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2010年12月22日

「どこ落ち」考

サイボーグ009地下帝国ヨミ編 はやぶさが帰還した折り、大気圏へ再突入して燃え尽きるその姿を見て、
「家中の兄弟が仲良く平和に暮らせますように」
と祈った父です。

 なにそれと秋月が言いますので、「サイボーグ009 地下帝国“ヨミ”編サイボーグ009」の総集編を入手しました。秋月の奴、あっという間に読んじまいましたよ。石森正太郎はこれが初めてだったかな。

 サイボーグ009にはいろいろな思いがありながら、漫画原作をすべて傑作ともろ手を挙げて評価するのには躊躇する私です。しかし、この「地下帝国ヨミ編」は屈指の名作。このあともサイボーグ009はぐだぐだ続くんだけど、この「地下帝国ヨミ編」に比べるとぬるい戦いばっかで、まあ蛇足って奴でしょうか。

 「地下帝国ヨミ編」のエンディング、ブラックゴーストを追い詰めたサイボーグたちは宇宙に逃げる首領を倒すため、最後の戦いに向かいます。赤ん坊の癖に非情極まりない001は、逃げる首領の追撃にたった一人、最強のサイボーグである009をテレポートで送りこみます。宇宙からの帰還の方法はもとからありません。送りこまれた009もすぐにそれを察し、相討ち覚悟でブラックゴーストをしとめることを誓います。

 首尾よく敵は倒したものの、大気圏外からの帰還の方法はなし。その時、地上にいた002が大気圏外へ向かって飛び立つのです。

 せっかくジョーの元まで到達した002ですが、そこで燃料を使い果たし、やはり二人での帰還は望めません。なんてことするんだと非難する009にジェットは問いかけます。

「ジョー、君はどこに落ちたい?」

 大気圏に再突入して流れ星となり、燃え尽きる二人のサイボーグ。

 地上でそれと知らずに空を見ていた(まったくストーリーに関係ない)ある姉弟は「あ、流れ星だ」とその光に気が付きます。

 平和のために戦った二人のサイボーグたちが燃え尽きる光とも知らず、流れ星に向かって祈りをささげる姉。

 何を祈ったの?と問う弟に、姉は
「世界に戦争がなくなりますように。世界中の人が仲良く平和に暮らせるようにって、祈ったわ」
と答えます。

 弟は「僕はおもちゃのライフルが欲しいなぁ」などとKY全開なことを抜かして、そこがまた味わい深いわけですけれども、これが世に言う「どこ落ち」の顛末なのです。

 で、この「どこ落ち」は更に元をたどるとブラッドベリの「万華鏡」だか「刺青の男」だかなんであるとか、ガイナックスの「トップをねらえ」でも「ふしぎの海のナディア」でもまったくそのまま使われているんだとか、GS美神でも落ちる場所聞いてたりとかいろいろネタはあります。

 「ザンボット」にだって「ガイキング」にだって、流れ星と平和を祈る少女ってモチーフは出てくる。いったい世にどれだけの「落ちたい?」があるのか列挙したいくらいでもありますが、そういう蘊蓄はさておき、まずは秋月には、この言葉にできない感動を全身で味わってもらいたいと思います。

 イワンの判断。ジョーの決意と行為、そしてジェットの思い。

 やむにやまれぬそれぞれの思いがもたらした結末を、子供たちはどのように受け止めるのでしょうか。特攻賛美、とは受け取らないで欲しいと思いますが。

posted by delta16v at 08:16 | Comment(4) | TrackBack(0) | 懐かし
この記事へのコメント
蘊蓄はさておきって、蘊蓄言いたくてしょうがないじゃんwww
Posted by tankist85 at 2010年12月22日 12:16
にくい〜蘊蓄しょうの、顔めが〜け〜。

ええ、ええ、蘊蓄好きですよ。語るために語ってんですよw

KY全開な子供ってーと、新マンの「ふるさと 地球をさる」とかもあったです。南隊員がいい話してんのに、「怪獣出てきたら今度はやっつけるぜ」ってマットシュート撃ちまくる子供。うひー。

デビルマンなんかもそうだけど、70年代はこういう人間の善悪をぎりぎりのところで問う話、多いよね。追いつめられた人間が何をやるか、見せてやるわ!ってこわい。

「トラウマ作品」とかカテゴライズしただけでなにか考えたような気になって思考停止してちゃだめだー。
Posted by delta16v at 2010年12月22日 18:02
009も赤いマフリャ〜だねぇ。

石ノ森作品をはじめこの頃のヒーロー者はちょっと影があるというか、なんというか。
昭和の時代だったからでしょうね。
それに比べて平成ヒーローは見た目ばっかり、ノーテンキなのであまり楽しめません。
石ノ森の息子の時代になってさぁ、ちょっと、私はパスかな。


Posted by ≪スフィア at 2010年12月23日 00:03
失うことから全ては始まる。

全ての物語は喪失と獲得がテーマと言えるのかもしれません。石森作品はみなどこかしら欠損した部分を持つ人間が主人公です。

キカイダーの良心回路なんかは象徴的ですが。

島村ジョーが失ったものは、人間の体だけではなく、人生と友人もなんですよ。「地下帝国ヨミ編」では昔の少年院時代の仲間がブラックゴーストに改造されてジョーを殺しに来るんですよ。秋月にはショックだったようでした。

V3でも旧友の高木裕介がガルマジロンに改造されて風見も葛藤に苦しみますよね。ああ、石森だなぁって。
Posted by delta16v at 2010年12月23日 07:57
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