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2008年05月06日

つばき、時跳び

つばき、時跳び」読了。

 やはり梶尾真治は安心して読める。それが駄作か傑作かという意味だけではなく、物語として幸福なエンディングに着地できるということだ。エンディングにランディング。ああ、地道な地口。駄作な駄洒落。

 さえない作家が古い実家に一人で住むうちに、幽霊に会うようになって...というオープニング。幽霊の正体は「つばき」という幕末・元治時代の女性なのだが、これがまたかわいいのなんのって。ある種、男性の理想を形にしたかの如くな女性なのだが、これならやっぱり時を飛んでも会いに行きたくなるよな。

 「つばき」がもっと時を跳べば、カジシン版の「時かけ」になってしまうところだが、やはりカジシン、いくら女性がアクティブに動いても、視点は常に男性なのだ。

 カジシンの時間テーマは読む度にいつも感動する。重要なものはいつも人と人とを隔てる時間。それが例え「空間的隔たり」であったとしても、二人が出会うことを妨げるものは結局は「時間的な制約」に帰せられる。
 途中、会えなくなった「つばき」への思いに沈む主人公の思いは、現実世界で常に一発勝負の「いま」という時を生きる我々には、まったくもって他人事ではない話だ。

 ああ、それにしてもやっぱりカジシンは最後の一割が最高だねぃ。どんでん返しというほどの大仕掛けでもないし、ある程度読めてはいるんだが、それでも感動するのは、年取って涙腺が弱くなってきたからでしょうか。

 時間テーマSFとしては構成がシンプルなんだが、これ、読者層を考えてのことだろうか。「黄泉がえり」以来、一般の読者が多いようだし、あまりに凝った構成にすると抵抗があるのだろうか。願わくば時間テーマの達人として、現代の「広瀬正」になって頂きたいのだが、今後どのように展開するのだろうか。ハインラインの「時の門」まではいらないけどね(笑)。

 とにかく名作です。

posted by delta16v at 15:09 | Comment(0) | TrackBack(0) | 本・雑誌
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