
へんな星が太陽系外から飛んでくる。なんという偶然かその予測軌道は地球の公転軌道と交錯していて…というものすごくよくある筋立て。
まあ地球を動かしてかわして逃げる流れなわけですけど、元ネタとしてあげられてる「妖星ゴラス」というよりは、ウルトラ世代の私はペガッサ星人とか思い出しちゃう。なんだと、地球人はただ回ってる星に乗っかっているだけなのかッ!ってやつ。
全体的な筋立ては「妖星ゴラス」っていうよりは「さよならジュピター」だと思います。探査機の遭難。地球に迫りくる破滅的な危機。天文学的手段での解決。巨大プロジェクトの進行。テロによる妨害。独断専行する現場最高責任者。いやもうまるっきりBBJ("Bye-bye Jupiter"をツウはこう呼ぶw)ですね。さいこーです。あの映画版だって私は好きでしたよ。
一方で「地球を動かす」という壮大な事業それ自体については、魔法のようなナノテクと無限の力・ピアノドライブで片付いてしまうので、その辺はいささか拍子抜けでした。ざんねん。
その他いろいんなガジェットが出てくるんですが、なかでも「宗教を克服した人類」てのが白眉。
宗教ってのはいつか克服するものじゃないかってずっと思ってるんですよ。いつまで人類は宗教を必要とするんですか。科学万能じゃないんですか。じっさい「死」を制覇しない限り不可能なのじゃないかという気もしなくもないんですが、はたしてどうなんでしょうね。
神の名において人を殺すとか、そういう光景を見るたびに、宗教と言うものがどれだけ人類の歴史の障害になっているのかと暗澹たる気分になります。いつかは宗教を必要としない知性体に成長できればいいですよね。逆に宗教を否定して主義のために人を殺したなんとか主義なんてのもありましたけれど。
私もずっとそういう考えを持っているのですが、公に指摘してくれたのは本書を以って嚆矢としたいと思います。いろいろ危ない思想なのかもしれないけどね。
ガジェットはいろいろよかったけれど、「地球を動かす」ところに力感がなくて、うーん、80点てところですか。
でもお勧めです!