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2013年02月26日

カブのイサキ(6)

カブのイサキ カブのイサキ(6)<完>、出ました。何故か平面も垂直も10倍の広さになった世界で、三浦半島を中心に軽飛行機を足として生きる人々の話。

 なんじゃそらw

 どうせこんな記事を読む人はみんな既読なんでしょうから、ネタバレ全開で行きます。

 最終巻です。どこで終わっても文句なしなので、謎が謎のまま終わるのかと思ったら、意外にもシロさんが懇切丁寧に解説してくれて終わりました。

 たぶん人の少ない世界での人と人とのつながりを描きたいんでしょうが、ヨコハマ買い出し紀行のように毎度毎度、人類を滅亡させるわけにもいかないのでとりあえず世界が10倍になったという舞台を作ってみた、ってのが発想の原点でしょうか。描きたいものを不自然なく並べるために、逆に世界の方を強引に「そういうものとして作る」というおはなしの作り方は三崎亜記にちょっと似てる。どっちも好きですよ。でもそこに引っかかりすぎると物語の本質を見失うこともある諸刃の剣。

 世界が10倍大きくなるってのがなんの隠喩かいろいろ考えてきましたけれど、シロさんの判りやすい解説によれば、「大人になると世界が広くなる」ことのたとえなわけで、これは結局ヨコハマでアルファさんやタカヒロが実感したことと同じ事を言ってるんですね。子海石先生イカスぜ。

 ただ、ヨコハマは「滅亡」エンドというのが冒頭から決まってしまっていたので、タカヒロの成長の話と世界の広がりをリンクさせる話にはなりにくい。タカヒロ個人の世界は広がっていっても、それはいつか消えてなくなって行く希望のない世界であることが、常にあからさまに意識させられがち。従って全体の印象としては、ほそぼそと消え去っていく人類をアルファさんが見守り続けるという後ろ向きな話にしかなりえない構成が前提になってました(いや、むしろそこがいいw)。

 「カブのイサキ」の世界では人口密度は低いけれど、具体的な「滅亡」は語られていませんし、イサキは終盤、「ここではない世界」が存在する可能性にうすうす気が付いていきますから、やはり希望は残されているということでしょうか。

 ということで、おそらく将来にわたって対比されるであろうこの二作、エンドが「滅亡」なのか、「別の世界へのシフトの希望」なのかが決定的に違います。ヨコハマとはちょうど裏表一体の対の関係を成すのかもしれません。

 富士山も東の塔も見るのではなく「登るべき」ところ、「めざすべき」ところ。

 でもみんな身近な身の回りのことに追われて、誰も見向きもしない。ああ、あそこにいつもあるねってだけで。

 イサキと一緒に飛んでいるサヨリも。カジカでさえ。

 山や塔は見てないで登ろうぜ!って大きな声で言いたいです。みなさん、そういう山はないですか。

 結論としてはっきりいうと、別世界へのシフトは「大学」というモラトリアムの世界からの卒業のメタファーなんだろうなあと思っています。私にとってはすごく具体的でわかりやすい話。でも多分高校生以下の人にはわかりにくい話かもしれません。

 大学での4年間は世界が10倍広くなるから、これから大学に行く人たちはみんな心してかかるといいよ。覚悟していてさえ、なにがなにやら4年間ぐらいじゃ計測不可能で終わるらしいですから。


 余談。シロさんがカブのほかに飛行機を隠し持っているのは匂わされていたわけですが、私はぜったいに誉を積んだ機体だと思ってました。四式戦とか、烈風とか、流星改とか。

 だってさ、シロさん、イサキの工場止めで点火プラグ18本注文してたじゃん。プラグを18本使う18気筒の航空機エンジンと言えば、日本人ならやっぱ誉でしょ誉。

 サヨリのピッツが絶体絶命になった瞬間、直上から急降下してきて間一髪その危機を救うシロさんの2000馬力。かこいい!シロさんサインくれ。

 それがピラタスポーターってw
 おいおいおいおいwww

 タービンの音とか灯油の匂いとか言ってるから、ターボポーターなんでしょ。プラグいっぱい買っといてターボプロップじゃ筋が通らないじゃん。

 この伏線だけは回収して欲しかった。
 どうなったんだプラグ18本!

 まあ、そういうお話でしたw

 飛行機好きにも、のんびりした漫画読みたい人にも。
 オススメです!
posted by delta16v at 08:22 | Comment(1) | TrackBack(0) | 本・雑誌
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