
アニメに登場する数々の「艦長」を紹介する一冊。
あー、この発想はなかったな。内容はともかく、その企画力を高く評価します。
日本アニメ史において、SF戦闘ものに3つのターニングポイントがあります。
もちろん「ヤマト」「ガンダム」「マクロス」ですね(例によってEVAの件はさておく)。
ヤマトと言えば沖田艦長。後にひょっこり生き返ってきたりして多くの人を残念がらせましたが、初代の沖田艦長(ってなんぞw)はまさに武人。生きて生きて生き抜いて戦い続ける。目的のためには撤退も辞さない。その割には太陽系を離れる時、艦長室で古代と一杯やりながら「お別れを言うぞ古代」と二人で太陽系に向かって「さようならー!さようならー!」と叫ぶ姿が印象的。
いい艦長でした。
ガンダムからは、やっぱりブライトさんですね。
艦長なんて呼んでもらうのは後の話。呼ばれ方は「ブライトさん」です。同格のリュウはともかくミライさんやセイラさんからは「ブライト」って呼び捨てだし。しかもずーっと「ホワイトベースの責任者です…」とか腰の引けたこと言ってる。なんだよ責任者ってw。パプアと邂逅して補給中のファルメルを叩きに出た作戦では、いきなりみんなを集めて出撃するかどうかを多数決で決めるんです。多数決ですよ多数決。
だってブライトさん19歳なんだもん。まだ士官候補生なんだよ。それなのに14歳の中坊を二度も殴ってガンダムをスタンバらせたり、シャアを狙撃したり(第2話でシャアのレコーダーを狙撃して破壊したのは実はブライトさん)、ジャブローと折衝したり、弾幕の薄い右舷はなにやってんのと叱咤しないといけない。
大変ですよね。
後にニュータイプの名伯楽みたいに言われますが、本人はもっとのんびりしたかったんじゃないかなあと思います。
いい艦長でした。
マクロスからは当然ブルーノ・J・グローバル艦長ですよね。どうでもいいけど「・J・」って顔文字だよな。「ロバート・A・ハインライン」とかもかわいいぜ。いや、それはどうでもいいんだ。
「マクロス・パーフェクトメモリー」というムックに「略奪艦隊」という一作が掲載されていました。統合戦争の最中、潜水艦隊に勤務していたグローバル艦長と早瀬提督(未沙のオヤジね)のおちゃめな作戦行動の一部始終を描く小品ですが、グローバル艦長、もともとふざけた人なんだよ。
「拾ったものなんか使うからです」とクローディアに非難されると「いや、まったくだ(ヤレヤレ)」って返しますけど、あの辺がグローバル。超グローバル。
後に政治家になったりして偉くなるらしいんですが、やっぱり冥王星軌道からの帰還の日々こそが、あとから思うと人生における充実した思い出になったのではないでしょうか。ブリッジは女性だらけで大変そうですが。
いい艦長でした。
あとは、「艦長」というキーワードで思いついた俺的艦長をあれこれを適当に書き散らしてみる。
アニメとか動画という枠を取っぱらって言えば、まずはキャプテン・カーク。基本「キャプテン」表記の斉藤伯好っ子だった私ですが、最初に読んだのが「二重人間スポック」か何か「艦長」表記の長編だったので、キャプテン・カークというよりは「カーク艦長」の方が実はしっくりくる。ミスターカトーって誰?ズールーでそ。
「俺の艦長」では古代とか、ブーン(笑)がすぐに自分で出て行く艦長であると指摘されていますが、元祖はこの人ですね。艦長自らずいずいと上陸していって、積極的に事件に巻き込まれるタイプ。あと、カークと言えば、その元ネタになったS・C・フォレスターのホーンブロワー艦長も思い出深いですね。海軍のなんたるかはホーンブロワーに教わりましたよ。
あとね、小学生の頃は「サブマリン707」の全盛期だったんです。後にリメイクが小澤さとる本人を含めていくつも作られましたが、最初の707が最高。古本はプレミアつきですよ。早く再版すれ!
707の速水艦長以降、「レッドオクトーバー」→「沈黙の艦隊」ラインという戦う潜水艦作品が作られますが、やっぱり水中戦闘なら速水艦長です。沈黙の艦隊なんてレッドオクトーバーのパクリだし。708の南郷艦長も忘れるな。
で、その「沈黙の艦隊」。最初は深町艦長が主役だと思ったんですよ。多分描いてる方もそうだったんじゃないかな。でも見せ場は東京湾海戦だけで残念でした。海江田はその後、御都合主義というか、ひたすらエスパー使いながら戦って行くんで、戦闘シーンについてはああ、そうですかとしか言いようがない。そんなわけで海江田には未だに感情移入しにくいです。つるりとした風貌も含めて。あれは燃える艦長の顔じゃないやね。やっぱ艦長なら深町w
所で「俺の艦長」と聞いてまず脳裏に浮かんだのは、「沈黙の艦隊」の終幕で海江田を見舞いに訪れた溝口水測長が口にする「俺の艦長だ」という台詞です。たぶんこれがイメージソースなんだろうな。ミゾグチ、ガンバロー!
あとねー、女性艦長ということでタクティカル・ロアとかも挙げようかと思ったけれど、やっぱいいです、これ。萌えとかつまんないエロとかもういい加減やめませんか。
女性と言えば、カルメンシータは頭剃っちゃだめだろ。せっかく可愛い設定なのに。加藤画伯の挿絵もタッチが荒々しすぎてちょっとコレ、ナイッスよ、と涙目。さすがのコミケでもカルメンシータのレイヤーはいなさそう。ロバート・A・ハインラインさん(・A・がかわいい)の心の中における女性海軍軍人のありようが伺える設定ですね。女捨てないと艦長というか「軍人」にはなれない。見習えよ、タクロア。
やっぱり美しい女性で燃える艦長というと、マチルダさんくらいなのか(いや、あれは艦長じゃないw)。
ネモ船長は艦長と呼ぶとすごく怒られるので、ここでは除外しますw
以前、年相応の年のとりかた | 日々雑感IIというエントリで、大人の象徴としての「隊長」という存在について語りました。「キリヤマ隊長や後藤隊長みたいに、いつかは自分もなりたいな」と書きました。
「艦長」も「隊長」と同じです。自分で動きにくいポジションなので主役にはなりにくいけれど、大人の代表として若者を導き、沈着冷静でいて奇想天外な作戦行動を展開する。いつ、いかなる時も頼れる存在。そしていつか我々がそうなるべき存在。
それが「俺の艦長」なのです。