仮想戦記は90年代末頃が全盛期だったのだと思いますが、最近でもまた面白いのを書いてくれる人がいるので、石の中の玉を探すようにして読んでいます。
これは1970年代中ごろの日本が1944年にタイムスリップして、というお話。
1970年代というと、かの豊田有恒氏による仮想戦記の嚆矢「タイムスリップ大戦争」「タイムトンネル大戦争」といった作品が上梓された時代で、それだけ考えても懐かしい設定です。
ただ、作者の佐原氏によると、「日本列島タイムスリップもの」というのは豊田氏のこれらの作品以降あまり存在しないのだそうで、非常に興味深いチャレンジだと思います。
1970年というと74式戦車とか75式自走榴弾砲とか7x式国産装備が次々に登場した時代。また田中角栄が全盛を誇った時代でもあります。戦争指揮する田中角栄。すばらしい発想。
いまでも扇子でパタパタ自分を煽ぐと「まあしょのー」とモノマネをしてしまうひとも多数なので(俺調べ)、昨今の短命首相と比べると、愛された宰相なのかもしれません。ヒールとして、というのもあるかもしれないけれど。自分が子供の頃は単純に「悪い奴」という思いがあって、嫌いだったな。当時の少年らしい紋切り型な正義感から離れて今思うと、面白いおっさんだったのかもしれない。娘はアレだけどね。
あ号作戦の直後、というと最大戦力が南方に展開してた時期なので、GFの強力な艦隊を持ちかえるとしたらいいタイミングかと思います。
いくつか今後の展開で気になるところもあります。実際に自分の若い頃と出くわす奴が出てくるのかどうかとか、栗田弱将説はどうケリがつくのか(佐藤大輔なんか一番先に殺しちゃってる)とか、1940年代当時モン兵器は補給がないので、零戦はもう活躍しないのかとか、当時の海軍軍人ならではの指揮は見られるのか(このままだと小澤も栗田もいなくてもいいんじゃないか)とか、その辺は続巻でまた確認したいと思います。最後の二つは結構大きな問題。GFいらなくなっちゃうもんな。
なんとなく仕掛けが見えるようにもなっていますが、タイムスリップにもまだまだ複雑な事情がありそうで、その辺も続巻を楽しみにしています。
「高速輸送船発見。前部発射管注水!」
とか叫びたくなります。
フネはいいなぁ。
あ、そだ。仮想兵器として一番ぐっとくるのはやっぱりIM-16です。新谷師匠万歳!
仮想戦記はこのところご無沙汰でしたが、これはなかなか楽しい一冊でした。
オススメです!