地できるということだ。エンディングにランディング。ああ、地道な地口。駄作な駄洒落。

 さえない作家が古い実家に一人で住むうちに、幽霊に会うようになって...というオープニング。幽霊の正体は「つばき」という幕末・元治時代の女性なのだが、これがまたかわいいのなんのって。ある種、男性の理想を形にしたかの如くな女性なのだが、これならやっぱり時を飛んでも会いに行きたくなるよな。

 「つばき」がもっと時を跳べば、カジシン版の「時かけ」になってしまうところだが、やはりカジシン、いくら女性がアクティブに動いても、視点は常に男性なのだ。

 カジシンの時間テーマは読む度にいつも感動する。重要なものはいつも人と人とを隔てる時間。それが例え「空間的隔たり」であったとしても、二人が出会うことを妨げるものは結局は「時間的な制約」に帰せられる。
 途中、会えなくなった「つばき」への思いに沈む主人公の思いは、現実世界で常に一発勝負の「いま」という時を生きる我々には、まったくもって他人事ではない話だ。

 ああ、それにしてもやっぱりカジシンは最後の一割が最高だねぃ。どんでん返しというほどの大仕掛けでもないし、ある程度読めてはいるんだが、それでも感動するのは、年取って涙腺が弱くなってきたからでしょうか。

 時間テーマSFとしては構成がシンプルなんだが、これ、読者層を考えてのことだろうか。「黄泉がえり」以来、一般の読者が多いようだし、あまりに凝った構成にすると抵抗があるのだろうか。願わくば時間テーマの達人として、現代の「広瀬正」になって頂きたいのだが、今後どのように展開するのだろうか。ハインラインの「時の門」まではいらないけどね(笑)。

 とにかく名作です。

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2008年05月05日

進化の設計者

進化の設計者 」読了。

 現在よりちょっぴり進んでいて、ちょっぴりディストピアな近未来の話。

 スーパーコンピュータが現在よりも発達している世界で、天気予報が外れます。巨大な台風がシミュレーションと異なる進路をとり、大きな被害をもたらすシーンから始まって...

 南洋に浮かぶ「ムルデカ」のイメージがいいです。劇場版パトレーバーの「方舟」、とか、「JSP-03」(佐藤大輔「遥かなる星」)みたいな海洋巨大構造物はちょっとでかすぎなくらいの巨大なイメージがなかなかよいです。それにしてもムルデカってのはインドネシア語で「独立」なんだそうですが、意味深だねぇ。

 その「ムルデカ」とスーパーコンピュータに、優生学的な差別観バリバリの宗教団体である「ユーレカ」がからんでくるのですが...

 林譲治というと、ずーっとB級仮想戦記作家のイメージがあって、手に取る気がおきませんでした。「ウロボロスの波動」でちょっと見直したところがあって、本書もその流れで手に取った次第。

 エピソードは魅力的ですし、最後のどんでん返しもなかなか巧妙。死体がごろごろ出てくるあたり、カリオストロ城地下のようでドキドキ具合もいいです。

 優生学的優越を看板にした全体主義的宗教団体というと、60年前のアレが印象に強すぎるわけですが、たとえばスタートレックの「カーン」を始めとして(それが始めかよ)、なぜこうも私の中に不愉快な感情を呼び起こすのか、その根源はいつか適切に分析してやらにゃあな、と思ってしまいます。とにかくユーレカ、不愉快。

 そういや、山本弘の「神は沈黙せず」でも取り上げられていましたが、コンピュータとネットワークによる直接民主主義ってモチーフがちらりと顔を出します。これって流行りもんなのか。

 星良さん(笑)が「足は飾りじゃないのよ」と言ってみたり、登場人物が全部帝国海軍の軍艦名だったりというのは、ちょっとした遊びなんだろうけれど、私にはイメージが固定されてよくなかったです。あなたならできるわとかあの声で脳内再生されちゃったし、
船の名前の流用はもうエヴァ以来食傷ぎみなんだってば。登場人物の名前を考えるのも大切な作家の仕事だぜ。

 話の構成として、JAMSTEC横浜、老人福祉、ムルデカ方面のエピソードを交互に描いていますが、その中に個人的な人間関係も織り込んであったりして、少々関連が複雑にすぎるのではないかと思います。どれが誰やら混乱する場もありました。どっちかというとそれぞれ関係を持たないエピソードが最終段階で一つに収斂していく構成の方が読みやすかったのでは。それにしてもどこでもここでも活躍しているのは全部女性だな。

 全体的にみるとエピソードの量ももう少し刈り込んだ方がよいのかも知れません。

 最後の方が大石英司並みのドンパチに堕してしまうところもちょっと残念。

 最近読んだ中では平均点ちょっとプラスというところで。

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2008年04月29日

今日の早川さん2

今日の早川さん2


 今日の早川さん2 (限定版)、amazonで予約しますた。

 前巻「今日の早川さん」については「今日の早川さん | 日々雑感II」で取り上げてますので、ご存じない方はまずそちらを。

 限定版はですね、早川さん読書セットつきの豪華版。早川さんのブックカバー、速読力+1だそうですよ。確かに電車の中でこのカバーというのも恥ずかしいもんな(笑)。

 個人的には前巻で電撃的に結婚された岩波さんの、その後の生活に興味があります。本読みが結婚すると、いろんなものに妥協しないと生きていけないんだよね。

 ちなみに私は読んでいる本や雑誌や新聞を(PCの画面もだがw)、横から覗かれるのがすんごく嫌なので、なにか読み物を始める時は、バックを取られないように気を使いながら読まないといけません。

 それなんてゴルゴ?

posted by delta16v at 14:42 | Comment(0) | TrackBack(0) | 本・雑誌

歩兵型戦闘車両OO(ダブルオー)

歩兵型戦闘車両OO(ダブルオー)」読了。

 最初に本屋でなんとなく手に取った時に、ピピンと来て、逆にあわてて本棚に返したのですが(笑)、数年たって「第3回日本SF新人賞佳作入選作」と聞いて、読んでみました。最近は積極的に知らない作家の作品を読もうと思っていますし。

 環境庁が作った合体変形ロボットに社会からリストラされた三人が乗って、人の心の隙間から生まれた怪獣と戦うお話。

 うーん、どうなんだろう。先日の「MM9 | 日々雑感II」でも書いたんだけど、これも「怪獣が実際に出現した状況を現実的にシミュレート」みたいな話に見えて、そうじゃない。MM9と違うのは、そういう状況を「面白く書こうとして書けなかったところ」なのかな。

#MM9は最初からヨタ話狙いですよね(笑)。

 「ロボットが合体変形して怪獣をやっつける」というモチーフは本来子供の妄想であり、それを大人が読むに値するものに昇華するには、そうとう凝ったアプローチが必要だと思うのです。たとえば柳田理科雄氏は、「科学的に論証する」というアプローチから入ったわけですね。

 で、本作がそこに持ってきたアプローチというもの、たとえば官僚主義であったりとか、公務員的無神経さであったりとか、職場や社会からのリストラであったりというのがはたして「面白いフィクション」を成立させるために足りる材料なのか、ということが疑問なのです。

 たとえば「超時空要塞マクロス」では、戦闘機であるバルキリーがわざわざバトロイドに変形する「理由」として、「敵が巨人だから」という問答無用な設定を与えて、それが作中における「リアル」を確立しています。フィクションにおける「リアル」というものは現実世界がどうあれ、それに従わなければならない理由は実はないのです。

 本気でまじめに書かないと面白くなくなる、というのはわかりますが、だからといって現実のつまらない面をフィクションに持ち込むのはどうなのでしょうか。一生懸命書こうとしているのは分かるんだけどなぁ。

 でも読んだ人、どうなんだろう。なんとなく「面白がらないと申し訳ない感じ」ってのがありませんでしたか。

 どうせなら、もっと明るく前向きな「嘘」でスカっとだまされたいと思う今日この頃。

 前出、柳田氏の方針は特撮、アニメの内容をバカにして笑うというのが本来の意図のようなので、それに比べると本作の方が合体ロボットものを心底まじめに書きたくて書いているが伝わってはくるので、その辺は好感が持てるのですが。

 全然関係ないのですが、機動戦士ガンダムOO(ダブルオー)が出てしまったのは残念でした。

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2008年04月28日

神様のパズル

神様のパズル」読了。

 ああ、表紙でだまされた。ずっとラノベだと思っていたんです。確かに綾波/長門系天才少女が主人公なんで、こういう表紙でもいいのかも知らんが、誤解されやすそうだ。しかも、「物理学のゼミのテーマを相談している時に天才少女が『宇宙を作ろう』と言い出して」なんて聞けば、やっぱりラノベだと思うよな。でも中身はちゃんとしたSFでした。

 作られた天才児の内心の葛藤。神と語ることを切望するその心。うーん、いいね。

 作中でも「フェッセンデンの宇宙」は言及されていますが、あれよりはかなり今ふうな「宇宙の作り方」ではあります。ちなみにその作り方ですが、「加速器で素粒子をニアミスさせ、そのスピンの中心に発生するアイソ・カー・ブラックホールに、コヒーレントなガンマ線を撃ち込むことで、無から宇宙が開闢する」のだそうです。なんともっともらしい。

 巨大な加速器の描写にも感心しました。友人にKEK勤務の人がいるんですが、ああいう施設の勤務には、あこがれてしまいますね。

 学生時代の描写として読むと青春小説としてもいけてます。なんかいろいろ思い出しちゃったよ。最近だとサークルクラッシャーとかいうんですか(笑)。

 機本伸司かあ。他の作品も読もーっと。

 ちょw。ぐぐってみたら、映画『神様のパズル』公式サイトだって。いやいやいや(笑)
 こういう仕立て方されてもなぁと思いますが、KEKでロケとか聞くと、ちょっと見てみたい気も。

posted by delta16v at 12:57 | Comment(2) | TrackBack(0) | 本・雑誌

2008年04月24日

梶尾真治ブログ

げ、全然知らなかったんですが、カジシンがブログ書いてました。「エッセイ」になっていますが、ちゃんとRSSフィードもされてますよ。すげぇ。

高橋酒造株式会社|人吉・球磨|カジシンエッセイ

月に一回ほど更新されているようです。わたしは恐れ多くてコメントなんてできませんが、みんな度胸があるんだねぃ(笑)

高橋酒造株式会社|人吉・球磨|カジシンエッセイ|第41回「性同一性執筆」
もう老境に入ろうとしているオヤジが、30代頭の女性の行動を思い描こうとすると、溜息が出るばかりなのです。自分の知らない世界ですから。
老境?
プロフィール
 名前: 梶尾 真治(かじお しんじ) 1947年12月24日生まれ。山羊座のA型。熊本県出身。少年時代から小説を書き始め、1971年『美亜へ贈る真珠』で作家デビュー。リリカルなものからドタバタまで、幅広いジャンルのSF作品を生み続けている。とりわけ時間とおもいでをテーマにした短編SF群は、読者に何とも言えないビタースィートなテイストを与えてくれる。短篇SF作家として主に活躍してきたが、最近は長篇作品が目立つようになってきている。代表作は「おもいでエマノン」「時尼に関する覚え書」「サラマンダー殲滅」「OKAGE」「黄泉がえり」など。
 うわ。もう60歳。還暦なのー?!あのカジシンがー?!

 歳取るわけだわ。
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精霊探偵

 「精霊探偵」読了。

 事故で妻を失った男に、他人の守護霊を見る能力が発生して...というお話。その能力をつかってささやかな探偵の真似事を始めるのですが、そのうちとんでもない事件に巻き込まれてしまいます。

 SF的舞台設定ですが、SFなのかなぁ。ホラーっぽくもあるし、やっていることはミステリー。結局は普通のありふれた「小説」なんですね。でも、とてもとてもよく出来たそれ。

 他人の守護霊は見えるけれども、自分の守護霊は見えないというインディアンポーカー状態は面白いです。妻を失ってこんな能力があったら、「ゴースト ニューヨークの幻 」じゃないけど、絶対に妻を探すよね。あっちは自分が死んじゃってるんだけど。

 猫とデジカメ。大切な小道具ですね。エンディングまでいくと、やはり心地よいSF的結末...なのかな。
 
 梶尾真治、振り返ってみると驚くほど多作ですね。ペースも落ちてないし、頭が下がります。

 カジシンと言えば、「美亜に贈る真珠」とか「100光年ハネムーン」とか「時尼に関する覚え書き」の頃のイメージが強いんだけど、最近の人には「黄泉がえり」なのでしょうか。

 あ、はやいとこ「エマノン」片づけなきゃ。

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2008年04月22日

鯨の王

 「鯨の王」読了。

 「クジラ」という生き物は、巨体もさることながらその知性の存在への可能性から、昔から多くのSFで取り上げられています。銀河ネットワークで歌を歌っちゃったり、ネモ船長の友達だったり。捕まえてくっちまう日本人が言うのもなんですが、もしかしたら本当に知性的な存在なのかもしれないなぁと思わせる神秘性はありますよね。

 原子力潜水艦の乗員が、潜水航行中に次々と変死する事件が起きて...という導入部分は結構いいです。

 でもやっぱしエイハブ船長役(?)の艦長とか、のんだくれのアウトロー博士とか、心に傷を抱いた潜水艇パイロットとか、AIに改造されちゃったイルカとか、掘り下げがもう一つで、どこかしら他所から持ってきた感が否めないです。いっそ谷甲州あたりに書かせると...あ、やっぱおんなじになっちゃうか。全盛期の小松左京ならこの導入部からすごい着地点に行きそうだけど。

 まあ突然クジラがテレパシーで話しかけてきたり、「実は宇宙から来たのだ」などと言いだされても困っちゃいますが、その辺はSF作家のばかぢから(笑)で驚愕の結末が欲しかったような気がします。知性の有無なんかも結局よくわかんないまま終わっちゃいますし、「科学的な事件の落とし所」としては正しいんだろうけれど、なにかこう振りあげたこぶしのやり場に困る感じです。

 藤崎慎吾、「蛍女」「クリスタル・サイレンス」「ハイドゥナン」と、時々目を通すようにはしているんですが、どうもぱっとしない。引っ掛かりなく、するすると結末まで行っちゃう感じです。

 誰かが「ものすごくまじめで、健全な作品を健康的に書く人」と評していたように思いますが、確かにごもっともです。「ウッフンという関係((C)豊田有恒)」なんかはどこにもないし。
 まあそれにしちゃ何故か「ストーンエイジCOP」だけはひたすら気持ち悪かったわけですけど(笑)。
 一番よかったのは今のところ「ハイドゥナン」かなぁ。

 この「鯨の王」も安心して読める感はありますが、傑作とはいいがたいかも。もうひとひねりほしいなぁ。SFとしちゃ本当にまじめなんですけどねぇ。

 潜水艦戦闘ものとしては、久々で楽しかったように思います。バッフルクリアとかスプリントアンドドリフト(は、やってないか)なんて久しぶりー。でも超音速の魚雷はちょっとアレ。

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2008年04月19日

プレシャス・ライアー

プレシャス・ライアー 」読了。

 ここんところ、精力的に積読を片づけています。自分で精力的言うな。はいはいはい。

 菅浩江さん、実は初めてなんですよ。快傑のーてんきことガイナックスの武田康廣本部長の奥さんとしか認識していなかったり。

 スーパーコンピュータのエンジニアが、コンピュータの発達において「おおっ!」という感動が薄れてしまい、新たなる「おおっ!」を探し始めるという動機は結構好きです。
 私も80年代初頭から「おおっ!」というブレイクスルーをいくつも重ねて生きてきました。
 今はネットの中に「おおっ!」が多いわけですけれども、確かに昔に比べると、感動が薄れているかもしれないな、いかんいかん。

 後半エンジニアの出番が減っちゃうのは残念ですが、あそこをハードに書いてしまうと神林長平になっちゃうのかなぁ。
 でもあの辺のテーマに近年の国産SFの精粋があるような気もするし。もっと突っ込んでいきたいなぁ(誰に言っているw)。

 ギークでクールなテクニカルタームをちりばめていたと思うのですが、クラッキング合戦を含め、さすがに初版が2003年だとちょっとつらい。5年もたっちゃうとね。

 当時って藤崎慎吾とか山本弘とかうーんとすぐには思い出さないけれど、実に多数のSF作家がみんなで「量子コンピュータ」というネタを取り上げてたような気がしますが、それだけノイマン型コンピュータに失望というか未来への閉塞感を感じていた時代だったのでしょうか。
 「カオス」というのもなんだかちょっと懐かしい。

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2008年04月18日

海を見る人

海を見る人」読了。

 「MM9」から続いて、「アルファオメガ」を読みたかったですが、本屋にはこれしかないし。しかも表紙が鶴田謙二だし。これはもう買うしか。半ば表紙買いだな。

 小林泰三って、初めてだったんですよ。もっとホラーっぽいとかミステリーっぽいのかと思ったら、思ったよりハードSFしてました。おみそれしました。

 ただ、いつもいつも伏線と裏ばかり読んでいるすれっからし(笑)なので、なんとなく着地点が見ている感があります。

 えーっと、タイトルチューンの「海を見る人」は、あれはたぶん「愛に時間を」(/星野之宣「2001夜物語 (Vol.3)」収録)だな。

 彼岸の彼方へ無限の時間をかけて落ち続ける恋人と、現世のこちらから永遠にそれを見守り続ける愛。
 一方には有限な時間。もう一人には無限の時間。うーん、リリカル。ちょっとカジシンぽいかな。

 でも重力が異なる地域を歩いて行き来する、という世界観はガモフばりでおもしろかったです。

 小林泰三、もうちょっと読んでみようっと。

 
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2008年04月15日

審判の日

 「審判の日」読了。山本弘づいているな。

5つの短編が入っています。先日の「神は沈黙せず」もそうだけれど、基本的に「ソリプシズム」というものが根底にあると思うのです。

 観測する自分という主体が存在するから、世界が存在する。観測する主体こそが世界を発生させているという考えかた。「唯我論」とか「独我論」とか言われてるアレ。フレドリック・ブラウンの「火星人ゴーホーム」なんかが代表的でしょうか。

 以前引き合いに出した「フェッセンデンの宇宙」もそうなんだけど、観測する主体が自分じゃない誰かである場合、正確には「ソリプシズム」とは言い難いんだけど、そういう偉大な存在として「神」を設定しているようです。

 この短編集にもどこかで偉大な存在が世界を見守っているというイメージが各短編の各所にでてきます。そういう設定にするとストーリーが進めやすい、という作劇上の都合はさておき、私もたまにそうだったらどれだけ楽なんだろう、と思うことがあります。

 人間理性を信じて、自らの意思で生きていくことを決めている以上、どれだけつらくても自業自得なんですけれどね。

 短編集ということで前回の「神は沈黙せず」よりも短く、読みやすいです。星新一くらい縮めてもいいかもー。

#それはそれで逆に書くのが大変かもー。

こちらに作者ご自身の開設(ネタバレなし)もありマウス。

短編「夜の顔」イメージは.: 妖怪大戦争 :.だったんだけどなぁ。竹中直人だったか(笑)。

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2008年04月09日

天涯の砦

 「天涯の砦 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)」読了。

 一般人が大勢乗った宇宙ステーションが事故で爆発し、中に取り残されたひとびとのサバイバルが始まるわけですが...

 うーん、小川一水ぽくない(笑)。どっちかというと谷甲州じゃないですか。ちょっとプラテネスふうでもありますね。ひとがひとと否応なく関わらざるえず、またその関わり方にさまざまな問題を抱える点が現代的であるのかな。

 これでもかというほど、裏の裏、奥の奥があるわけですが、伏線の種明かしがちょっと唐突過ぎるかもしれません。

 奥付けで、「初めてのジャンルだったので大変だった」というような著者の感想がありますが、こっち方面もがんばってくれると面白いかもなーと無責任な読者は思ったりしました(笑)。

 序盤、エンジンを始動する上で、AIに概要の目的のみを指示し、細かいパラメータや操作はすべてAIの立案に任せる自動モードで浮上を行うあたりはコンピュータ屋としては読みどころでした。

 
AI、かわいいよAI。


 小川一水は私の中ではランクが高いので、本作を単品で見た時の評価は低めにしときます(笑)。

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2008年04月08日

神は沈黙せず

 「神は沈黙せず」読了。先日のMM9に続いて、また山本弘。通販で本を買っていると、同じ著者のをついまとめ買いしちゃうなー。

やっぱりトンデモ系のネタが満載です。基本的にハミルトンの「フェッセンデンの宇宙 」ネタなんだろうね。全体的にちょっと長すぎかも知れないです。トンデモネタの事例紹介を少しけずるとバランスいいかもなー。

 一番こころに残ったのは、誠実なデバンカー老人が死後の世界の実在を検証するために、パスワードを抱えたまま死ぬシーン。死後、霊となって現世にパスワードを伝えられれば、死後の世界が実在するという証明になるということで、大変な実験なわけですが、はたしてその結果は。

 なんだかね、超B級だけど、つい見てしまう「ゴースト ニューヨークの幻」を思い出しました。

 「最悪の最後は最強の敵を道連れに」というのが私のモットーでもある(パクリだがw)のですが、その時のためにパスワード用意しとくべきかなー。

  
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2008年04月06日

MM9

書評で評判もいいようなので、MM9、読んでみました。山本弘氏というと、例の「と学会」の方ですね。SF作家が本業なのです。

 私が読んだ書評では「怪獣が実際に出現した状況を現実的にシミュレート」みたいな惹句だったんですよ。へー、山本弘がそんなん書いたんだ、と手に取ってみたわけです。

 ぜんぜん違うよ。その評者、どこ読んだんだよ(笑)。たぶん公務員として描かれている主人公のスタンスだけ見て、そう評したんだと思うけど、ちょっとひどすぎ。

 基本的にパロディと「と学会」的ヨタ話(おっとこいつは褒め言葉だぜ)です。面白いじゃん。最後はやっぱし「うわ、やっぱそーだったのね」と笑わされました。

 「トンデモ」さんというのは基本的にビリーバー。ですから周りからは困ったチャンであるとか、ヒカガク的であるとかそういう批難を浴びるわけですけれども、これがフィクションのライターということになれば、これほどイマジネーション豊富な人々もないわけです。実際は偏りすぎだから使いものにはならないのだろうけど、その発想の数々は集めれば楽しいお話のもとになりうるわけです。なるほどなー。

 作中でもっともらしく語られている蘊蓄の、どこまでが実際の資料だか、わかったものではありませんぞ。
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2008年03月21日

A・C・クラーク死去

 先日、速攻で知ったのですが、多忙のため書きとめることもできませんでした。

 3/19に亡くなったそうです。去年90歳のお祝いをしたばかりだったのになぁ。

 ハインラインも鬼籍に入りましたし、まあ、お年なのでしかたがないのでしょうが、それでもやはり残念です。

 孫が死んで悲しむハスハのコレット王に炎の女皇帝が語った言葉。
若くして死んだ者へは その未来と可能性を嘆き、長き人生を全うし老いて死んだ者へは その人生の記憶を惜しむものじゃ
 まこと、いくつで亡くなっても惜しい人は惜しい。
人の死は肉体と精神の死だけではなく、死んだ者の事を思い出してくれる者が ひとりもいなくなった時こそが真の死と思う時もある
 強大なミームを発散させた巨匠は、人類の歴史の一部となり、不死を手に入れたといってもよいのでしょうか。

 短編が好きだったんですよ。
 軽い作品ですが「白鹿亭綺譚」がやっぱり一番好き。
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2008年01月16日

amazonオリジナルブックマーク

amazonオリジナルブックマーク アマゾンでAmazon オリジナル ブックマークを買ってみました。

 黒と黄色の二種類。安い割にはちゃんと革のひもがついていて、見た目には立派。ちょっちかっこいい。

 ただちょっとクリップがきつくて、手荒に扱うと裏表紙に傷が入りそうです。私は本のカバーは本当に保護材だと思っているのであまり気にしませんが。

 本を注文した時についでに頼んじゃいましょう。在庫はいつもあるようですし、悪名高い分割発送にはならなさそうです。
posted by delta16v at 08:07 | Comment(0) | TrackBack(0) | 本・雑誌

2008年01月09日

時砂の王

 しばらくあっためてましたが、「時砂の王 (ハヤカワ文庫 JA オ 6-7)」やっと読了しました。新幹線に乗らないと本が読めない体になってきたぞ。

 小川一水氏はここのところイチオシなのですが、この書き下ろしも楽しかったです。

 正体不明のETと戦ううち、相手が時間軸を過去にさかのぼって地球人の祖先を滅ぼす作戦に出てきて...という時間もののお話。

 雰囲気としては、機械たちと時を超えた戦いを続けるという点で「機械たちの時間」を思わせるものがありました。またちょっとカジシンぽいロマンスも秀逸です。いい感じにまとまっていると思います。

 ただ、いろいろなカラーをぶち込みすぎのきらいはあります。小川色がもっと濃くてもよいかもと思いましたが、まあこれはこれでいいのかもな。その辺は意見が分かれるかもしれません。

 ということで種明かし無し(笑)。ぜひお読みください。

 表紙のスツーカが超燃え。
 もっとここを書きこんで欲しかったぁ。

 
posted by delta16v at 18:13 | Comment(0) | TrackBack(0) | 本・雑誌