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2009年04月01日

宇宙への夢を変えた二冊の本

米ワシントンD.C.(Washington D.C.)のナショナル・モール(National Mall)で公開された米航空宇宙局(NASA)の新型有人宇宙船「オリオン(Orion)」の実物大模型。スペースシャトルの後継として開発が進む「オリオン」は、国際宇宙ステーション(International Space Station、ISS)への人員や荷物の輸送などを担う目的で、2015年の初飛行を目指している(2009年3月30日撮影)。(c)AFP/TIM SLOAN

 スペースシャトル後継機だそうです。なんと、ふつーのアポロっぽいカプセル!

 スペースシャトルは未来への希望でした。本当本物のスペースプレーン、安価で手軽に宇宙へいけるはずでした。でもやっぱり駄目なんですよ。ふたを開けてみたら使い捨てのロケットよりもコストがかかるものだったんです。夢が後退しちゃいました。

 結局スペースシャトルというものは、無駄の大きな乗りものだったようです。

スペースシャトルの落日~失われた24年間の真実~」によりますと、コンセプト上の大きな問題点は二点。

人員と貨物を同一機体に積むこと
 有人機と無人機は許容リスクが違うはずです。人間が乗るならば、事実上100%の安全が必要なはずですが、貨物の場合はそこまでは不要なわけで。単一の機体にその両方を積むために、貨物にも有人機に要求されるのと同様の安全性が必要となり、貨物を輸送する機体としてはオーバースペックでコスト高になってしまったと。また機体自体もそれぞれ単能の機体に比べれば大きく、コストの高いものになったはずです。
 またスペースシャトルはオービター単体では軌道高度まで上がれず、外部ブースターをくっつけてやっとこさ上がるわけですけれども、極端な話この外部ブースターに貨物くくりつけてそのまま打ち上げちゃえばよかったんですね。人間もまた別のちいさなロケットで離床し、軌道上でランデブーすればよかったわけで、結局「分けて開発すればトータルでもお安くできた」んじゃないかと。

「翼」をもつこと
 スペースシャトルと言えばオービターのあの「翼」なんですが、離床から軌道上まではまったくのデッドウェイトですし、空気抵抗も非常に大きくブレーキになっているはずです。軌道上は大気がありませんので、ここでも不要。軌道から大気圏再突入するときも、滑空して降りてくるわけではなくて要するに減速しながら「落ちてくる」だけなので、あの段階でも翼は不要なのです。目からうろこです。私はこの段階で翼が有用になるのだとなんとなく思っていました。
 実際に役目を果たすのは、十分に減速した後、着陸する滑走路にむかう為の若干の機動性を持つ、ということくらい。結局「滑走して着陸する」というのだけ諦めれば、普通のカプセルにパラシュートを付ければ済む話だったわけです。そうだったのか!

 なんでこのような機体をこれほどの予算をかけて開発、運用する必要があったのかという理由は前述の書籍にも詳しく書いてありますが、やっぱりNASAも役所なんだなぁとちょっとがっかりしてしまいました。人類の英知が集まっていると思っていたんですが。

 実に残念です。今でもスペースシャトルは大好きなのに。

 もう一つは軌道エレベータ。

 「宇宙旅行はエレベーターで」を読むと、ロケットでの宇宙開発にどれだけのコストがかかるか、軌道エレベータの建築が行われなければ、本格的な経済的にメリットのある宇宙開発は行われ得ないのではないか、とも思います。

 まあ、このあたりは軌道エレベータをアピールするための手であるかもしれないのですが、一読するとこのまま軌道エレベータが出来なければ宇宙への本格的進出なんてできっこなくって、人類なんか重力の井戸の底でうごめいて終わるような気がしてきます。

 では、軌道エレベータが出来ればそれでいいのかっていうと、やっぱ白煙吹いて上がってこその軌道高度、というような刷りこみもあるので、私としては実に複雑な気分です。

#ところでJSEA 日本 宇宙エレベーター協会ての
#がなんとなくうさんくさく見えるのはなぜなんだろう?
#私の妖気レーダーが反応しちゃうんですがw根拠ないけどw

とにかく、

 未来になれば、ロケットで宇宙に行ける日が来る。

 単純にそう思っていたのですが、二重の意味で否定されてしまったようです。実に実に残念です。

 いつか、ウルトラホーク一号のように大気圏内からさっさと軌道高度まで上がれるような、本物のスペースプレーンが出来るといいですね。でもやっぱりそういう機体を求めるのは不合理なのかなぁ。

 
posted by delta16v at 17:56 | Comment(2) | TrackBack(0) | 飛行機・ミリタリー
この記事へのコメント
今は無きあの怪しげな「大陸書房」の本を沢山読んだワタクシとしても・・・
いかに貨物オンリーといえども失敗したら落ちていく先があるわけで、あんまり信頼性の無いもの打ち上げられてもテポドン級の迷惑ですよねぇ。

昔々乗せてもらったT33なんていう美味しい話がまた無いものかな〜 (`・ω・´)
Posted by SSNあじ at 2009年04月01日 19:46
へい。

貨物機がパカスカ落ちていいわけじゃないですが、有人機の安全性のためのコストというのは、かなり高いのだそうです。
貨物だったら、モノによっては気密抜けても問題ないものだってあるわけですし。

チャレンジャーもウィンドシアで落ちていますし、100回少々のミッションで2機も落ちた、というのは、もうなんともいえませんが。

T33とは違いますがNASAのT38タロン(F5の練習機版)はシャトル乗りの足らしくて、日本人飛行士も訓練兼用で後席に乗ったりしているそうです。さすがにチェイサー任務で飛んだりはしなさそうですが、裏山C限りで。
Posted by delta16v at 2009年04月01日 21:48
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