
日本語ラッパー、RHYMESTERのMC宇多丸氏による映画の評論本なのですが、普通の評論本とちょっと違うのはこれがTBSラジオウィークエンドシャッフルのいちコーナーのトークとして語られた評論から再構成されたものであるということです。これが全部しゃべりなんですよ。いくら準備してあるとはいえすごいよ。たとえ原稿を前もって書いてあるにしろ、そのライブ感には圧倒されます。
評論対象の映画のセレクトもすごい。公開中の映画の中からサイコロで一本だけ決めて観に行き、その感想を評論の形で30分のしゃべりで伝えるという脅威の映画評論番組なのです。何を見るかはサイの目次第。だからシネマハスラーなのですね。
それにしても宇多丸氏、本当によく映画見ているよな。今日のポッドキャストでも女子校のトイレネタの中で「ギャラクシー・クエストでやってたじゃん」とか、普通に出てきてたし。
映画の評論も非常に論理的で、駄目な物はどこが駄目なのか、しっかり理屈で伝えてくれる姿勢はすばらしい。サイの目次第ではドラえもんとかだって観に行ってまじめに語っているんですよ。
書籍になっていくつかお得な点がいくつかあります。
しまおまほって「漫画家にしてコラムニスト」と紹介されていますが、まんが読んだことなかったよ。こういう作風なんだね、という確認ができました。だから買うってわけじゃないけど。
あと欄外の解説が面白くてためになります。番組の中ではばんばん飛ばしてしゃべっていますが、話の中で出てくる映画でやっぱりこっちが見ていない映画もたくさんあるんですよ。簡単な解説が豊富に加えられていて大変勉強になりかつ楽しいです。
この「ハスリング」という見方はきっとものすごく頭がよくなる映画の見方だと思います。本も同じですが、最初から書評を書く気で本を読むと、これはただ流し読みする以上に内容を深く理解できるでしょう。「理解」とは人に伝えることで自らの内に成立するものだからです。それと同じことを映画でやっているんですね。すごいこと考えたなぁ。
とにかくこの映画評論、映画をあまり見ない方にでもオススメです!!