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2010年09月30日

去年はいい年になるだろう

 「去年はいい年になるだろう」読了。

 ここんとこ小川一水「第六大陸」「天冥の標」山本弘「アリスへの決別」なんかを並行読みということをやっていて、書くよりも読む方が多い毎日です。

 「去年はいい年になるだろう」は、先に「アリスへの決別」を片づけちゃったんで、先に買ったのを積んどくままと言うのも何かな、と思ってやっつけちゃいました。時間テーマ兼並行宇宙テーマと言ってよいかと思います。

 お話は2001年9月11日から始まります。この日以降、SF作家の「山本弘」氏という人につぎつぎに起こる事件を私小説風に書きつづったものです。

 やっぱり9.11というのは大きな衝撃があった事件でありました。なにかこう世界の底が抜けたような感じ。現実が実はフィクションというか非現実と地続きであることが分かってしまったような感じを覚えたのは私も覚えています。

 「安全」とか「宗教」とか「常識」とか、共通幻想のもとに社会は成り立っているんだとか、こんな事件も共通幻想から発生して、その幻想の巻き添えで現実に人が死んじゃったりするんだなって。

 お話としては9.11以降そこから更に非現実的な事件が次々に発生していくわけですが、その中でおそらく現実とリンクしているであろう事件や人間関係が描かれているのが興味深いです。ほぼ完全な実名小説です。今まさに私が読みかけている「第六大陸」を執筆しようとしている小川一水氏までが登場してきたのはいささか驚きました。SF作家実名で登場とかいうとすぐさま「亜空間要塞」とかを思い出しちゃいますが、こういう風に私小説風に淡々と描かれるのも、なかなか味わいが深いです。

 アメリカ人にしても、中国人にしても、日本人にしても、なぜこうも「正しい道」を選べないのか。その愚かさには驚くばかりです。個人個人ではきっといい人も多いのでしょうけれど、「国家」として行動するときになぜ結果としてこれほど愚かな判断をしてしまうのかと不思議に思うこともあります。

 日本人は自嘲的に「民族として劣化している」と自己評価しているようなところがありますが、アメリカなんかもWW2の頃の戦い方、立ち回り方と昨今のふるまいを比べてみると、よりよくなっているのかどうか疑問に思うことも多々あります。それぞれの国家・民族が最適な行動をした時代、というのを考えてみるのも興味深いことかもしれませんね。

 作中の「山本弘」氏、おたくな生活から脱却し(?)、素晴らしい伴侶を得て、幸せな家庭を築いているわけですけれども、非現実な事件のなかでどのように幸せな家庭を守っていくのか、というのもお話の軸になっています。私も一家を持つ者として、いろいろと考えさせられる展開でした。

 久々にズギンときた一冊でございます。


posted by delta16v at 08:12 | Comment(2) | TrackBack(0) | 本・雑誌
この記事へのコメント
あああー、買うだけ買ってすっかり放置してたのを思い出しました(^_^;)。
ハードカバーって、基本的に持ち歩かないので、読むのが後回しになるんですよね。しかも、今年の酷暑は自宅でじっくり本を読む気分にもなれず。
そろそろいい季節になってきたことだし、読んでみましょうかね〜w。(と言い訳をしながら、「アリスへの決別」もまだ積んであるなあ〜orz)
Posted by Suematsu at 2010年09月30日 10:17
読書にいい季節になってきましたね。どんどん読んで、積みを減らしましょう。

ツンドク、こわいですねー。ついうっかり購入済みなのを忘れて、2冊目まで買っちゃったりして。

購入した文庫はその辺に散らばっていますが、出がけにかばんにぽんと入れて出かけたりするので、かばんによっては複数の本を並行して読んでたりすることもあります。

「アリスへの決別」はジャケ買いとかーw
やべーw
Posted by delta16v at 2010年09月30日 12:33
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