いや、時々読んでいるんですよ三崎亜紀。すばる新人賞には興味がありますし(おいおいおいw)。
短編7つ入っています。どれもいいんですが、一番食いついちゃったのが、「動物園」という一編です。
「表出」というまあ言ってみれば幻覚を見せる能力を使って動物園で珍しい動物の姿をこっそりフェイクする仕事をしている女性の話。
あれ、思ったんだけど、作家が読者の前で物語を紡いで見せる姿のメタファーじゃないんでしょうか。
「表出」「融合」「拡散」「固定」といった手法、あれは、三崎亜紀が小説書くときに使っているテクニックなのじゃないか。
不自然な状況を「作った言葉」で説明し、概念を固定して読者を引き込む手口は、三崎亜紀的世界の常套手段ではないのでしょうか。いや、そこが魅力なんですけどね。上手にだましてくれるし。
「となりまち戦争」も「失われた町」も読みましたが、おおがかりなネタはやはり「同定」に無理が来がちなので、こういう短編や中編の方が三崎亜紀的世界をたのしみやすいのじゃないか、と思いました。